“肺年齢” が生まれた理由は、年間死亡者数1.8万に上るCOPD

肺年齢とは呼吸機能の状態を年齢で示す指標で、喫煙者や元喫煙者を呼吸器疾患から救う鍵となる概念だ。そもそも、なぜ肺年齢という言葉が誕生したのか?その背景にあるのは、あまり知られていないがCOPDによる死亡者数が多いことにある。

肺年齢とは

概要

肺年齢とは日本呼吸器学会が考案した呼吸機能の指標。1秒間に吐く息の量(一秒量)から自分の呼吸機能の状態を実年齢や標準値と比較して、どの程度であるか確認するための目安として使われている。その測定は日本呼吸器学会・肺生理専門委員会が定義している式をもとに計算するが、性別でその計算式は異なる。

肺年齢を知るメリット

胸部レントゲン検査でも発見できなかったCOPDなど、呼吸器疾患の早期発見や予防が可能となる。COPDとは慢性閉塞性肺疾患の略称であり、長期の喫煙が主な原因とされている。慢性の呼吸不全ともなりうる病気だが初期症状が風邪に似た軽度のものであるため、発見しづらい現状にあった。

呼吸機能の特徴

呼吸機能は加齢に伴い低下する。長期間喫煙をしていたり呼吸器疾患を抱えていると、健常者よりも早く低下しやすい。肺の組織が壊れる肺気腫や慢性的な咳や痰の症状が特徴の慢性気管支炎など、呼吸機能が低下するとCOPDと呼ばれる呼吸器疾患を引き起こす。一度壊れた肺の組織は元には戻らないため、禁煙などにより進行を遅らせるか、あるいは一刻も早い早期発見が重要となる。

肺年齢の考えが生まれた背景

肺年齢という考えが生まれた背景にはCOPDの啓発がある。COPDの早期発見・早期治療を目的として、広く一般に普及するために考案された。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

COPDとは慢性気管支炎や肺気腫の総称で、大気汚染やタバコ煙などの有害物質を長期に吸入曝露することで起きる肺の炎症性疾患である。発症率は高く、喫煙者の5~6人に1人の数値となる15〜20%が発症する。肺の生活習慣病ともいわれ、中高年に多く発症する生活習慣病の一つとされている。人口動態調査(厚生労働省)によると2017年の国内のCOPD死亡者数は18,523人にのぼる。

COPDの症状

肺の炎症や気管支の萎縮が起こるため酸素が吸いにくくなる。初期症状は体を動かしたときの息切れや、咳、痰。重症化すると生活に支障をきたすほどの息切れの悪化がみられる。長期の喫煙歴に加えてこれらの症状が見受けられた場合はCOPDの疑いがある。COPDにより破壊された肺胞は治療をしても、二度と元に戻ることはない。(参考:日本呼吸器学会「呼吸器の病気」)

早期発見、早期治療が目的

COPDは自覚症状が出た時にはすでに病気が進行しているため早期対策が必要だが、肺機能を測定する肺機能検査(スパイロメトリー)の結果を一般の人が理解するのは難しく健康行動が起きづらい。そこで、わかりやすい言葉でCOPDを啓発するために、一般の人でもわかりやすい「肺年齢」という言葉が誕生した。実年齢と今の肺年齢の差を自覚させることで、早期治療への意識を高めることを目的としている。日本呼吸器学会 肺年齢普及推進事務局は、活用のための仕様書「肺年齢の利用について」を公開。日本呼吸器学会や、COPDの世界的啓発に取り組んでいるGOLDなどを初め、医療業界が一般生活者に向け肺年齢の普及に努めており、認知が広がっている。

 

肺年齢を活用してCOPD検査の結果がわかりやすく

広がる肺年齢の活用

肺年齢の検査は呼吸器疾患の早期発見の他に、健康維持のための行動変容や禁煙など生活改善のきっかけにもなる。実年齢との差が明らかになる肺年齢はその程度によって、日頃の意識付けから薬物療法や呼吸リハビリテーションなど、症状に合わせた治療法を選択する手助けにもなる。

スパイロメトリーとは

COPDの診断にはスパイロメトリーという呼吸機能検査が行われる。以下はスパイロメトリーを使った検査の様子を解説する動画。

実際の検査結果

従来はスパイロメトリーの検査結果のみが表示されていたが、肺年齢の普及のために、この結果に加え肺年齢と評価コメントが表示されるスパイロメトリーが開発された。肺年齢対応のスパイロメトリー表示例は、日本呼吸器学会「肺年齢」を確認。

肺年齢の調べ方

スパイロメトリーの検査結果のみわかれば、web上の「肺年齢.net『肺年齢オンライン計算機』」で肺年齢を計算することができる。性別と年齢、身長を入力し、スパイロメトリーで検査した「一秒量(FEV1.0)」と「努力肺活量(FVC)」を入れれば自身の肺年齢を確認することができる。

メディアでも取り上げられる「肺年齢」

「肺年齢」はメディアでも度々取り上げられている。NHKのクローズアップ現代「忍び寄る病 ~“COPD”の脅威~」では落語家の桂歌丸氏の病状を皮切りにCOPDの実態に迫っている。喫煙者だけでなく、受動喫煙で引き起こされたケースや中国のPM2.5による大気汚染で急増するCOPD患者など、呼吸器疾患の恐ろしさを解説し、その早期発見の要となる肺年齢検査を呼び掛けた。

 

認知度向上を目指して 肺年齢測定・COPDの啓発

主要な死亡要因でありながらCOPDの認知度はまだ低い。早期発見や早期治療、予防のためにも肺年齢やCOPDの啓発は重要だ。今日では各地で肺年齢の無料測定会が行われたり、また2002年には世界COPDデーが定められ、さらなる認知度向上が期待される。

肺年齢測定・COPDの啓発

メディアで取り上げられるようにはなったものの、未だCOPDの認知度は低い。「健康日本21(第二次)に関する健康意識・認知度調査」によると「COPDあるいは慢性閉塞性肺疾患という言葉を知っていますか」という問いに対し「意味を含めて知っている」と答えたのは、男性が19.0%、女性で22.1%にとどまった。健康日本21(第2次)では認知度80%を目標にしている。

また世界的にCOPDを啓発するGOLDは、全国各地で肺年齢の測定会を催しCOPDの啓発活動を行っている。無料でチェックできる測定会などを開催し、肺年齢の認知を図るとともにCOPDの実態と影響について広く知らしめている。以下は環境再生保全機構による「肺年齢測定会」を知らせるツイート。

世界的にも主要な死亡原因の一つであり日本でも死亡要因の上位に位置するCOPDの社会的な認知を目指した世界COPDデーは、毎年11月中旬の水曜日に定められている。世界各国ではもちろん日本でも、様々な啓発イベントが開催される。

肺年齢とCOPDの情報が得られるサイト・書籍

団体

日本呼吸器学会

1961年に「日本胸部疾患学会」として設立されたのち1997年に「日本呼吸器学会」と改名。呼吸器病学の進歩を目的として、研究や教育、診療と多岐にわたる活動を行っている。今日では社会貢献も見据えた積極的な呼吸器疾患への取り組みを推進している。

日本呼吸器学会 肺年齢普及推進事務局

日本呼吸器学会の委託のもと運営される、肺年齢に特化した普及推進事務局。肺年齢の基本的な概要や検査結果の見方、使い方などを提示している。

GOLD日本委員会

WHOとNHLBI(米国心臓、肺、血液研究所)の共同プロジェクトのもと、世界中の医療専門家が集い始まった世界的な活動。COPDの認知向上、診断・管理・予防方法の向上、研究の促進を目的として活動している。

書籍


医者が教える 肺年齢が若返る呼吸術肺年齢を若くしてセキぜんそく・誤嚥性肺炎から守る

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン〈2018〉

 

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