女性ワーカーが会社に求めるのは「女性特有の健康課題」よりも「健康全般」の支援
生理・妊活・更年期領域のフェムテックの開発・上市が各社から相次ぐ中、健康経営ツールとして企業向けにサービスを展開する事例が増えているが、実際は苦戦の声が多く聞かれる。「女性だけを優遇できない」といった導入企業側の判断や、導入企業や女性ワーカーのヘルスリテラシーなどがその要因として指摘されているが、ユーザーとなる女性ワーカー側にニーズがない、という”そもそも論”の事情も。近年の「女性特有の健康課題」に対する社会的関心の高さから、つい見落としがちだが、女性ワーカーが求めているのはもっと幅が広く、心身全般の包括的な健康管理や維持増進だ。三菱 UFJリサーチ&コンサルティングが実施した調査結果からは、女性ワーカーの健康ニーズの所在や、いわゆるフェムテックへの関心が低い様子がうかがえる。自社のフェムテックを売り込むなら、導入企業や女性ワーカーのニーズの顕在化に躍起になるよりも、包括的に健康管理できるモノ・コトと組み合わせるのがベターかもしれない(「正社員男女の健康意識に関する実態調査(2022.4)」20~69歳の正社員男女2,000人)。
健康不安に対して会社に求める支援策
20〜69歳の正社員の男女2,000人に、健康不安に対して会社に求める支援策を聞いたところ、性別でニーズの違いが顕著に表れ、男性ワーカーの最多は「長時間労働の是正に向けた取組(27.9%)」、女性ワーカーは「福利厚生制度の充実(34.8%)」だった。
女性ワーカーのランキングについて、もう少しつぶさに見てみよう。1位の「福利厚生制度の充実」について女性ワーカーが具体的に求めているのは、「健康増進プログラムの提供(42.2%)」「健康状態の計測機器等の提供(34.8%)」「スマホアプリなどを活用した生活指導や面談の実施(23.1%)」。ランキング9位の「健康に関する相談窓口の設置」については、「メンタルヘルス(37.1%)」の要望が最も高く、次いで「身体疾患(28.9%)」。「女性特有の不調(21.6%)」と「不妊治療(12.4%)」への要望も一定程度あるが、心身全般の健康支援に対するニーズの方がより強いことがわかる。
健康支援アプリの利用経験、最多は「歩数・睡眠」
健康経営ツールとして用いられている健康支援アプリについて利用経験をたずねたところ、女性ワーカーの利用経験が最も多いのは「歩数や睡眠時間の計測」関連のアプリ。とは言え3割にも届かず、大多数は「アプリの利用経験がない」で6割以上に上った。「月経周期の把握」関連アプリは約1割にとどまった。
健康支援アプリの利用目的トップ3は、「健康管理に関する情報取得(30.5%)」「ダイエットや食事制限の継続(25.2%)」「健康上の不安があったため(17.8%)」。健康管理や不安解消のための情報収集、健康を維持するための測定・管理などの目的で活用していると見られる。
フェムテックサービス、利用経験と利用意向
女性ワーカーに個人的に利用したことがあるフェムテックサービスを聞いたところ、最多は「月経周期管理アプリ」だが、とは言えわずか1.5割ほど。2位以下の他サービスも、ほとんど利用されていない。
個人的な利用経験はなくても、会社側が料金などを負担すれば利用意向は高まるのだろうか?その結果が以下。いずれも1割を切っており、会社負担があってもなくてもフェムテックの利用意向は全体的に低い。なお、利用意向が最も高いのは「女性ホルモンに関する検査(9.3%)」。
年代別の利用意向をまとめのが以下表。設問項目が月経や妊娠関連に集中していることが調査結果に影響していると考えられるが、全体的に20〜40代の利用意向が高い。50〜60代の中高年期特有の健康課題を訴求したフェムテックサービスが設問に入れば、これとは異なる利用意向が見られそうだ。
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