妊娠中の葉酸とビタミンB類摂取で子どもの問題行動リスク低減

妊娠中に母親が葉酸やビタミンB類を摂取すると、出生した子どもが5歳の時点で多動や情緒の問題、向社会的行動傾向が低いといった問題行動を呈するリスクが低減する可能性があることが、愛媛大学大学院疫学・予防医学講座教授の三宅吉博氏らの検討で分かった。詳細は「Nutritional Neuroscience」オンライン版に掲載された。

 これまでの研究で、妊娠中の葉酸とビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンB2の摂取はDNAのメチル化などを介して出生した子どもの健康に影響する可能性が報告されている。しかし、妊娠中のこれらの摂取と子どもの問題行動との関連についてはほとんど研究されていなかった。そこで、三宅氏らは今回、九州・沖縄母子保健研究データを用いて、これらの関連を調べる観察研究を実施した。

 対象は、同研究に参加した母親とその子ども計1,199組。母親が妊娠中に実施した食物摂取頻度調査票を用いて、妊娠中の栄養素のデータを収集した。また、子どもが5歳の時点で親に問題行動の有無や程度について尋ねた。なお、問題行動は「Strengths and Difficulties Questionnaireという国際的な質問票を用いて評価し、情緒問題と行為問題、多動問題、仲間関係の問題、向社会的行動傾向の低さが含まれた。

 その結果、妊娠中の母親を葉酸の摂取量で4つの群に分けて比較したところ、最も摂取量が少なかった群に比べて、最も多い群では向社会的行動傾向が低いリスクが有意に低いことが分かった(調整オッズ比0.5595%信頼区間0.370.80、傾向性P0.0002)。

 また、妊娠中のビタミンB6摂取についても同様に、摂取量が最も少なかった群に比べて最も多い群では多動問題(同0.570.340.94、傾向性P0.01および向社会的行動傾向が低いリスクが有意に低かった(同0.580.400.85、傾向性P0.0009)。さらに、ビタミンB2摂取についても、摂取量が最も多い群では情緒問題のリスクが低かった(同0.580.330.99、傾向性P0.11)。一方、妊娠中のビタミンB12摂取はいずれの問題行動とも有意な関連はみられなかった。

 以上の結果を踏まえ、三宅氏らは、さらなるエビデンスの蓄積が必要としながらも、「妊娠中の葉酸摂取は出生した子どもの低い向社会的行動に、ビタミンB6摂取は多動問題と低い向社会的行動に、ビタミンB2摂取は情緒問題にそれぞれ予防的に働く可能性がある」と結論づけている。Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

 

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