急加速するビューティテック 美容業界を牽引するハイテク商品&サービス事例(1/3)

女性ヘルスケア市場で今投資家やベンチャーを始め各社が熱視線を寄せるのが、「ビューティテック」と「フェムテック」。ビューティテック元年は2018年、時を同じくしてフェムテックへの注目もその頃から高まり始めた。

いずれも消費者のベネフィットはなんといっても、買い物時やサービス利用時のリッチ体験。精密なパーソナライズやカスタマイズ、利便性、購入検討や購入時にかかる時間短縮などメリットは盛りだくさんだ。「ビューティテック」も「フェムテック」も業界用語的で、女性消費者との共通言語にまでは至っていないものの、製品・サービスはすでに日常生活に入り込んでいる。今回はビューティテックに着目し、全体像をまとめた。

ビューティテックの基礎知識

ビューティテックとは

ビューティテックとはビューティ(Beauty)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、ARやAIなどの最先端テクノロジーを活用した美容製品・サービスを指す。美容系のIoTデバイスも含む。美容業界で身近にある例でいうと、若年女性を中心に人気のバーチャルメイクアプリもビューティテックだ。

国内外の美容業界で、美容とテクノロジーの融合が近年加速している背景を受け、アットコスメを運営するアイスタイルは2018年を「ビューティテック元年」と発表した。以降、国内でも続々と各社がビューティテック市場に参入している。

ビューティテックが対象とするクラスター

ビューティテック製品・サービスがターゲットにしているのは、デジタルデバイスとの接触率が高く最先端テクノロジーの受容性が高いミレニアル世代やZ世代、いわゆるデジタルネイティブ世代と呼ばれる若い世代だ(現10〜30代)。

女性は年齢とともに抱えるタスクが増えていくため(健康、家事、育児、仕事、親の介護など)、全関心ゴトに占める「美容」の割合は徐々に下がっていく。さらに、テック系デバイスのキャッチアップが若い人のように得意ではないので、ビューティテック元年前後で中高年層をターゲットにするのは難しい。

だが数年もすれば、ビューティテック市場での熾烈な競争の中で、中高年層の悩み・ニーズに特化した商品・サービスも登場してくるだろう。また、それまでの間に中高年女性のテックデバイスに対する抵抗感も徐々に低下していくと考えられる。自分や家族の健康管理のために「ヘルステックデバイス」や「介護テックデバイス」と接触するのは中高年層に多いからだ。

ビューティテックとは違う領域でのテックデバイスと触れることでビューティテックへの関心も高まるかもしれない。また、Z世代を子(あるいは孫)に持つ女性の受容性も高いだろう。

ビューティテックが注目される背景

●美容業界のデジタル化

あらゆる分野での活用が急速に進むAIやARによるデジタル化は、美容業界でも急速に進行している。最先端機能を搭載した製品・サービスが国内外で次々に開発され、例えば、シワ・シミ分析やバーチャルメイクといった高度なテクノロジーを、個人レベルでもスマホアプリで手軽に楽しめるようになった。

●顧客ニーズの多様化

インターネットで誰もが世界中の人々や情報と繋がれるようになり、女性たちの美意識が急速に多様化していることも、ビューティテックの受容性を高めている。

メイク、ファッション、肌の色、体型など、自分をかたち作る様々な要素を肯定し、その個性を生かして “自分らしさ” を表現したいという考え方が世界的に広まっていることで、「有名なモデルが使っているメイクを真似る」「CMで見たコスメを買う」と言った“誰かを真似て同じものを使いたい” “有名だから欲しい”という欲求よりも、「自分の素材(肌の色、目の大きさ、鼻の形、顔の輪郭)に適したコスメが欲しい、メイクをしたい」という欲求の方が強くなった。AIやARを搭載したビューティテックは、そう言った女性たちのパーソナライズ欲求を簡単に満たしてくれる。

●美容商品のコモディティ化

国内だけでも把握しきれない数の美容メーカーが存在し、加えて、越境ECの一般化で国外の美容商品も簡単に入手できるようになった。新技術による画期的な機能を武器にした商品が登場するも、モノと情報が過剰に溢れる中で、もはや女性たちは完全に美容ジプシーに陥っている。

「一体、何が自分に合っているの?」「一ブランドの中だけで自分に合った化粧品を探すのではなく、全ブランドの中から自分に本当に合った化粧品を見つけたい」、こういった精密な適合性を求める気持ちは、美容商品のコモディティ化とともに強まっている。ビューティテックの精密なパーソナライズ提案やバーチャルでの商品お試しが人気なのは、こういった女性たちのニーズに対応しているからだ。

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