がんサロンとは? 女性特有のがんや治療中の美容悩みに対応(2/2)

がんサロンに求められていること

がんサロンの運営方法や目的などはサロンによって異なるが、がんサロンに求められていることは共通しており、大方以下3点である。

【がんサバイバーとその家族の気持ちに寄り添う】

治療方法の選択、治療の副作用、将来のこと、再発のこと、仕事のこと、治療中の家族のことなど、がんサバイバーはあらゆる不安や悩みを抱えることになる。がんサロンは、このようなネガティブな感情を安心して吐き出せる場であり、そして、がんサバイバー同士やその家族同士で気持ちや体験を共有できる場であることが第一に求められている。

【がんサバイバーとその家族のQOL向上】

がんサバイバーやその家族のニーズに対応しQOL向上を目指すことも、がんサロンに求められる大きな役割。ニーズとは、例えば次のようなことだ。

  • 治療と向き合うために、がんについて学びたい
  • 治療方法(あるいはその選択肢)や副作用について学びたい
  • 治療中のスキンケアやメイクについて学びたい
  • 治療を続けながらどのように子育てをすればいいか、ママのがんサバイバーから実体験を聞きたい
  • 治療と仕事をどのように両立すればいいか知りたい
  • がんに良い生活習慣について、がん治療が終わった人から聞きたい
  • ポジティブな気持ちになるための方法について、がんサバイバーの実体験を聞きたい
  • 治療中や治療後の日常生活に適した商品やサービスについて知りたい

【地域でのがんに対する理解・協力を高める】

がんサロンの継続的な運営には、地域社会の理解が欠かせない。がんサバイバーが安心して通える環境をがんサロン側が整えていく必要がある。そのためには、がんサバイバー、医療従事者、自治体、がん相談員の連携が必要で、地域に向けた啓発や広報活動を積極的に行うことががんサバイバーから期待されている。ただ、その連携の前段階で、医療従事者や自治体側の関心が低いケースもある。その場合は、医療従事者と自治体の理解を得るための活動も合わせて必要となってくる。

がんサロンのテーマ事例

ここまでがんサロンの概要について解説してきた。では、実際に運営されているがんサロンは、具体的にはどのような人を対象にどのような内容で開催しているのか?サロンによって異なるが、ここでは「対象者」という視点から事例をいくつかご紹介。女性に限定したがんサロンや美容悩みに応えるがんサロンなど、女性にフォーカスしたがんサロンを中心に集めた。

女性限定(大阪)

大阪労災病院のがんサロン「陽だまり」は女性限定サロン。がん相談窓口に、患者やその家族から、「他の人がどうしているのか聞きたい」などの声が届けられたことを機に始まった。ヨガ教室やがんと仕事の両立に関する講座など、毎回テーマを変えて開催している。

がん種別や子育て世代に限定(札幌)

北海道がんセンターでは、卵巣がんサロンや乳がんサロンなど、がん種別での開催の他、20歳以下の子どもがいる子育て世代に限定したがんサロンも開催。院内外問わず参加可能で敷居を低くしている。

“治療中の美容悩み”を切り口にワークショップを開催(千葉)

国立がん研究センター東病院のがんサロン「柏の葉サロン」では、がん治療中に発生する美容悩みについて、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・管理栄養士・医療ソーシャルワーカーなどが講師となって教室を開催している。参加者は、化学療法中のスキンケアやネイルケアカバーメイクの方法を体験しながら学べる。

がん種・ステージは問わない(東京)

東京医科歯科大学医学部付属病院のがんサロンでは、がんの種類・ステージに関係なく、がん患者とその家族が参加できる形態で交流会を開催。「事前申し込み不要・途中参加・途中退室は自由」とし、気軽に立ち寄れる環境を整えている。

県内のがんサロンをネットワーク化(熊本)

各都道府県内に存在する複数のがんサロンをネットワーク化する地域もある。例えば熊本県の「がんサロンネットワーク熊本」は、がんサロンの連携や、がん予防・がん治療の社会的理解と啓発を目的に、2012年に、県内に点在するがんサロンをネットワーク化。

がん患者や家族など参加者としてのメリットは、さまざまながんサロンの存在を知れること。サロンによって内容や集まる人が異なるので、自分に合った場所を県内で探せる。実際に、がんサロンネットワーク熊本では、参加者にいろんながんサロンに参加するようすすめているという。がんサロン側にとってもメリットがあり、ネットワーク化による周知で参加者を集めることができ運営を継続しやすくなる。

がんサロンもZoomで開催

がんサロンは3密になりやすく、また、がん患者は新型コロナに感染すると重症化するリスクが高いことから、今、全国の各がんサロンで開催中止が相次いでいる。

一方で、Zoom上で交流を図るがんサロンはコロナ禍でも開催を継続しており、その例が「がんサロン おしゃべリバティー」。オンライン上であれば、運営者は、関心の低い医療者や自治体に気兼ねする必要もなく、運営コストも抑えられる。参加者は自宅近くに限定することなく全国規模で視野を広げ、自分のニーズに合致したサロンに参加できるようになる。外出の必要もないので身体的負担も少ない。

これまではリアルに集まって開催するのが当たり前だったが、がんサロンも他業界と同様に今後はオンライン上での運営が増えていくだろう。

 

 

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