日本香堂、フェムテックを開発するはずが、新習慣「瞑想香浴」を提案する商品を発売した理由
「青雲」などで知られる線香メーカーの日本香堂(東京・中央)は先月末、日本の香文化に着想を得た新フレグランスブランド「KODU(コデュ)」を立ち上げ、第一弾として入浴剤「KODU バスパウダー」3種を発売した。日常を整える新しい瞑想の形「瞑想香浴」を提案するブランドで、香りに集中することで自分自身と向き合い、「素の私に戻る」時間へと導く。入浴剤の香りは、香木を知り尽くす同社の調香師が監修。サンダルウッド、ヒノキ、ウードをキーノートに開発した。
実はこのブランド、フェムテック商材を開発するための新規プロジェクトから生まれたという。プロジェクト開発部ブランド開発室の嶋脇明菜氏が、「スタートはフェムテックだったが、最終的には、その発想を元に別の商品を開発することになった」と明かした。
当初は、同社の強みである“香り”を活用し、生理などによる心身の悩みに寄り添う商品を構想していた。だが市場リサーチや議論を重ねる中で、「フェムテックの目的が “女性の生活を快適にすること” なのであれば、香りを活用したソリューションは、生理の悩みに限らないのでは?」といった違和感が芽生え、「もっと幅広い女性に届けられるのではないか?」と考えるようになった。フェムテック・フェムケア市場にある既存商品の多くが、生理・妊娠・出産・産後と、特定領域に集中している点も気になった。「本来、女性の心身の悩みはもっと多様で、更年期などさまざまなライフステージや年齢の女性が、それぞれ悩みを抱えているのでは?」「フェムテックにこだわって発想すると、ターゲットを特定の属性に絞り込むことになってしまう」「フェムテック商材を作ることがゴールになっていないか?商品開発の本質を見失っていないか?」。チームではそんな声が上がるようになった。

【出典】日本香堂(ラインアップは3種。左:切り替えや思考の整理、朝や仕事帰りのバスタイムにおすすめの「リセット」。中:乱れた一日を整えたい夜や、週末の休息には「調和」。右:気持ちを手放したいときや、何も考えずに深く眠りたい夜は「やわらぎ」)
議論を経て立ち返ったのは、自社の開発意義。「私たちが作りたいのは、誰もが日常的に使える身近なアイテムで、多くの人の悩みに応えられる商品」。そんな答えに辿り着き、開発カテゴリーを見直すことにした。流行に乗ることで得られる効果もある一方で、フェムテックの文脈に絞ると、関心層以外に届きづらくなるという懸念もあった。「フェムテックとして開発をするとイメージが限定されてしまい、自分ゴトとして受け取ってくれる層を狭めてしまう。それは避けたかった」と、当時を振り返る。「流行りに乗ることよりも、長く育てていけるブランドにしたい」という思いも、議論の中心にあったという。
最終的にターゲットに定めたのは、流行の最先端を追う層ではなく、自分の価値観を大切にする30〜40代の女性。自分軸を持ちながらも、毎日を慌ただしく過ごす中で自分と向き合うことができていない、そんな女性をペルソナにした。「忙しい女性たちに、手間のかからない深いリラックス体験を届けたい。そこで、香りと瞑想を組み合わせて日常を整える『瞑想香浴』をコンセプトにしたブランドを立ち上げることにした」。
第一弾の商品は、そのコンセプトを直感的に体感できる入浴剤を選定。今後は、バスタイム以外の時間や場所でも「瞑想香浴」を楽しめる商品展開を目指す。ブランドサイトで販売を開始。大手バラエティストアでの取り扱いも予定しており、今後はドラッグストアでの展開も視野に入れる。
【編集部おすすめ記事】
■効果実感のある精油ランキング、PMS・更年期・不眠・冷え・肌のハリなど25の悩み別
■新発想のリラックス法、アップルパイの香りを注入したブランケット 米ウォルマート
■森林でヘルスケア、女性のニーズは7割超え
■香りトレンドは「怒り・敵意を解消させるグリーンノート」
■人気のヘルスケア商品分析で明らかに、「女性の健康消費を促すマーケティング」