「代替医療でがんは治癒する」と4割が回答、米調査

エビデンスに反し、米国人の10人に4人が代替療法でがんは治癒すると考えていることが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が実施した意識調査から明らかになった。調査では、米国民の多くががん患者に対してはオキシコンチンなどのオピオイド系鎮痛薬の使用を制限する規制に反対しており、医療用大麻の使用を支持していることも分かった。また、がん治療費の高さが米国民にとって主要な懸案事項となっていることも示された。

ASCO会長のMonica Bertagnolli氏は「この調査結果は、がん関連の課題を米国民がどのように考えているのかを示すバロメーターとなるものだ」と説明している。その上で「今回の調査から、早急に取り組むべき重要な課題が浮き彫りになった。具体的には、がん治療に関する誤った情報を正すこと、患者が確実に必要とする鎮痛薬を使用できるようにすること、患者やその家族が経験する経済的な負担を軽減することなど多岐にわたる」と話している。

調査は約4,900人の18歳以上の成人を対象に7月から8月にかけて実施された。そのうち約1,000人はがん患者または経験者だった。また、対象者にはがん患者を介護する家族も含まれた。

その結果、これまでの研究で標準治療を受けたがん患者と比べて代替療法のみを受けたがん患者では、がんによる死亡率が大幅に高いことが示されているにもかかわらず、回答者の39%が「酵素療法や酸素療法、食事療法、ビタミン剤やミネラル剤でがんは治癒する」と考えていることが分かった。

ASCOのチーフ・メディカル・オフィサーであるRichard Schilsky氏は「がん治療を選ぶ際には、適切に実施された研究から導き出されたエビデンスに従うのが最善の方策だ。代替療法のほとんどは厳密に有効性が検証されていないか、検証されていても患者への有益性は認められていない」と指摘している。

なお、今回の調査では、高齢者よりも18~53歳の若年層や中年層で代替医療の信頼度が高いことも分かった。しかし、代替療法のみを受けたがん患者の死亡率は外科手術や化学療法、免疫療法、ホルモン療法などの標準治療を受けたがん患者の約2.5倍であることが2017年8月に「Journal of the National Cancer Institute」に掲載された論文で報告されている。

調査ではその他、回答者の4分の3がオピオイド系鎮痛薬の処方を厳格化する新たな規制について「がん患者には適用すべきではない」と答えていた。また、過去12カ月以内に疼痛管理などの目的でオピオイド系鎮痛薬を使用したことがあるがん患者の40%が「鎮痛薬を入手しにくかった」と回答していた。さらに、回答者の10人中8人以上が「がん患者が医療用麻薬を使用することに賛同する」と答えたが、過去12カ月以内に医療用大麻を使用したことがあるがん患者の48%が「医療用大麻を入手しにくかった」と回答した。

そのほかにも回答者の57%が「がんと診断された場合の心配事は、主に家族の金銭的な負担や治療費」と回答しており、死に対する恐怖やがんに関連した疼痛、苦痛よりも金銭的な負担の方が大きな不安をもたらしていることも明らかになった。(HealthDay News 2018年10月30日)Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

 

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