フェムテック・フェムケア市場、ブームは一巡も803億円へ拡大 カテゴリー別の動向
矢野経済研究所が、2024年のフェムテック・フェムケアの市場規模を、前年比108%で803億9100万円と推計した。25年は24年比110.5%の888億6000万円と見込む。
- 2020年:599億4800万円
- 2021年:644億5700万円
- 2022年:695億100万円
- 2023年:750億5400万円
- 2024年:803億9100万円
- 2025年:888億6000万円
ブームは一巡したものの、20年の599億4800万円から堅調に拡大しており、今後も緩やかな成長が期待されている。市場調査を担当した同社の清水由起氏に、カテゴリー別の現況と今後の展望について話を聞いた。※当調査におけるフェムケア&フェムテック市場のカテゴリーは「生理」「不妊、妊よう性・妊娠、産後ケア」「更年期ケア」「ウィメンズヘルスケア」「セクシュアルウェルネス」の5つ。各アイテムは小売金額ベースで、各アプリやサービスはユーザー消費金額ベースで算出。
カテゴリー別の動向
編集部
カテゴリー別の動向を教えてください。
清水氏
■生理
「生理」カテゴリーに該当するのは、吸水ショーツ、月経カップ、月経ディスク、ノンポリマー紙ナプキン、布ナプキン、経血用洗剤、生理管理アプリなど。
生理市場でボリュームが大きいのは吸水ショーツ。ブーム当初は吸水ショーツの成長が著しかったが、今は落ち着いている。一方でスポーツ向け、アウトドアやキャンプなど山ガール向け、防災用など、訴求の絞り込みが目立ってきた。シーン別の訴求はターゲットが明確なため、新規ユーザーを取り込みやすい。
■不妊、妊よう性・妊娠、産後ケア
該当するのは、サプリメント、妊娠検査薬・排卵検査薬、婦人体温計、シリンジ法キット、骨盤ベルト、妊婦帯、体型戻し商品、マタニティウェア、マタニティインナー、妊娠時のスキンケアアイテム、妊活者・妊産婦向けのSNSやアプリ、不妊治療情報、クリニック検索サイト、妊活コンシェルジュサービス、子宮内フローラチェックキット、卵巣年齢チェックキット、妊産婦向けアプリ、妊活者・妊産婦向けオンライン相談サービスなど。
少子化の影響を受けている市場だが、妊活は効果や結果が早く求められることから「効率よく妊活したい」というニーズが強く、消費が起きやすい。近年は男性側の不妊も知られるようになり、女性がパートナーと一緒に妊活しやすくなったことも、妊活へのハードルを下げ市場拡大の後押しに。今後は、プレコンセプションケアの認知拡大が市場拡大の鍵に。
■更年期ケア
該当するのは、サプリメント、漢方、尿漏れケアアイテム、スキンケア、膣ケアアイテム、体調管理アプリ、オンライン相談サービス、郵送型エクオール検査キットなど。
更年期症状自体の認知が広がっていることで、更年期ケア市場は21年以降で二桁成長を続けており、23年には不妊・妊よう性・妊娠・産後ケアの市場規模を抜いた。24年には約280億円規模に。尿もれなどのトラブルも知られるようになったことで、対策に向けたトレーニンググッズの人気も高まっている。更年期層は国内人口のボリュームゾーンであることや、アイテムの種類が増えていることも、市場拡大の背景に。
■ウィメンズヘルスケア
該当するのは、サプリメント・漢方、デリケートゾーンケアアイテム、婦人科がん術後ケアアイテム、ナイトブラ、冷え対策のインナー、郵送型婦人科がん検査キット、ホルモン検査キットなど。
中でも最も伸びているのは、デリケートゾーンケアアイテム。ドラッグストアやバラエティショップといった、身近な場所で取り扱いが広がっていることが大きい。漢方は本来女性だけに向けられたものではないが、女性の健康課題に焦点を当てて注力するところが増えていることから、生理や更年期などの領域で、漢方によるケアといった認知が広がっている。
■セクシュアルウェルネス
該当するのは、セルフプレジャーアイテム、膣トレーニングアイテム、郵送型性病検査キットなど。
市場規模としては最も小さいが、もともと小さい市場だったこともあり、伸び率が高い。更年期ケア市場と同様に、21年以降毎年二桁伸長を続けている。セクシュアルウェルネスは以前よりオープンに話せるようになったカテゴリーだが、生活者の間でイメージが簡単に変わるわけではないので、市場を牽引するユーザーは今も一部の層に限られる。今後も緩やかに伸びていく。
フェムテック・フェムケア市場を展望
編集部
フェムケア・フェムテック市場全体の成長について、今後をどのように予測しますか?
清水氏
ブームは落ち着いたが、市場はまだ伸びる余地がある。フェムテックの専門店やポップアップイベントの縮小は市場でネガティブに受け取られがちだが、ドラッグストアやバラエティショップといった、生活者にとって身近な場所での取り扱いが広がっていることで、フェムテック・フェムケアを知らなかった層やアイテム未利用者を取り込めるようになることも、市場成長に寄与する。
編集部
ドラッグストアやバラエティショップでは、販売スペースといった物理的な制限から、取り扱えるアイテムのカテゴリーはどうしても限定的になりがちです。生理ケアやデリケートゾーンケアカテゴリーでは取り扱いが進む一方で、それ以外のカテゴリーについては、恩恵を受けるのは難しいのでしょうか?
清水氏
ドラッグストアなどで入手できるアイテムが限定的であっても、生活者に「女性特有の健康課題がある」と気づかせることはできる。そのきっかけ作りができるという意味では、現状の流れは市場全体にポジティブに働く。実店舗での取り扱いがないカテゴリーについては、オンラインがアイテムとの重要な接点になる。
編集部
数字で見ると市場は拡大していますが、企業からは苦戦している声もよく聞かれます。事業を縮小したり撤退する企業も出てきています。市場全体の成長と、各社の実態との間に生じているこのズレは、どのような要因によるものなのでしょうか。例えば、プレイヤーの増加によって、1社あたりの成長余地が限定されているといった構造があるのでしょうか。
清水氏
市場の拡大は、プレイヤーの増加というよりも、アイテムや女性の健康課題に対する認知の広がりでユーザーが増えていることが要因として大きい。一方で事業としての難しさは、やはり企業からよく聞かれる。ただ、必ずしも採算性だけで事業継続を判断しているわけではなく、女性の健康に取り組む意義や、自社の姿勢を示すブランディングやPRの観点から、事業を継続するケースも見られる。
他方、BtoB事業に注力する動きが活発化していることも、市場の拡大に影響している。企業から自治体経由で市民へアイテムやサービスを届けるといった動きよりも(BtoGtoC)、福利厚生の充実化に向けた事業間取引(BtoBtoE)が目立ち、今後も各社にとって商機になるだろう。導入企業側が採用するアイテムやサービスの幅も広がっている。
編集部
今後、企業にはどのようなマーケティングが求められますか?
清水氏
当社では20〜60代の女性1万人を対象に、21年から毎年「フェムテック」の認知度調査を実施しているが、25年は全体で約3割と、前回から大きく伸長しなかった。認知は停滞している。ブームも落ち着いたことを踏まえると、認知がこれ以上大きく広がることは期待できないだろう。今後は、「フェムテック」「フェムケア」といったコミュニケーションではなく、「更年期症状」「生理不順」「過多月経」など、健康課題をダイレクトに訴求するマーケティングの方が生活者に届きやすくなると見ている。
編集部
ありがとうございました。
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