ベビーテックで子育てはどう変わる?市場への影響と日本企業の商品例(2/3)
ベビーテックを利用するメリット
「育児の効率化」を目指すベビーテックの活用メリットは、親や親族など特定の保護者だけではなく、子どもを預かる保育施設や保育士にも及ぶ。一人一人の状態を記録し異常を知らせてくれる管理システムや、保護者が自身の子どもの状態をリアルタイムでチェックできるスマホアプリが大きな安心材料となっている。ベビーテックの普及によって待機児童問題解決への糸口も見えてくる。
【メリット1】赤ちゃんの危険をいち早く察知できる
- IoTにより、赤ちゃんの体調に関するデータの記録や異常を検知
┗例:赤ちゃんの脱水症状を検知してお知らせするおしゃぶり、赤ちゃんの心拍数や呼吸をモニターする計測機器、赤ちゃんの排泄を記録するアプリ - 赤ちゃんの危険な行動を保護者がいち早く気づける
┗例:シートベルトが外れたときに警告するチャイルドシート、睡眠時うつぶせになるとアラートが鳴るアプリ
【メリット2】誰でも育児を手伝える
- 育児に必要な作業をベビーテックがサポート
┗例:ワンタッチで粉ミルクを作れる機械 - 保護者以外でも育児を手伝いやすくなり、親族などに預けても同様の子育てが可能に
┗例:ミルクの温度を自動で調節する機械 - 赤ちゃんと離れた場所にいても状況を確認できる
┗例:赤ちゃんが飲んだミルクの量をリアルタイムで知らせるアプリ
【メリット3】保育施設の業務負担を軽減できる
(1)保育士の業務負担の軽減
ベビーテックの導入による育児の効率化は、保育士の負担を減らすことにもつながる。現在、保育士は1人で複数の赤ちゃんの保育を担当することもあり、午睡(昼寝)の時間など時間帯によっては業務負担が大きくなりやすい。たとえば午睡のときに赤ちゃんの姿勢をセンサーで感知して記録し、異常があると知らせてくれるベビーテックを使えば、赤ちゃんの状態を保育士とツールでダブルチェックできるようになり負担が減る。かつ事故も未然に防ぎやすくなる。
0歳〜2歳までの乳幼児を預かる保育士たちにとっては、子どもたちのお昼寝の時間も気が抜けない。乳幼児が寝ているときも、電気は完全には消せない。窒息やSIDSなどを防ぐうえでは、眠っている子の顔色の変化を確認することが欠かせないからだ。
「お昼寝中のリスクは全員の頭に入っているので、気も抜けないし、目も離せない」
施設長を務める上野万値子さんは、こう話す。
保育士は、眠っている子の呼吸の状態と顔色を5分おきに確認して、記録する。うつぶせになっている子がいれば、あお向けにする。「目視だけでは不十分なので、ちょっと胸を触ってみたり、口元に手を持っていき、ちゃんと息をしているかも確認している」(上野さん)という。
一方で、お昼寝の時間は、保育士らが一息ついたり、保護者との連絡帳を記入したりできる限られた時間でもある。このためモニカは春から、布団の下に敷いて、寝ている乳幼児の呼吸などを監視するセンサーを取り入れた。(引用:BUSINWSS INSIDER「睡眠中の赤ちゃんの突然死、テクノロジーで防げ。保育士の負担軽減にも」)
(2)保育士不足の改善
待機児童問題が社会問題となっている今、保育士の人材不足は目下の課題。その理由の一つに、保育士資格保持者が保育士にならない現状がある。厚生労働省の調査によると、保育士としての就業を希望しない理由は以下の通り。
- 【有資格者が保育士としての就業を希望しない理由】
1位:賃金が希望と合わない(47.5%)
2位:他職種への興味(43.1%)
3位:責任の重さ・事故への不安(40.0%)
4位:自身の健康・体力への不安(39.1%)
(出典:厚生労働省「保育を支える保育士の確保に向けた総合的取組の公表」)
この結果からは、保育士が命を預かる職業でありながらもその責任の重さに賃金や待遇が見合っていないことがうかがえる。ベビーテックを導入することで事故の発生を防ぎながら仕事の効率化を図ることができ、人材不足の改善につながると考えられる。
(3)保護者が安心して保育施設を利用しやすくなる
子どもを保育施設に預けることに不安を感じる保護者は少なくない。確実性が高いベビーテックを活用することで、機械と人のダブルチェックを実現。ヒューマンエラーのリスクが下がり、施設側はより安心した施設利用をアピールすることができる。またスマホアプリを活用すれば、リアルタイムで子どもの状態を確認することができ、保護者の安心をサポートしながら、保育士も保護者対応への手間や負担を削減することができる。