妊娠中のハーブ製品の使用は母子ともに安全か?

たとえ自然由来のサプリメントでも、妊娠中の摂取は避けるべきかもしれない―。74件の研究論文のレビューから、一部のハーブ製品の使用で早産や帝王切開などの妊娠合併症リスクが高まる可能性があることが示された。研究の詳細は「Obstetrics & Gynecology」5月号に発表された。

英王立アバディーン小児病院のJames McLay氏らは今回、47種類のハーブ製品について検討した74件の研究論文をレビューした。その多くは妊娠中に摂取したハーブ製品について女性に尋ねた観察研究だった。一方、対象者に妊娠中または出産直後まで特定のサプリメントを使用してもらい、その有効性や安全性を評価した臨床試験は29件だった。解析対象とされた女性は計106万7,071人に上った。

このうち1件の研究から、妊娠後期にアーモンドオイルを肌に塗っていた女性では、塗っていなかった女性と比べて早産リスクが約2倍であることが示された。また、妊娠期間を通してブラックリコリス(甘草)のキャンディーを摂取していた女性でも、早産リスクの上昇が認められたとする2件の研究があった。なお、リコリスのキャンディーは、胸やけなどの消化器症状に対する民間療法として使用されている。

一方、陣痛を誘発し、分娩時間を短縮するとされるラズベリーの葉を経口摂取した女性では、摂取しなかった女性と比べて帝王切開を必要とする確率が約3.5倍であることを示した研究もあった。また、アフリカのマラウィ共和国で実施されたある研究では、ムワナフェポ(mwanaphepo)と呼ばれる伝統的なハーブを使用した女性では、帝王切開やその他の分娩時の問題、新生児の死亡といったリスクがわずかに上昇することが示されていた。

ただ、McLay氏は「妊娠中のハーブ製品に関する研究の規模や研究デザインには問題があり、サプリメント自体が悪いとは結論づけられない」と指摘している。その上で、今回のレビューについては、「ハーブ製品の有効性や安全性は、ほとんど明らかにされていないという事実を再認識させるものだ」と説明している。

妊娠中のさまざまな症状を軽減するため、あるいはサプリメントとしてハーブ製品を使用する妊婦の割合は、国によって違いはあるものの10~75%に上ることがこれまでの調査で示されている。McLay氏は「ハーブだから安全だとは限らないことを認識しておくことが重要だ」と指摘し、「ハーブ製剤を使用する場合は、必ず医師に相談してほしい」と呼び掛けている。

この研究には関与していない米ジョージ・ワシントン大学医学部産婦人科臨床教授のAnthony Scialli氏は「これらの研究で、ハーブ製品そのものが妊娠合併症の原因だったことを証明したものは一つもない」と指摘する。その上で、「妊娠中にハーブ製品を使用した女性がもともと抱えていた健康上の問題が要因となっている可能性もある」との見方を示している。

では、局所的なアーモンドオイルの使用が原因で早産が起こるというのは、現実に起こりうるのだろうか? この疑問にMcLay氏は「答えられない」としながらも、「アーモンドオイルに含まれる脂肪酸や汚染物質によって早産が引き起こされる可能性は理論上、考えられる」と話している。その一方で、「研究デザインが不適切であった可能性や、偽陽性のデータが収集されていた可能性もある」と付け加えている。

また、Scialli氏もMcLay氏に同意見で、「ハーブ製品も薬であり、妊婦は一般の薬剤と同様に、ハーブ製品の使用にも注意を払うべきだ」と話している。ただ、これまで比較的多くの研究で検証が重ねられてきたショウガなどについては、「全般的に安全で、つわりの軽減に有効な手段となりうる」としている。(HealthDay News 2019年4月10日)Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

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