変わる食の選択基準 安心・安全・健康、そして…

食品ロスをなくすための取り組みが進んでいる。近年急速に社会問題化し消費者の間で意識が高まっていたが、昨年10月、食品ロス削減の推進を目的とした「食品ロス削減推進法」が施行されたことで、その個々の意識を具体的な行動へと移せる環境が整い始めた。これまでは「安全」「安心」「健康」が食の選択行動における3大消費基準だったが、SDGsの浸透も後押しし、これからは食品ロス削減の視点も大きなウェイトを占めることになりそうだ。

食品ロス量の推移、平成29年度は推計開始以降最少

そもそも、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品「食品ロス」は、日本ではどれくらいの量なのか。農林水産省と環境省は食品ロス削減の取組の進展を目的に、平成24年度以降、食品ロス量の推計を行い公表している。

今年4月に公表された「食品ロス量の公表について(農林水産省)」によると、平成29年度の食品ロス量は推計約612万トン、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は推計約328万トンで、これは、規格外品、返品、売れ残り、食べ残しによるもの。一方、家庭から発生する食品ロスは284トンで、食べ残し、手つかずの食品、皮の剥きすぎなど過剰除去によるもの。

食品ロス量は莫大だが、平成29年度のロス量は、”事業系”と”家庭系”いずれも推計を開始した平成24年度以降最少だった。大幅減とは言えないものの、企業の取組み加速と消費者の意識の高まりで、今後、記録は毎年更新されそうだ。

食品ロス問題、意識高いのは男性より女性

食品ロス問題に対する消費者意識の特徴をつかめる調査がある。マーケティングリサーチのネオマーケティング(東京・渋谷)が今年4月に実施した食品ロスに関する調査では、食品ロスへの課題意識が高いのは男性より女性であることがわかった。

料理・栄養・家族の健康など、食と向き合う機会が男性よりも女性に多いことが関係しているのかもしれない。

食品ロス意識

出典:ネオマーケティング

続いて調査では「食品ロスを防ぐためにやっていることがあるか?」と質問。女性は全体で57%が「ある」と回答。年代別に見ると、20~60代、各年代いずれも半数以上の女性が食品ロスを防ぐための取り組みを行っており、40代が最も多い結果となった。

食品ロス意識 年代別

出典:ネオマーケティング

企業の食品ロスへの取り組み、活発に

消費者個々が、食品ロスの問題意識を持って日々取り組むのは大切なことだが、廃棄量を大幅に減らすには、やはり企業・業界での大規模な取り組みが必要。最近は様々な取り組みが活発化している。

飲食店のフードシェアリング

食品ロスをなくす画期的な取り組みとして注目を集めているサービスといえば、フードシェアリングサービスTABETE。食品が余った店舗と、お得に食事をしたい生活者をつなぐことで、飲食店の食品ロス軽減や売上向上につなげている。

「捨てる当たり前を捨てる」、もぐもぐチャレンジ

有限会社with(高知)は、「もぐにぃ」というキャラクターを作り、スーパーのサミットなど、全国の加盟店に食品ロス削減の”仕組み”「もぐもぐチャレンジ」を提供している。その仕組みとはこんな流れだ。

  1. 【店舗】賞味期限・消費期限が迫った商品に、「もぐにぃ」シールを貼る
  2. 【消費者】もぐにぃシールが貼ってある商品を購入
  3. 【消費者】もぐにぃシールをシール台紙に貼る
  4. 【店舗】シール10枚と引き換えにプレゼント

小さい子どもや、小さい子どものいるママがメインターゲットで、「店内でシールを見つけるワクワク」「シールを10枚集めるワクワク」「プレゼントと交換できるワクワク」を提供する。消費者は楽しみながら日々の食品ロスに取り組める。子どもの食育にもつながるという。

消費期限間近の商品購入でポイント付与、セブンイレブン

セブンイレブンでは、販売期限が近い食品を購入するとnanacoポイントが付与される「食品ロス削減のためのエシカルプロジェクト」を実施している。プロジェクトは2018年から試験的に行われ、今月全国への拡大が始まった。販売期限が迫った商品(おにぎり、弁当、パン、麺類など)には緑色のシールが貼られるため、消費者は対象商品に気づきやすい。電子マネーnanacoで買うのが条件で、店頭価格の5%分のnanacoポイントが付与される。

 

 

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