2017年「住・学・働」トレンドから考えるヘルスケアビジネスの商機

リクルートグループは12月13日(火)、美容や食など8つの分野に関する2017年の動向「2017年のトレンド予測」を発表した。同発表会は2009年から毎年開催されており、今年で8回目を迎える。当日は、各領域のメディアの編集長や総研所長が、クライアントやユーザーとの日々のコミュニケーションの中から捉えた「2017年から盛り上がるであろうトレンド」を、事例を交えて紹介した。

2017年、生活者はどのようなモノ・コトに興味関心を示し、どんな消費をするのだろうか?今回発表された中でも、特に「女性」と「ヘルスケアビジネス」に関係する分野をピックアップしてみた。本記事では「住」「学」「働」について。来年の商機を探るヒントにどうぞ!

2017年、消費者動向に影響するトレンドキーワード

各分野でどのようなトレンドが起きるのか?まずは、分野別にキーワードを見てみよう。

住宅領域       「リビ充家族」
社会人学習領域    「子けいこパパ」
キャリア領域     「ライフフィット転職」
若年雇用領域     「育成枠採用」
アルバイト・パート領域「パズワク」
進学領域       「Liveラリー」
飲食領域       「おいし援」
美容領域       「バーバー新時代」
(引用:リクルートグループ)

自宅は何でもできる多機能空間へ「リビ充家族」

「リビ充家族」解説

これまでリビングは「テレビを中心に家族が寛ぐ場」という位置付けだったが、今、新築分譲や最近増えているリノベーションの分野では、リビングを「仕事・勉強・遊びなど家族それぞれの時間を過ごす多機能空間」という位置付けで提案する物件が増えてきている。働き方が多様化し、在宅で仕事ができる環境が求めれらていること、また都心回帰の流れから、「立地優先・間取りの工夫」が求められていることも理由。

「リビ充」から考える商機

ホームパーティや手作り料理を楽しんだり、セルフネイルやホームエステなど、近年、自宅空間を楽しんだり、時短や節約を求めて自宅で「できるコト」を増やす女性が増えているが、未既婚問わずとにかくやるコトが多い忙しい女性にとって、「自宅にいる時間・空間を有効活用して効率よく生活する」ことは一つの重要テーマだ。

さらに、リモートワークや、妊娠・出産・育児期における在宅ワークを選択する女性が増えるなど、働き方の多様化が進んでいることも考えると、リビングのみにとどまらず、今後は「いかに自宅で多様なコトを効率よく行えるか?」という動線が考慮された住宅への注目が集まると考えらえる。

多機能住宅のニーズに応えているのが、セキスイハイムの積水化学工業とセントラルスポーツが協業で提案している「健康寿命を延ばすためのリフォーム」。自宅内や庭に運動ができるスポーツジムのような空間を取り入れることができる。

参考記事
スポーツジムを自宅に。健康寿命伸ばすセキスイハイムの新リフォーム

三菱地所ホームは、自宅内にジム、スパ、リラックススペースを設けた「ホームスパ」と「ホームアクティビティ」を提案。壁面に大型スクリーンを設置することで、シミュレーションゴルフも楽しめる。

参考記事
「スポーツジムに通う派」「外で運動派」、次のブームは?

自宅はくつろぎの場でもあり、育児の場所でもあり、ワークスペースでもあり、人を招いて交流する場でもあり、そして、美容や健康などヘルスケアに取り組む場所でもあり。空間のサイズ関係なく、あらゆる役割を備えた住宅作りに貢献する商品・サービス、「私の忙しいライフスタイル」を自宅内で応援してくれる商品・サービスへのニーズが高まりそうだ。

 

パパも一緒に!がキーワード「子けいこパパ」

「子けいこパパ」解説

これまでパパ世代の男性は、「時間がない」「仕事の疲労」「費用が高い」「特にやりたいことがない」などが障壁となり新しいことに対する学習意欲が低い・あるいは学習に取り組めない(取り組まない)人も多かったが、近年の「パパの育児参加率上昇」の影響もあり、子供をきっかけに学習を始める人が増えてきているという。

厚生労働省によると男性の育児休暇取得率は、2005年度は0.5%、それから徐々に増え2015年度は2.65%にまで増えている。全体から見ると決して多いとは言えない数字だが、2017年1月1日からは、育児・介護休業法の改正による「パタハラの防止措置の新設」が始まることや、働く女性が今後さらに増えることを考えると、今後さらにパパの育休取得率、そしてそれによる育児参加率は上昇しそうだ。

「子けいこパパ」から考える商機

一般的に、学びに対する意欲は男性よりも女性が高い。妊娠・出産を経験した女性であれば、離職や短時間勤務などの働き方の変化に対応するために学習を始めることも多い。またリクルートが述べるように、「子供の学ぶ姿に影響されて学習を始める」ことが親の学習のきっかけになるのであれば、家事・育児の中心を担う女性の方が男性よりも感化されやすいことも、女性の方が学び意欲が高いことに関係しているかもしれない。

しかし近年、男性も積極的に育児に参加するようになったことで、男性の「学習意欲」は高まっているという。資格取得、楽器演奏、スポーツ、料理など、学習の範囲は人それぞれ、そして子供と一緒に学ぶケースもあれば、一人で始めるケースもあるだろう。

パパが何か新しいことを始める・参加する、という流れは「学習」だけではなく「イベント」でも当てはまりそうだ。子供向けのイベントといえば「母と子供」という組み合わせが多く、訴求も女性に向けたものが主流だが(ママヨガ、料理教室、工場見学など)、パパの育児参加率が今後も増えていくことを考慮すると、パパの「何か新しいことをやってみたい」意欲は様々な場面で向上、イベント参加率も上がっていきそうだ。

これからは、「ママと子供」の組み合わせを主流と考えるのではなく、「パパと子供」「ママとパパと子供」の組み合わせも取り入れるべきだろう。

 

女性の働きやすい環境増加傾向!「ライフフィット転職」「パズワク」

「ライフフィット転職」解説

人口減少、制約社員の増加、働き方の多様化などにより、今、求人市場は企業ファーストから個人ファーストへ移行している。ワークライフバランスを重視した働き方・生き方をしたい人が増加している中、求職者が企業に勤務条件を交渉する時代へと変化している。

「パズワク」解説

「何でもできる人を一人採用する」流れから、「個々の得意分野や力を上手く組み合わせていく」という考え方で人材を採用・活用する流れへ。つまり、採用時に「できないこと」や「苦手なこと」があっても、その他のスタッフが不得手を補うから大丈夫!という考え方だ。お互いの得手・不得手を踏まえた上で業務をこなしていくため、採用がしやすくなる上に、働く側も、できないことがあっても自分のスキルを存分に生かすことができる。個々がイキイキと働ける職場づくりができている企業が増えているということだ。こちらも、働き方の多様化や時短勤務のニーズにより生まれてきた形だ。

「ライフフィット転職」と「パズワク」から考える商機

ライフフィット転職もパズワクも、国が掲げている「女性活躍推進」「一億総活躍社会」「生涯現役社会」の実現のために進められている様々な施策や、人々のワークライフバランスへのニーズの高まりなどが影響していると言える。

企業が「多様な働き方を受容する」動きが高まっていることで、女性の働きやすい環境は少しずつ少しずつ整ってきている。育児と仕事の両立、介護と家事の両立、マタハラ、育休中に仕事を任せられる側のワーカーの負担などの課題がゼロになったとは言えないが、まずは「企業が女性の働きやすい環境づくり」に力を入れるようになってきたことは大きな前進だ。

女性が働きやすい企業が徐々に増えてきたところで、ここからは、「働く女性の生活」を応援する商品やサービスへのニーズを満たしてくれる企業が求められる。

特に、これまで仕事への参加率が低かった離職ママ層(出産・育児を機に離職したママ)やシニア層は、今後新たに注目すべき市場になり得る。(シニア層に関しては、2017年1月1日から始まる「雇用保険適用の拡大」が影響すると考えられる)

あらゆる場面での時短商品・サービスや、1ヶ月サイクル、または年齢やライフステージにより変化する心身の不調をサポートしてくれる商品やサービスなどは、女性の「元気にイキイキと働きたい」というニーズを満たしくれるため、絶対的な支持を集めるはずだ。働く女性のライフスタイル、時間の使い方などをよく観察することで提案できるモノ・コトは沢山見えてくる。

 

次回は、「おいし援」と「バーバー新時代」について。飲食領域と美容領域の商機について考えてみたい。

 

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