地域医療、6つの問題点と今後期待されること(1/3)

団塊の世代が75歳以上になる2025年、その時に医療需要はどのように変化するのか。それを地域ごとに推計し、今から備えようという取り組みが国や地方自治体で活発に行われている。医療や介護の需要は増加するが、それを支える財源や人材は大幅に不足することが容易に予測できる。特に地方では過疎化などにより医師不足がすでに深刻化しはじめている。「地域医療」の問題点とは?

地域医療の問題点

地域医療とは?

地域医療とは具体的にはどんな医療の姿なのか。自治医大監修の地域医療テキストでは以下のように定義している。

「地域医療とは、地域住民が抱えるさまざまな健康上の不安や悩みをしっかりと受け止め、適切に対応するとともに、広く住民の生活にも心を配り、安心して暮らすことができるよう、見守り、支える医療活動である」引用「日本老齢医学会雑誌 54巻4号」

 

健康上の悩みはどの世代においても起こるが、その悩みの種類は異なる。例えば乳幼児と高齢者では、かかりやすい疾患も必要なケアも異なる。誰もが自分や家族の健康の悩みに適した相談や治療を地域で安心して受けられることを望んでいる。しかし「超高齢社会」「少子化」「医療崩壊」などの問題が重なり「地域で適切かつ必要な医療サービスを受けること」が難しくなっている。特に地方では深刻化している。地方では医療にどのような問題が起こっているのか。

地域医療が抱える6つの課題

1.病院や診療科・医師が偏在

2016年の厚生労働省の調査によれば、現在日本には31,9480人の医師がいる。さらに年間約4,000人ずつ医師は増えている。

しかしそれは都市部に集中していて地方では医師不足が深刻化している。この事態を招いた背景には、2004年に導入された「臨床研修制度」があると指摘される。

臨床研修制度の導入以降、大学病院において臨床研修を受ける医師が大幅に減少し、また、専門の診療科を決定することが遅れたことも影響して、大学病院の若手医師が実質的に不足する状況となった。このため、大学病院が担ってきた地域の医療機関への医師派遣機能が低下し、地域における医師不足問題が顕在化・加速するきっかけとなった。引用:厚生労働省 臨床研修制度のあり方等に関する検討会「臨床研修制度に関する意見のとりまとめ

 

この制度の導入によって研修医が研修先の病院を選択できるようになり、待遇や条件の良い都市部の民間病院に希望が殺到し、大学病院が研修医を確保しにくくなった。その結果、大学病院は関連病院に派遣していた医師を次々と引きあげ、医師不足が起こっているとされる。

2.夜間や休日の診療に対応する医師が不足

特に産婦人科や小児科で長時間労働や夜間勤務が続き、その過重労働から勤務医が病院を辞めることで医師不足が起こり、中には閉鎖に追い込まれるところもある。「医師が足りない」と、救急隊の要請に応えられないケースも少なくない。このようなことが地方や僻地を中心に全国で発生している。

3.地域によっては診療科が偏在

現在の医学部は臓器別の専門医を育成することが目的となっている。そのため医療の高度化や細分化は進んでいるが、幅広い知識と技術で専門分野以外の患者を診る力が身につきにくい。少子化が進み需要が減っているのに手間がかかる小児科は、診療報酬が少ないことも要因となり減少。同様に人口減少や医療過誤の問題から産婦人科も減少。これらの背景によって医療施設の偏在が起こっている。

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