認知症カフェのメリットと課題とは?地域の事例に学ぶ運営のポイント

「認知症カフェ」が全国各地で増えている。カフェといっても喫茶店のことではない。地域にいる認知症の人とその家族、介護サービス事業者や介護専門職の人などが自由に集い情報交換できる場だ。国の政策もあり、今全国的な広がりを見せている。

認知症カフェの基礎知識

認知症カフェとは

「認知症カフェ」は、いわゆる営利目的の喫茶店や飲食店ではない。認知症の人とその介護をする家族、地域住民、介護・医療の専門職の人などが自由に集える場のことを指す。悩み相談や、情報交換、情報共有をすることで認知症や介護について理解を深めることを目的としていて、「ケアラーズカフェ」「オレンジカフェ」という名でも呼ばれている。

厚生労働省は認知症施策推進総合戦略、通称「新オレンジプラン7つの柱」の一つに「認知症の人の介護者への支援」を挙げており、その主な政策として認知症カフェを掲げている。東京都など取り組みに助成金を出す自治体も増えてきており、新しい社会福祉のあり方として注目を集めている。

認知症カフェのルーツは、1997年にオランダで始まった「アルツハイマーカフェ」。臨床老年心理学者のベレ・ミーセンとアルツハイマー協会がスタートさせ、その後イギリスをはじめとするヨーロッパ全域で広がっていった。2012年からは日本でも普及し始め、現在に至る。運営主体は主にデイサービスやグループホームなどを運営している介護事業者やNPO法人。以下動画は茨城県水戸市の認知症カフェの様子。

認知症カフェの活動内容

認知症カフェは月数回を目安に定期的に開催され、活動内容は地域や運営母体によって異なる。例えば以下のような取り組みがある。

  • お茶やお菓子を楽しみながら情報交換
  • ゲーム、カラオケ、映画上映会といったレクリエーション
  • 運動や工作を楽しめるイベント
  •  高齢者に人気の園芸やパソコン、体操などの教室開催

介護に関する相談が気軽にできるのも特徴。専門知識を持つ講師による講座や勉強会、専門職に相談できるイベント開催など、介護に関する疑問や悩みを解決する場としても機能している。喫茶店のような感覚なのでライトな雰囲気だ。

 

 

認知症カフェに期待できる効果

認知症の人が得られるメリット

認知症カフェは、認知症の人にとって社会との関わりを持てる貴重な場となる。認知症になると自宅にこもりやすくなるケースもあるが、そのような人にとって家の外に安心して通える居場所ができるのは、社会との接触を断たないためにも重要である。認知症カフェに通って専門職の人や同じ状況の人と定期的に交流することで、症状に対する不安がやわらいだり、趣味や楽しみが増えたり、症状が安定する人もいるという。

認知症の人を支える家族が得られるメリット

認知症カフェは介護の息抜きができる場にもなる。介護していると「これから先どうなってしまうのか?」という将来の不安や孤独を感じやすい。カフェに行けば同じ悩みを持つ人たちと情報交換ができるため、不安や孤独から解放される。

 

認知症カフェの現状と開設の仕方

認知症カフェの現状

超高齢社会が進む国内において、認知症カフェの開設ニーズは高まっている。開設基準は特に設けられていないが以下のような場所で開設されることが多い。

  • 介護施設の一角
  • コミュニティセンター
  • 福祉施設
  • 公民館
  • 個人宅
  • 地域のレストラン・カフェ
  • 病院内
  • 地域の集会所
  • 支援センター
    など

月に1~2回、1回2時間ほどが平均的な開催回数で、参加費用は無料〜数百円程度、高くても2,000円程と利用しやすい料金に設定されている。基本的には予約や事前申込不要で、いつでも気軽に参加できる。多世代交流型の認知症カフェ、セラピードッグのいる認知症カフェなど、SNSには「#認知症カフェ」の投稿が複数見られる。

 

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大変遅くなりました。 5月18日(土)に【おれんじカフェ】を開催しました! 5月は地元山都町、馬見原バンド【ハニーナイン】さんにお越しいただき、懐かしい歌謡曲のコーサートでした🎵 何度か馬見原バンド【ハニーナイン】さんにはお越しいただいておりましたが、フルメンバー勢揃いは今回が初めてで、残念なことに、副店長は別件で不在しており、参加できなかったことをとても悔やんでおりました😅 それだけフルメンバー全員をお呼びできることはきわめてないことで、山都町のイベント以外でお忙しい中、こうしてお越しいただけれるのは、【おれんじカフェ】だけではないでしょうか❗ 今後もみなさんに楽しんでいただける、笑顔づくりのお手伝いをさせていただき、みなさんによる居場所へとなれば幸いです😊 ご協力→カフェ218様いつも、チラシの素敵なイラストや美味しいコーヒーありがとうございます😊 次回は6月20日(木)に予定してます☕ #認知症カフェ #おれんじカフェ #熊本県 #山都町 #認知症予防 #CAFE218 #介護 #福祉 #認知症

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☆オレンジカフェ 凜 ☆ 5/28 毎月恒例のオレンジカフェ(認知症カフェ改め) 今回は 府中町を中心に演奏活動をされている田村さんと岩崎さんが、ピアノとフルートのミニコンサートをしてくださいました。 演奏に合わせて歌えるようにと、大きく書かれた歌詞も準備してきてくださって、皆さんとっても楽しそう♪ ご近所さんのちょっとした集いの場にもなっていますが、義母の認知症に悩む私の友人も来てくれました。 コーヒータイムの時に施設長さんなど専門の方々に話を聞いてもらって少し気持ちが前向きになれたようです。 誰もが通る道だから。 なるべく楽しくオープンに。 問題解決に向けてお手伝いできたらいいなと思います。 オレンジカフェは毎月第4火曜日の13:00〜15:00です。 ぜひ、お気軽にお越しください。 #はな凛 #Rincafe #リンカフェ #安佐北区_花 #安佐北区_カフェ #安佐北区_イベント_レッスン #オレンジカフェ #認知症カフェ

Rin flower& cafeさん(@hana87rin)がシェアした投稿 –

どこにどのような認知症カフェがあるのかを知りたい場合は、市区町村のホームページや地域包括支援センターに問い合わせて確認できる。

認知症カフェが抱える課題

認知症カフェはまだスタートを切ったばかりのため課題点も多い。以下は課題としてよく挙がる3項目。

  • 資金不足に陥りやすい
    利用者の負担額は安く設定されているところが多いため、カフェの運営自体の収入が少ないことが理由。助成金を提供している自治体はあるが、助成金の有無は地域によって異なり、自分たちですべて賄わなければならないところも少なくない
  • 運営ノウハウがなく、開設にいたらない
    民間企業や地域がそれぞれのやり方で運営をしているため、ノウハウが共有されずらい
  • 人手が足りない
    介護に関わる人材が不足している中、市民ボランティアに頼ってカフェを運営しているところが多い。人材の確保が難しい

認知症カフェの始め方

認知症カフェ開設のおおまかな流れは以下。

  1. 認知症カフェを開設する地域について調べる
    地域のニーズに合わせたカフェ運営は必須。地域の現状や課題などについて調査を行う
  2. 共同運営者の理解を得る
    運営には複数の人の協力が必要。特に地域住民、協力機関との連携を築いておきたい
  3. 会場の決定
    参加するのに負担になるような場所は避ける。たとえば、坂道が多い場所、交通アクセスが悪い場所などは開設しても人が集まりにくい
  4. 開催日時の決定
    月1回など、開催に負担のないスケジュールが良い。助成金を利用する場合は、開催間隔の指定が設けられている自治体もあるので要確認
  5. 開催内容の決定
    専門職の人に来てもらえるよう依頼し、認知症カフェの内容を決める
  6. スタッフの確保
  7. 参加の呼びかけ

 

認知症カフェの事例と運営のポイント

認知症カフェの内容や料金、開催頻度などは各カフェによって異なる(編集部調査,2019年5月現在の情報)

認知症カフェの事例

岩手県

盛岡市だけでも「思いやりカフェ」「おはなカフェ」「どんぐりのカフェ」「ひまわりのカフェ」など大小さまざまな認知症カフェが設置されている。開催時間は平日の昼間2〜3時間ほどで、参加費用は無料〜400円。

福岡県

福岡市内に特に多く設置されており「ほほえみカフェ」「オレンジカフェ」など、さまざまな名称の認知症カフェが点在。月1回の土曜開催、開催時間は午前または午後の2時間、費用は無料または100円というところが多い。

千葉県

千葉市、市川市、船橋市といった人口の多い市を中心に県内全域に認知症カフェが設置されている。土日開催、2時間半以上のカフェも少なくない。

東京都

各区に「はあとカフェ」「みんなとオレンジカフェ」「オレンジカフェ」などある。月に1回平日開催が主で、偶数月、奇数月開催というところも。参加予約が必要なところもある。

宮城県

仙台市「土曜の音楽カフェ♪」は、 毎月第1土曜日の13時30分〜15時30分まで、東北福祉大学ステーションキャンパスで開催されている、音楽の演奏を楽しみながら参加できる認知症カフェ。東北福祉大の講師が発起人となって始まったカフェで、毎回100人ほどの参加者があり東北地方では先駆的な存在。

岡山県

笠岡市「ひだまりカフェ」は、毎月第1火曜日と第3金曜日の13時30分~15時30分まで、大井公民館で開催されている。

岩手県

奥州市「思い出カフェ」は、奥州市が主催する認知症カフェ。市内にある地域包括支援センター1カ所と在宅介護支援センター11カ所で開催されており、開催日時は各場所で異なる。月に1回平日の10時前後〜15時30分くらいまでの間の2時間に開催されている。参加費はお茶菓子代として100~300円程。

認知症カフェを運営する際のポイント

認知症カフェを運営する際の主なポイントは以下3つ。

  1. 助成金を活用
    場所を用意してスタッフを揃え、カフェの存在を地域に周知させて運営していくには、さまざまな費用がかかる。まだ十分とはいえないが、助成金制度を設けているところは増えてきているので積極的に活用したい。たとえば、東京都の助成金については、東京都社会福祉協議会のホームページから最新情報をチェックできる
  2. 開設基準の確認
    現段階では明確な開設・設置基準がないが、今後は自治体ごとに基準を設けていく可能性がある。これから設置する場合は、各自治体のホームページで事前に確認しておきたい
  3. 地域の理解と協力を得る
    認知症カフェは地域の中の居場所であるから、地域との連携は欠かせない。特に地域の介護関連施設や、ボランティアなど福祉支援を行う社会福祉協議会などと連携しておく

 

全国の認知症カフェ一覧

認知症カフェは、認知症の人とその家族を地域で支えるために効果の高い施策である。国が設置を推奨していることもあり、今後ますます増えていくだろう。一方で、実際に開設・運営するには課題も多い。円滑な運営を行うには、ガイドラインの作成や補助金制度の充実など、自治体が積極的に関わることと、地域で介護に関わる人々の連携などが急務だ。今後取り組みがさらに発展していくことを期待したい。

 

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