生活習慣病の種類・原因・予防にむけた国の取り組み(2/2)

生活習慣病を予防する国の取り組み

国が生活習慣病予防を推進する理由

国は生活習慣病の予防に積極的に取り組んでいる。少子高齢化が急速に進む日本では、医療費の増大が問題となっており、国民の健康寿命を延ばすことは社会保障制度の持続性にもつながるからだ。生活習慣病は重症化すると日常生活に支障をきたすおそれがあり、日常生活に制限のない期間を指す健康寿命を損なう可能性が高い。国は健康寿命を延伸することを重要な政策に掲げている。

健康日本21の取り組み

健康日本21は「21世紀における国民健康づくり運動」のこと。健康増進法に基づき、国民の健康増進の方向や目標を定めている。2013年以降は「健康日本21(第2次)」の取り組みが始まっている。5つの基本的な方向性の中に、「生活習慣病の発症予防と重症化予防」も挙げられている。食生活を改善したり、運動習慣を身に付けたりといった一次予防を重視した対策を推進することなどが明記されている。

女性の健康づくりに関する取り組み

女性の健康問題を社会全体で支援することを目的にさまざまな取り組みが展開されている。

  1. 女性の健康推進室ヘルスケアラボ
    厚生労働科学研究費補助金で作成されたヘルスケアの情報サイト。女性に特化した視点で生活習慣病の情報提供が行われている。例えば閉経後のメタボリックシンドロームのリスクなどが紹介されている
  2. 女性の健康週間
    厚生労働省と公益社団法人日本産婦人科医会、公益社団法人日本産科婦人科学会が共催する運動。毎年3月1日~8日に、女性の健康にまつわるイベントや講座が開催される
  3. 健康経営銘柄の選定基準に「女性の健康」を追加
    2019年から経済産業省および東京証券取引所が認定する健康経営銘柄の選定基準に、「女性の健康」に関する取り組みの項目が追加された。これまではメタボ対策や生活習慣病を中心に対策が行われてきたが、働く女性の増加や女性活躍の広がりなどを背景に、企業の健康対策トレンドは「女性の健康」に移行しつつある

生活習慣病予防関連ビジネス

「見える化」「数値化」が鍵

例えば糖尿病が進行して透析が必要になると、年間500万円の医療費と週3回の通院が必要となり生活の質が大幅に低下する。こうした「健康力低下や罹患による経済的負担やQOL低下」「自らの健康維持・増進に投資することによる効果」を〝見える化〟することで、個々の積極的な生活習慣病予防への取り組みが期待される。企業・健康保険組合・自治体の積極的な健康サービス活用が進むことも想定される。

健康行動における行動変容は、見える化や数値化によって促されることも多いため、生活習慣病予防ビジネスでは、生活者(あるいは患者)のヘルスケア関連データの「見える化」「数値化」が一つの鍵となる。

生活習慣病予防に関するヘルスケアビジネス

公的保険外サービスは、糖尿病、高血圧性疾患、運動機能障害、摂食障害を合わせると年間4兆円の市場創出、1兆円の医療費適正化効果が見込まれるとの試算もある(経済産業省)。生活習慣病予防関連ビジネスのチャンスと医療費削減への貢献は大きい。

例えば生活習慣病の重症化予防には、食習慣の改善に寄与する配食事業や栄養アプリ事業、運動習慣の定着を促すフィットネス事業、減塩食や低たんぱく食ニーズに応える食品開発事業、ドラッグストアによる健康相談事業、寝具メーカーに限らず企業各社による睡眠関連事業などが役立っており、生活習慣病予防ビジネスは多岐にわたる。

医療費適正化が課題となる行政においては、ヘルスケア産業の供給環境を整えるべく、法規制の線引きを明確にする〝グレーゾーン解消制度〟を積極的に運用したり、ヘルスケアサービス創出を支援している。例えば経済産業省は「ヘルスケアサービス 参入事例と事業化へのポイント」で、以下の8件のヘルスケアサービス事例を紹介し、各事業者の新規参入の参考となるよう情報提供を積極的に行っている。

    1. (株) True Balance
      まちに健康ブームを起こす健康教室事業
    2. 社会医療法人蘇西厚生会
      保険外サービスとして医師会が主導する健康増進プログラム事業
    3. (株)くまもと健康支援研究所
      元気が出る学校・大学(循環型介護予防エコシステム)事業
    4. 株)データホライゾン ・ (株)DPPヘルスパートナーズ
      医療保険者向け保健指導・データヘルス支援サービス事業
    5. (株)ルネサンス
      「シナプソロジー」を活用した認知機能の低下予防事業
    6. KDDI (株)
      健診未受診者対策をサポートする自宅でできる血液検査サービス事業
    7. 資生堂ジャパン(株)
      美容を活用した社会性・心のフレイル対策サービス事業
    8. (株) エス・ピー・アイ
      介護旅行・外出支援サービス事業
      引用:経済産業省「ヘルスケアサービス 参入事例と事業化へのポイント

地域ごとのサービス創出に着目

生活習慣病予防ビジネスをみると、健康教室や外出支援サービスなど地域ごとのサービス提供に特化しているものも多い。今後は、地域にすでにある施設がスモールビジネスとして新たに生活習慣病予防に資する事業を立ち上げる、あるいは大手メーカーにおいては地域の実情にそくしたサービスにカスタマイズして地域ごとに提供する事例が増加していくだろう。自治体との連携もビジネス拡大への鍵となる。例えばライザップ(東京・新宿)やドコモ・ヘルスケア(東京・渋谷)は自治体との取り組みを積極的に行っている。地域におけるヘルスケアビジネスの創出については「地域におけるヘルスケアビジネスの創出について(経済産業省)」が参考になるのでチェック。地域ごとにあわせた事業開発に役立つ無料ツールやデータは以下記事にまとめたのでご参考に。

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