女性市場で伸びるメンタルヘルステック、3領域

女性は男性よりストレスを受けやすく、また、ストレスによる身体的影響が出やすいのも女性と言われている。女性ホルモンが変動する時期にはメンタル不調が起きやすく、また、うつ病患者数は全年代で男性より女性に多いことからも、メンタルヘルスはより女性にとって必要性が高いことがわかる。

だがメンタル不調を自覚していない女性は多く、例え自覚していたとしても、ケアへの自発的な姿勢が本人にない限り、メンタル不調は放置されがち。また、心療内科受診や服薬への抵抗、カウンセラーの元へ通う面倒やコスト面から、メンタルケア系サービスの需要は十分には掘り起こせてこなかった。だが今、メンタルケアが多くの女性にとって身近な存在に。その立役者となっているのが、メンタルヘルステック。場所・時間を選ばず、さらに低コスト。良いことづくめだ。

国内のメンタルヘルステックの状況と、女性市場で特に伸張が期待される3分野を見ていこう。

国内のメンタルヘルステック、9分野

AIによるメンタルヘルスアプリ「エモル」が、メンタルヘルステック業界を以下の9分野に分類しカオスマップを制作、今年1月に公開した。

  • AI・ロボット
  • カウンセリング
  • マインドフルネス
  • ハーブ・CBD
  • 分析・可視化
  • ジャーナリング
  • コミュニティ・SNS
  • 企業向け(分析・可視化)
  • 企業向け(産業保健)

同社によると2020年に比べ今回は、一般向けサービスの増加・多様化が進み、特に「AI」「カウンセリング」「マインドフルネス」「CBD」の分野でサービスが多く立ち上がったとのこと。

女性市場の注目分野

カオスマップに記載の9分野のうち、2021年に女性の需要増に特に期待できるのは、CBD、マインドフルネス、カウンセリング。いずれも手軽にメンタルケアに取り組めるのが共通した特徴だが、それ以外の期待できる理由とは?

CBD

CBDは、メンタルヘルス領域に限らず今年の女性市場で期待大。CBDにはリラックス、不眠、鎮痛、不安・ストレスの解消といった健康効果があり、エステサロンやリラク系サロンなどではすでにCBDを活用したマッサージメニューを提供している。アマゾンなどの大手通販でも取り扱いが増えている。鎮痛剤の代替品としてCBD入りタンポンを開発・販売しているフェムテック企業もある(Daye/英)。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Daye(@meetdaye)がシェアした投稿

健康産業新聞が健食受託メーカーに聞いた「2021年の人気・トレンド素材ランキング」では、CBDは、乳酸菌、NMNに次いで第3位だった。市場は一気に拡大する見込みだ。

だが一方で、CBDは大麻の成分であることから「違法」「悪いもの」「怖い」といったネガティブなイメージが先行する人たちもいるため、糖質制限ダイエットやココナッツオイルブームで見れらたような全世代共通のメガトレンドへ成長するには少々の時間を要するだろうが、CBDの正しい理解が進めば、あらゆる年齢の女性に愛用されるようになるだろう。

なお、CBDには“ハイになる”精神活性作用はなく、それがあるのは大麻成分のうちTHC。(CBD、THC、大麻、ヘンプ、マリファナなど、CBD周辺のキーワードと関係性を解説しようとすると話が脱線して長くなるので、詳細をサクッと知りたい方はこちらへ)

話を戻そう。メンタルヘルステックCBD分野の商品・サービスがユーザーに評価されているポイントは、やはりCBDに期待されている健康効果で、摂取・利用によるリラックス・ストレス低減・快眠。

CBD入りドリンク(炭酸飲料)/サプリのD2Cブランドmellowは、商品販売のみならず、ゆったりできる曲を厳選しYouTubeとSpotifyで配信するなど、商品をより楽しめる体験も提供している。

昨年11月には、新宿丸井と国内のD2Cブランド3社と共同で、自宅での休息タイムを提案するポップアップイベント「ナイト・ルーティン」を開催した。

 

マインドフルネス

CBD系メンタルヘルステックは、市場で一般化するまでの間は抵抗感の有無によって女性たちの受容性に差が見られそうだが、マインドフルネス系メンタルヘルステックにはネガティブな不安要素はなく、「瞑想するだけ」という手軽さから、加速度的に広く受け入れられるだろう。

2016年にマインドフルネスが世界的トレンドとなり、その効果を体感している人がすでに多くいることも、ユーザー獲得に有利に働くはずだ。

マインドフルネスによる更年期症状やPMSの軽減についてはこれまでにすでに多くの研究報告があり、実際にマインドフルネスを日々の生活に取り入れている女性もいる。

マインドフルネス系メタルヘルステックの主流は、アプリ。ユーザーに評価されているポイントは、悩み・目的別にプログラムを設定したり、自分に適したプログラムが提案されるパーソナライズ性。そして、実践後のリラックス効果を実際に得られる点。

マインドフルネスアプリの「ラッセルミー」は、「女性のための心と身体のエクササイズ」というカテゴリーを設け、「つらいPMSにさようなら」「肩こりをほぐす」「身体と心をほぐすお風呂瞑想」など、女性特有のニーズや健康悩みを訴求したプログラムを用意している。いずれも6分〜15分程度の内容で、アプリによる指示に従い瞑想や簡単なエクササイズに取り組む。

その他、「深い眠り」「眠いけど頑張らないといけない」「仕事前に集中力を高める」など、各アプリが多様なプログラムを用意している。生理前の眠気・イライラ対策、更年期・老年期の不眠対策にも利用できるコンテンツが満載だ。

カウンセリング

自宅にいながら専門家のカウンセリングを手軽に受けられる点が高く評価され、カウンセリング分野のメンタルヘルステックも需要が伸びるだろう。

アプリを使ってカウンセリングを受けるものが主流で、ユーザーの評価ポイントは、「話を聞いてもらいたい時にすぐにアクセスできる」「自分に合ったカウンセラーをマッチングしてもらえる」「(チャット式カウンセリングの場合は)チャットの内容を後から振り返って見ることができる」など。時間的制約がない点やテックならではの利便性がユーザーを惹きつけているようだ。

コトリーは、web上で22個の質問に答える「マッチング診断」を受けると、自分に合ったカウンセラーと引き合わせてくれる。その後、オンラインでビデオまたは電話で話す。

ラインのようなチャット形式のカウンセリングもあり、顔を見せたくない人や、自宅内で家族などに話を聞かれたくない人にとってありがたい形態だ。

女性は一般的に男性よりも「人に話を聞いてもらいたい・共感してもらいたい」と考える人が多いため、カウンセリングニーズそのものはもともとある。「わざわざ専門家のいる場所まで足を運んでガッツリとカウンセリングを受けるのはちょっと…」と二の足を踏んでいた層も、遠隔カウンセリングであればサクッと手軽に利用するようになるだろう。

生理ブームが押上げ、メンタルケアニーズ

メンタルヘルステックの手軽さが受け、今後はメンタルケアが多くの人にとって身近な存在になると既述したが、今起きているフェムテック・生理ブームもまた、メンタルケア需要の掘り起こしに大きく貢献していくだろう。

生理をオープンに語れるようになった事で自身の体と向き合うようになった女性が増え、PMSやPMDDといったメンタル不調を「ちゃんと自分でコントロールしたい」と言う声が聞かれるようになってきた。

ストレッサーが多くストレスによる健康被害を被りやすい女性にとって、メンタルヘルステックは日々の必須アイテムとなりそうだ。

 

【編集部おすすめ】
うつ病の男女比・年代別患者数・女性に多い理由
女性の健康問題、一覧(思春期~老年期)
メンタルヘルスとは?国が推奨する4つのケアとビジネス事例
コロナ対応の中心に据えるべきは「メンタルヘルス」 WHO呼びかけ

PAGE TOP
×