テーマは「夫婦のセックスレス」 時代を捉えた人気ドラマ、妻・夫それぞれの共感ポイント
フェムテックや女性の健康への関心が社会的に高まったことで、長い間タブー視されてきた「生理」「妊活・不妊」「更年期」「セックス」などをテーマにしたドラマや報道が増えている。その一つが、今年4月から6月まで放送され話題を集めたドラマ「あなたがしてくれなくても」。夫婦のセックスレスをテーマにしたもので、原作の累計発行部数は940万部を突破(2023年6月時点,ハルノ晴,双葉社)。テレビの見逃し配信サービスTverのお気に入り登録数は120万人を超えた。大きな反響を呼んだ理由は?ドラマ視聴者のレビューから、妻と夫、それぞれの声を拾った。
テーマは「セックスレス」
夫婦のセックスレスをテーマにした恋愛ドラマ「あなたがしてくれなくても(フジテレビ木曜夜10時)」。登場するのは、セックスレスに悩む30代無子の2組の夫婦(※)。ひと組は、”妻だけED”で夫婦間のセックスに必要性を感じていない夫と、求められる事で夫からの愛を感じたい妊活希望の妻。もう一組は、仕事と家事を両立しながら妻を支える夫と、妊娠・出産・育児でキャリアを諦めたくない、仕事に没頭する妻。両夫婦とも互いを愛していないわけではないが、子を持つことやセックスへの価値観の違いなどから徐々にすれ違い、夫婦関係が複雑にもつれあう。(※)キャストは奈緒、永山瑛太、田中みな実、岩田剛典など
2年前にもセックスレスをテーマにしたドラマ(「それでも愛を誓いますか?」ABCテレビ/テレビ朝日,2021年)が話題になったが、こちらは、夫に拒まれる妻の心情に主に焦点を当てたものだった。一方で「あなたがしてくれなくても」は、妻を拒む夫の心情と、妻に拒まれる夫の心情にも着目したストーリー展開。妻と夫、それぞれの立場からセックスレスを解き明かそうとする設定は、男女の相互理解が求められる今の時代だからこそ。リアリティー溢れるストーリーに、多くの共感の声が寄せられた。
視聴者の共感ポイントは?妻の声、夫の声
ドラマのレビューサイトやSNSから視聴者の感想をリスニングしたところ、圧倒的に多かったのは妻側の声。夫に拒否される心情に共感する声が多かったが、中には、夫を拒否してしまうことに悩む声も。一方、夫側は、妻を拒否する登場人物の言動に理解を示す声が多かった(以下の視聴者の声は、SNSを始めネット上に投稿された文章を文意が変わらない程度に編集しています)。
妻の声
- 拒否される悲しさや、拒否される度に夫に愛されているか疑問を持つようになる心情に共感した
- 夫を誘うたびに「また明日にしよう」と言われつらくなる気持ちに共感した
- 私たち夫婦もすごく仲は良いのに、子どもがおらずレス。色々共感した
- 体の関係に重点を置いているのに、満たされたいのは実は「心」の方。その気持ち、よくわかる
- 仕事を理由に夫からの誘いを断ってしまう場面に共感。「疲れているからしたくない」という普段の自分の気持ちと重なった
- 心身ともに疲弊している時にする気になれないのは、その通り
- 拒否する側の気持ちがわかる一方、拒否される側の心情も痛いほど胸に刺さった
- 妊娠や出産でキャリアを諦めたくない気持ちに共感する
- 「したい」「したくない」の溝を夫婦間でどう埋めればいいのか、本当に難しい…
- 「子どもがいてセックスレス」より、「子どもがいなくてセックスレス」の方がつらいと思う。私たち夫婦は、セックスレスだが子どもがいる
夫の声
- 妻をそういう対象として見れない
- 妻に要求されるとプレッシャーに感じてしまう気持ち、とても共感する
- 結婚後、妻に求められるも断り続けている。妻に申し訳ないと思うものの、向き合えていない。自分の家庭が描かれているみたいに感じた
- 仕事が忙しすぎるときはそういう気分になれない、という気持ちがよくわかる
- “妻だけED”、自分もそうかもしれないと思った
- EDについて妻に打ち明けるのは勇気が必要。すごいと思った
- 同じような悩みを抱えている夫婦は多いと思う
- 妻と仲が悪いわけではないが、妻に断られ続けるつらさに共感した
- 妻がこのドラマを録画をしてこっそり見ている。自分は断られ続けている身なので、妻がどういう気持ちで見ているのか気になる
- 「なぜしたいのか、なぜしたくないのか」を考えたり話し合う事で大切な人に少しでも寄り添う事が大切だと思った
セックスレス、夫婦の気持ちはなぜすれ違う?
口コミをネット上に上げたのは圧倒的に妻が多かったが(編集部調べ)、ドラマが描く通り、セックスレスは女性だけの悩みではない。20代後半の既婚男女1,000人(男女各500人)を対象にした調査では、セックスレスに悩んでいるのは女性の方が多いものの、大差なく男性も約5割が悩んでいることを明らかにしている。
ただしセックスの目的は男女で異なるため、セックスレスの受け止め方や悩みの深度を男女同一には捉えるべきではないだろう。以下は、セックスの目的について調べた調査の結果概要(ジャパン・セックスサーベイ2020)。根本的に男女間でこれだけ目的が違うのだから、セックスレスの悩みが複雑で夫婦の気持ちがすれ違うのは、当然と言えば当然だ。
- 性的な快楽のため
女性(24.4%)、男性(69.8%) - 触れ合いやコミュニケーションのため
女性(45.1 %)、男性(37.1%) - 子どもが欲しいから
女性(26.0%)、男性(19.7%) - 相手に求められるから
女性(27.8%)、男性(7.0%) - 義務だから
女性(5.6%)、男性(0.5%) - ストレスを解消するため
女性(3.8%)、男性(9.4%)
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