「女性のヘルスケア」と「水」の新しい関係、未来を象徴するウォータートレンド5選
水と女性のヘルスケアの関係を振り返ると、最近は随分と活用が広がっている。以前から知られているものだと、水ダイエット、美肌や便秘改善に水を毎日一定量飲む、水を使ったコットンパック、フェイススチーマー、半身浴、ジェットバス、湯治などがそうだろう。飲料水だけを取ってみても、硬水、炭酸水、水素水、シリカ水など、異なる水質でブームが起きてきた。
最近だと、水と超音波だけで毛穴ケアができるウォーターピーリング、洗浄力の高いシャワーヘッド、ウォーターピックに代表される口腔洗浄機などの美容家電・雑貨が人気だ。
そう、水は女性にとってヘルスケアの象徴であり、そして必要不可欠なもの。だが最近は世界的な“ウォーターレス” の動きなど、水に対する女性たちの見方に変化が。「自分がキレイ・健康になるだけじゃダメ。地球にも優しくなくちゃ」ー。このような女性たちの意識変化を感じさせる、水にまつわるホットな話題を見ていこう。美容・健康・スポーツ、ヘルスケアに関係するあらゆる業界が知っておきたい、新たなウォータートレンドとは?
目次
1.世界はウォーターレスビューティへ
美容業界、”ウォーターレス”に注目
ウォーターレスビューティが世界的トレンドになりつつある。海外で広がりを見せており、2年ほど前から国内の美容系・ビジネス系メディアも「美容業界の新トレンド」として取り上げている。
国内ではまだ浸透は見られず、女性たちの間でも関心は今ひとつと言ったところだが、先進的なグローバル企業ではすでに具体的な取り組みが進められ、活況はこれからと見られる。
ウォーターレスビューティとは水の使用料を減らした美容法のことで、ウォーターレスを掲げるビューティブランドの定義は、以下のいずれかに当てはまること(参考:WWD)。
- 処方の水分量を減らす
- 製造の過程で水の量を減らす
- 製品を使用する際に必要な水の量を減らす
これらは、水の代わりにオイルやフラワーエキスを使用することで製品として完成する。
ウォーターレスに取り組み、実際に成果を上げている企業の一つが、世界最大の化粧品会社ロレアルグループ。同社は2013年にサスティナビリティプログラムとして「Sharing Beauty With All ~美のすべてを、共に次世代へ」を立ち上げ、いち早く環境・社会課題に取り組んできた。
昨年2月の同社の発表によると、2018年にロレアルの工場で消費された水は2005年比で48%の削減に成功している。この取り組みは高い評価を受けており、国際的NPO法人CDPから、コーポレート・サスティナビリティ分野で世界トップの評価を4年連続で受けている(2020年2月時点)。
“ウォーターレス”の背景
ウォーターレスビューティの背景にあるのは、世界人口急増の中で課題とされている深刻な水危機で、SDGsで言うところの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の達成に関わっている。
誰もが不便なく安全な水にアクセスできる日本にいると水危機の深刻さに気づきづらいが、世界規模で見ると、20億人以上が安全でない水を飲むことを余儀なくされ、9億人近くの人が今でも屋外排泄をし、40億人がトイレや公衆便所などの衛生サービスを利用できていないという現実がある。
人口急増で水不足と水ストレスが世界的に悪化していけば、水に不自由しない国に住んでいたとしても、いつ、どのような影響が自分の生活に及んでくるかわからない。
この世界的な社会課題を認識し国連は、2018年3月に「水の国際行動の10年(Water Action Decade)」を宣言した。SDGsの水資源に関する目標とターゲットの達成を内包したもので、水の管理方法の転換に世界各国で取り組むことを促している。
水を使わない美容法も“ウォーターレスビューティ”
製品そのものに水を使わない(あるいは減らす)ことで、その製品はウォーターレスビューティ(あるいは“ウォーターレスコスメ”とも呼ぶ)に位置付けられるが、消費者が製品を使用する際に水を使わないこともまた、ウォーターレスビューティ。
例えば、スポーツ後や夏など発汗が多い時や、防災時や入院時など、洗髪できない状況で使用されているドライシャンプー(水を使わないシャンプー)。頭皮にスプレーを噴射するだけで洗い流し不要なので、水を使わない。ドライシャンプーは、水の節約に貢献している地球に優しいシャプーでもあるのだ。
2.ラベルレスボトルはオシャレ
最近じわじわと人気を集めているラベルレスウォーター。これまでは「水素」「炭酸」「シリカ」など、水質にこだわった水が女性たちの間でトレンドになってきたが、今ホットなのは容器の方。ラベルレスのペットボトルのことだ。
通常ペットボトルにはブランド名、社名、産地など様々な情報を記載したフィルムが貼り付けられているが、そのラベルを貼り付けていないのがラベルレスタイプ。これは環境に配慮した取り組みの一環で、サントリーは今年11月にラベルレスの水とお茶の発売を開始(対象はECチャネル)、アサヒ飲料は2018年に発売を開始(ケース販売専用/今年4月にリニューアル発売)している。
ラベルレスの中で評価が高いのは、ロハコが2018年に発売を開始したLOHACO Water。デザインへの配慮がなされており、ラベルレスでありながらも、ペットボトルそのものにはさりげないデザインが施されている。購入者からは「置いているだけでおしゃれ」「シンプルデザインがおしゃれ」「かわいい」など、外観を評価する声が上がっている。
3.国内初の紙パック飲料水で脱プラ貢献
容器への注目はラベルレスだけではない。国内初のコンパクトサイズの紙パック飲料水が、今注目を集めている。
開発したのは、女性起業家が代表を務める株式会社ハバリーズ(京都)。プラスチック汚染問題に着目し脱プラ対策のために開発したもので、実際に「再生可能な資源を使用(FSC認証)」「リサイクル可能」「1本につき1円を世界自然保護基金に寄付」など、環境問題やサスティナビリティへの配慮をしている。
海外の飲料水と思わせるような、持っているのがオシャレなパッケージデザインはもちろんのこと、紙パックで飲める飲料水という新しさや社会課題に貢献した商品であることから、女性誌や経済誌がこぞって取り上げ、認知は着実に向上している。現在、全国のDEAN&DELUCAやナチュラルローソンで販売中。
4.マイボトルカバー、ハイブランドからも続々
ラベルレス飲料水や紙パック飲料水が注目されているが、さらに意識が高い女性なら、水筒をマイボトルにして水を持ち歩く。
お弁当ニーズの高まりから近年は、バリエーション豊かなお弁当箱や水筒が多く出回るようになったが、それに伴い女性たちの人気を集めているのが、水筒の持ち運び時に使うマイボトルカバー。取っ手がついているもの、首からぶら下げるタイプ、手作りなど、マイボトル生活を楽しむために#ボトルカバーを愛用する女性は増えている。
ついにはハイブランドからもボトルカバーが発売され、クロエからはボトルバッグ(84,700円)、ディオールからはボトルホルダー(67,100円)など、驚きの価格帯で売られている。
5.無料給水スポット、ユーザーも企業もメリット
mymizu(一社:Social Innovation Japan)は世界中の無料給水スポットを検索できるアプリ。施設(店舗、カフェ、ホテルなど)や公共施設(公園、駅など)、湧き水など、世界中の給水スポットが登録されており、ユーザーはマイボトルを持参すれば無料で給水できる。ユーザー自身で新たに見つけた給水スポットを登録することもできる。
使い捨てされるプラスチック消費の削減に着目し、人々の消費行動を「持続不可能」から「責任を持つもの」に変えることをミッションに掲げて始まったソーシャルビジネスで、例えば買い物中や旅行中に水を飲みたくなった時、プラスチックボトルに入った水をコンビニなどで買うのではなく、今いる自分の近くにある給水スポットを探して水を飲む。世界中の人がこういったアクションを日頃から心がければ、自ずとプラスチック消費は減り、廃棄物量削減による環境負荷が低減される。
ユーザー側のメリットは、地球に貢献しながら自分のお財布に優しいこと。熱中症対策にも効果を発揮するだろう。給水スポットとして登録しているカフェなど施設側のメリットは、マーケティング効果。例えば店内に設置しているウォーターサーバーを給水スポットとして登録しておけば、新たな顧客を呼び込むきっかけになる。
社会課題への貢献が大きいことから、このアプリも様々なメディアが取り上げており、今世間から高い関心を集めている。以下はmymizuの動画。
新ウォータートレンドは「地球環境への配慮」
2020年代を象徴する新しいウォータートレンドとして5つのトピックを見てきたが、共通項はすでにお気付きのはず。この5つに共通しているのは、SDGs達成への取り組みがビジネスの裏側にきちんと見えていること。新しいウォータートレンドとは、従来の”水質的特徴”や”家電・雑貨領域での活用”の進化版といった類のものではなく、”地球環境への配慮”という視点を持った商品・サービスのことだ。
クルエルティフリーの概念から動物実験を行う美容系企業の不買運動が過去に起きたように、企業の水資源・水管理に対する姿勢がそのまま、企業・商品・サービスの評価に影響する、そんな日もそう遠くはないだろう。美容・健康ビジネスは特に水と密接に関わっているので、ウォータートレンドを自社商品・サービスにどのように組み込んでいくべきか、早めに考えておいたほうが良さそうだ。
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