【対談】USEN×日本橋はやし矯正歯科×ウーマンズ。デンタルケアによるヘルスケア概念定着

ウーマンズラボ対談3

近年、ヘルスケアという概念は誰にとっても身近なこととして確実に浸透してきているが「歯をケアする」という視点からヘルスケアを考える生活者は少ない。本来、適切なデンタルケアは予防医療の1つとされており、様々な重大な病気を防ぐことができるのだが、特に若い世代でその意識が見られないのが現状だ。

ヘルスケアへの注目度が高まる中、デンタルケアが置き去りにならないためには、どのような課題点と向き合って解決策を見出していくべきか?それについて考えてみようと思った時、まず「女性」と「歯科医院」の接点について考えてみた。

そこで見えてきたのが、近年若い女性を中心に注目を集めている「歯列矯正」だ。虫歯という緊急事態以外で歯科医との接点があることは、デンタルヘルスケアへの興味を喚起するひとつのきっかけになるかもしれない。そこで、日本橋はやし矯正歯科(東京・中央区)を経営する林氏と、歯科医を検索できるポータルサイト「デンタル・コンシェルジュ」を運営するUSEN(東京・港区)の経営企画室新事業開発課長の大島氏にお話を伺った。

歯科医師の立場からと、日本の歯科業界全体を俯瞰する立場からと。それぞれから頂戴した意見は、デンタルヘルスケアというヘルスケアのカテゴリーをどのように広めていくべきか、そして今後生活者にとって歯科医院はどのような存在になるべきか?その解を得るヒントになった。

本日の質問内容

質問1.歯列矯正によるデンタルケアで、どのようなヘルスケアにつながるのか?

質問2.「デンタルケア=ヘルスケア」という概念の認知度・理解度を上げるにあたり、立ちはだかっている業界や生活者の課題点は何か?

質問3.デンタルヘルスケアの認知度・理解度を上げるために、それぞれの立場(歯科医の立場、ポータルサイト運営の立場)からどのような取り組みをしていきたいと考えているか?

 

対談中に出てきた、課題解決キーワード

  • 美容という切り口からデンタルヘルスケアへつなげる
  • 生活者のデンタルIQを上げる
  • 業界全体のリ・ブランディング。「歯科医院は、健康になるために行く場所」

 

質問1:歯列矯正によるデンタルケアで、どのようなヘルスケアができるのか?

<阿部>
本対談のテーマは「デンタルケアによるヘルスケアという認知を生活者の中で上げていくために、これから一体何が必要なのか?」です。業界の現状、課題、解決策などについて伺えればと思います。その前に、まず歯列矯正がどのようにヘルスケアにつながるのか教えて下さい。
ウーマンズラボユーセン対談6

 

<矯正歯科医:林>
矯正治療は歯並びを良くすることです。一般的に知られていることとしては、歯の凸凹がなくなるので歯が磨きやすくなるので虫歯予防はもちろん、歯周病の予防になります。そして、虫歯予防や歯周病予防は、糖尿病などの全身疾患の悪化を防ぐことにもつながります。

<阿部>
ダイレクトにその部分を目的に「矯正したい」と来院される方はいますか?歯列矯正に求めていることは、多くが「キレイになること」だと思うのですが。

<矯正歯科医:林>
その通りで「キレイになりたい」「自分の笑顔に自信を持てるようになりたい」という目的で来られる方が圧倒的に多いです。ヘルスケアという切り口だけで矯正に引きつけようと思っても、意識や行動の変容は起こしづらいので難しいです。ですが、最初の目的は何であっても、歯列矯正をしたことで結果的にヘルスケアにつながるきっかけになっているということは日々感じています。

<阿部>
「直接的」ではなく、「間接的」にヘルスケアにつながっているということでしょうか?「キレイになったその先に実はヘルスケアもできていた!」というような。

<矯正歯科医:林>
矯正では最初の診療で術前の写真を、終わった後に術後の写真を撮るんですが、術前写真では皆さん笑わないんです。笑顔を作らない。笑顔を作ったとしても引きつっています。でも、治療後は本当にキレイな笑顔。自分の素敵な笑顔がわかってくるので、笑顔に自信を持てるようになるんですよね。ヘルスケアという視点で歯列矯正を考えた時、そういった「心の変化」はヘルスケアのきっかけの部分にも大きく貢献していると感じています。自分が持っている基本的な健康というのはとても大事で、「心」というベースとなる部分が健康でなければ「ヘルスケアを心がけよう」というところまで気持ちは向かない。また、矯正をきっかけにキレイな口元を維持することに意識が向くようになるので、デンタルケアへの興味もわいてくる。間接的な考え方ですが、そういった意味では、ヘルスケアに気持ちを向かわせるための「ベースを形作る」というところに矯正治療があると考えています。本格的なメディカルケアまで踏み込まなくても、歯列矯正であれば自分で決断して今すぐに始めることができます。その点も含め、矯正はヘルスケアに貢献しやすい分野だと思っています。

 

ウーマンズラボ対談

 

質問2.「デンタルケア=ヘルスケア」という概念の認知度・理解度を上げるにあたり、立ちはだかっている業界での課題点や我々生活者の課題点は何か?

<阿部>
大島さんは、デンタル・コンシェルジュの運営において、一般歯科医や矯正歯科医含め様々な先生と関わっていらっしゃいますが、ヘルスケアに取り組むことを積極的にサイト内でアプローチしている先生はいますか?歯科医院を利用する一女性生活者としては、デンタルケアを怠ることで様々な健康のリスクがあることを教えてくれるところは少ないように感じますが。

 

ウーマンズラボユーセン対談5

 

<USEN:大島>
今、歯科業界で「予防」という考え方がトレンドになっていることもあって、ヘルスケアに関連した情報を発信している先生はとても多いです。例えば「歯周病は早産の可能性が高くなるので、お口の中をきちんとケアしましょう」ということが母子健康手帳に書かれているし、虫歯予防、歯周病予防という切り口で、デンタルケアの情報が患者さんに向けて多く発信されています。「口内炎や口臭などは、健康のバロメーター」という切り口での発信も多いですよね。糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞など命に関わるような病気と関係性があるという研究結果も出ているので、その切り口からデンタルケアの重要性を説いている先生もいる。僕自身この業界に入ってから感じているのですが、業界の外にいる時と中にいる時では、情報量に違いを感じます。「実は情報ってたくさん発信されているんだな」って。ただ、一般の人への伝え方が上手ではない、伝えきれていないんですよね。

<阿部>
情報がうまく一般の人に浸透していかない。それが現在の業界の課題と言えそうですね。

<USEN:大島>
その課題が、歯科医と一般の人の間に「デンタルケアに対する意識の違い」を生んでいるのだと思っています。

<阿部>
「情報をうまく伝えきれない」要因というのは様々な視点から考えらえますが、例えば、ホームページ上での見せ方や表現が難解で、一般の人にとっては理解が難しい、ということなどでしょうか?伝え方や見せ方の工夫次第で解決できることではないのですか?

<矯正歯科医:林>
もちろん、どこの歯科医院も頑張ってホームページを作りこんでいます。ただ、「表現方法」に法律的な壁があって、「言えること」と「言えないこと」があるので表現できる範囲が限られています。そうなると、結局どこも同じような内容のHPや情報発信になってしまうんですよね。だから、表現が曖昧になったり、明確に伝えたい事があるのに伝えられないという現実があります。それが、一般の人たちに伝わりにくい要因の一つになっているかもしれません。

<阿部>
それは歯科業界の大きなジレンマですね。ただ、歯科業界からの一方的な働きかけだけではなく、生活者自身が自らデンタルケアに対する意識を高める必要性もあると感じています。加齢とともに、歯周病になったり歯が抜けたり、糖尿病や腎臓病、脳梗塞といった病気にかかることで、デンタルケアへの意識が強くなり理解が深まりますが、若い人の間では認知度や理解度が低いのが実際です。理由はどこにあるのでしょうか?

<矯正歯科医:林>
今、認知度や理解度が低いのは時代的な流れも関係しています。日本が貧しかった時代は普通の虫歯治療がメインで、一般の人もそこしか気にしていませんでしたが、時代が成熟して生活が豊かになってきた現代になって、初めて「歯を矯正する」という概念にも意識が向けられるようになってきました。日本が豊かになってきたのは最近のこと。社会的な成熟度合いと矯正治療というのは相関しているので、日本において矯正の需要はこれから伸びていくと考えています。アメリカが既にそうであるように、日本でも「矯正って大事なんだよ」という意識を持った今の人たちが上の世代になって、子供や孫たちにその意識が浸透していく、という時代がこれからやって来る。矯正治療がぐんと伸びるのはこれからかです。

<阿部>
矯正治療というカテゴリーは、アメリカと比較すると日本ではまだ歴史が浅いのでしょうか?

<矯正歯科医:林>
矯正治療の歴史自体がそれほど長くはないと言うこともありますが、これだけ矯正治療の重要性について強く意識されるようになってきたのは最近です。数十年前から矯正治療はありましたが、単純にその頃は需要が少なかったと思います。当時は虫歯の人は多かったですが、今は、地域的な差はありますが、虫歯の人はだいぶ減ってきています。

<USEN:大島>
子供の虫歯の数は大幅に減ってきていますよね。12歳児の虫歯などの数は15年前だと平均2本以上でしたが、今は1本以下に。虫歯の部分に関しては昔よりもだいぶ改善されてきている、という印象があります。

 

ウーマンズラボ対談4

 

<矯正歯科医:林>
虫歯に関する教育のレベルが上がってきているということです。そして次に、歯並びというところに意識が向くようになってきました。

<阿部>
確かに、社会の発展とともにあらゆるニーズは段階を踏みます。日本が豊かになったのは、人類の歴史から見るとごく最近のこと。社会が豊かになることは飽食の時代をも意味し、それが糖尿病、腎臓病、歯周病などの患者の数を押し上げている原因になっています。そうなると、デンタルケアという概念や、デンタルケアの一つとして矯正への意識が高まってくるのは自然の流れではありますよね。

<矯正歯科医:林>
しかし、歯科業界側だけで意識が高まっていて、生活者の間では考え方が広まっていない。「矯正治療がそこまで必要ではない」と考える人が多いんです。アメリカでは「一社会人として、歯並びは良くないとダメ」という絶対的な考えがあって、親がそう思ってるので自然とその考えが下の世代に影響しています。しかし、日本ではまだまだその考え方は広まっていません。

<阿部>
生活者サイドで矯正の必要性を強く感じていない、意識が向いていない。それが生活者側の課題ですね。

<USEN:大島>
矯正という概念の広がりを美容という切り口で考えた時、文化的な側面も関係していると思っています。笑う時に口元を隠す日本人と、歯を見せたい欧米人。そもそも気にするところが違うんだろうなと。そういった背景を考慮した形でも矯正に関する情報を発信する必要があるかもしれません。

<矯正歯科医:林>
街を歩いている人を見ると「矯正した方がいいな」って思う日本人はとても多い。まだまだ矯正が一般的ではないことの表れでもあるな、感じます。

<USEN:大島>
ヘルスケアという切り口で生活者側の課題点を考えると、日本人特有の「横並びの意識」も関係しているかなと。メタボと同様、生活者にその概念を確実に浸透させることに成功したのが歯周病。しかし、概念が広まりはしたけれども、各自の危機感を煽ることには成功していません。その要因の一つが、「横並び意識」。メディアでは「日本人の成人の80%が歯周病」という数字がよく出てきますが、あまり意味がないように感じます。80%と言われてしまうと、いくらそれが心筋梗塞や糖尿病と関係あると言われても、「皆一緒だよね、さほど重大ではない」っていうおかしな安心材料になってしまう。自分が大多数のところに入ってしまうと、返って妙な安心感を生み出し危機感を感じなくなってしまうのは、日本人の良くないところ。それをきちんと「自分ゴト」と捉えて危機意識を持つことが大切です。

<阿部>
生活者それぞれがそういった危機意識を持てるように働きかける役目が、デンタル・コンシェルジュ、ということでしょうか?

<USEN:大島>
私たちがやってるサービスはそれだけをコンセプトにしています。今は、インターネットやテレビ、雑誌、本など様々なメディアで様々な情報が飛び交っています。専門家が情報を発信している場合もあれば、一般の人が発信していることもある。情報が多すぎると、それを受信する人は考えや意識を整理できなくなってしまうので、デンタル・コンシェルジュではその交通整理をしているというイメージです。

<阿部>
デンタル・コンシェルジュからの情報発信の中には、デンタルケアによって様々なヘルスケア対策になる、というような具体的な内容の情報もありますか?

<USEN:大島>
立ち上がったばかりなので今はまだそこに到達していなくて、その前段階として、まずは「そもそも歯医者さんってどんな人がいるの?」「歯科衛生士ってどんなことをしてる人たちなの?」という初歩的なところをしっかりと教えていく、というスタンスで情報を発信しています。歯科業界では、歯に関する知識のことを「デンタルIQ」と言っていますが、一般の人のデンタルIQを上げることに貢献していきたいと思っています。「歯医者に言われたから治療をする」というスタンスではなく、きちんと一般の人自身が歯に関しての知識を持つべきだと考えるからです。そうなることで、生活者のデンタルケアに対する意識や理解度はぐんと高まるのではないかなと。

<阿部>
一般の方たちが歯科医師ときちんと「歯についての会話」ができるようにしてあげることも、デンタル・コンシェルジュの役割なんですね。今後は、デンタルケアを怠ることで起こり得る様々な健康リスクの情報も発信していくのでしょうか?

<USEN:大島>
そのつもりです。ただし、情報を発信する上では注意が必要です。医学の世界は、様々な研究結果や意見が存在する。例えば各学会等によって意見も異なるので、偏った内容を発信しないようにしなくてはいけません。一般の目線で見た時に「これは発信すべきだ」と思ったら発信するし、違ったことを発信してしまった場合は、それもきちんと訂正して伝えたい。

<阿部>
デンタル・コンシェルジュがそういうことを率先して発信していけば、登録している歯科医の方達も「自分のところもきちんと情報を発信していこう!「デンタルヘルスケアを積極的に啓蒙していこう!」という意識が全体的に強まって生きそうですね。

<USEN:大島>
まだまだ当サイトは「歯医者を探せる検索サイトやポータルサイト」という見られ方をされていますが、今後は、デンタル IQを上げるための知識やデンタルケアに関する情報を随時発信していくサイトに育てていきたいと思っています。

質問3:デンタルヘルスケアの認知度・理解度を上げるために、それぞれの立場(歯科医の立場、ポータルサイト運営の立場)からどのような取り組みをしていきたいと考えているか?

<矯正歯科医:林>
自分のHPからももちろん情報を発信していきますが、一人でやったところで大したことはなくて、大きなグループや団体で責任を持って発信していく必要があると考えています。ただ、日本の専門学会や団体はそれが上手にできていない。その原因は、我々一般的な開業医と、団体を構成している大学教授や役所の方などとの間できちんと情報交換ができていなくて、我々の意見が伝わっていかないことだと思うのです。同じ業界の中でも、そういった「伝わりにくさが存在する」ということは、課題として捉え解決していかなくてはいけない。我々が横のつながりで流れを作り、頑張って団体に働きかけ、業界を構成している各団体から情報を発信したり、我々は我々で、デンタル・コンシェルジュさんなどを通して、より患者さんや生活者に近い立場から情報を発信していきたい。皆さんに、「これは本当に価値ある情報だ」と思ってもらえるような内容を心がけます。僕一人だけではなく、いろんな先生と組んで、この課題に取り組んでいきたいと思います。

<USEN:大島>
デンタル・コンシェルジュとしては、最終的には歯科医院に行く人を増やすことが目標です。昔は、「虫歯になったら歯医者に行く」「親知らずが痛いから歯医者に行く」というように、必要に迫られた時に行く、という考えで来院するのが圧倒的だった。でもこれからは、生活者にとって歯科医院は「虫歯にならないために行く場所」「健康になるために行く場所」にしていきたい。

<阿部>
歯科医院の存在意義、イメージが大きく変わっていきますね。

<USEN:大島>
すでに結構な数の人たちが定期的にクリーニングに行くようにはなってきていますが、そのような人たちをもっと増やしていきたい、それが我々の目標です。美容室やネイルサロンのように、「定期的に通う場所」、「自分のニーズのために投資をする場所」として歯科医院が認知されるようにしていきたいです。今は「歯医者」という呼ばれ方しかないが、新しいブランディングができれば、他の呼称が登場するかもしれないですよね。デンタル・コンシェルジュとしては、そういうイメージの転換を図ることで、デンタルヘルスケアにおける歯科業界の課題や生活者の課題を解決していければと思います。

 

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