メンタルヘルスとは?国が推奨する4つのケアとビジネス事例(1/3)
仕事における“心の健康づくり”の重要性を、ワーカーが“雇用される側の権利”として胸を張って主張できる風土ができてきた背景としては、2015年のストレスチェック制度の義務化が大きい。
仕事を理由に心身の不調を訴えることは、有休取得の申請と同様に、同僚の目や上司の顔色を気にして憚られたものだが、今は、従業員のメンタルヘルスは経営の重要項目となり、ワーカー自身も、心の健康づくりを意識した働き方や職場を求めるようになった。
とは言っても、社内でのメンタルヘルス対策がどのような仕組みで推進されているのかを理解できている人は多くない。そもそも、メンタルヘルスって何?社内ではどのように推進していけばいいの?企業のメンタルヘルス対策について網羅的に解説。
目次
メンタルヘルスの基礎知識
メンタルヘルスの意味
メンタルヘルスとは心の健康や精神衛生のこと。精神的健康、心の健康、精神保健という表現もされる。広い意味では、精神疾患の有無にかかわらず心の問題を取り扱うときに使われる言葉だが、狭義には精神疾患に対する措置を意味することもある。本記事では前者の広義におけるメンタルヘルスについて取り扱う。
職場のメンタルヘルス対策の重要性が高まった理由
昨今、職場でのメンタルヘルスが重要視されるようになったが、背景にあるのは、過重労働や人間関係を苦にした自殺や、仕事によるストレスで病気・不調を訴える人が増加していたこと。
「令和元年版 過労死等防止対策白書(厚労省)」によると、2018年の自殺者総数20,840人のうち、「勤務問題を原因・動機の一つとする自殺者数」は2,018人で9.7%を占める。近年、自殺者数は減少傾向にあるものの、「勤務問題を原因・動機の一つとする自殺者数」の割合は増加傾向にあり、2007年の6.7%と比べると、3ポイント上昇している。
自殺に至らないまでも、仕事で強いストレスを感じている人は実に多い。「強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者割合の推移(厚労省)」を見ると、常に半数を超える人が仕事に強いストレスを感じていることがわかる。平成30年は58%。
強いストレスとは何か?その内容は以下。
- 1位:仕事の量・質(59.4%)
- 2位:仕事の失敗、責任の発生等(34.0%)
- 3位:対人関係(セクハラ・パワハラを含む)(31.3%)
- 4位:役割・地位の変化等(昇進・昇格・配置転換等)(22.9%)
- 5位:顧客・取引先等からのクレーム(13.1%)
これらのデータが示すように、ワーカーのストレス問題は実に大きく深刻だ。精神障害などによる労災認定件数も増加傾向にあり、国・企業が一体となってメンタルヘルス対策に取り組む重要性が高まっている。
各企業がメンタルヘルス対策を実施
ストレスチェック制度の義務化に始まり、人々の仕事や働き方への価値観が急速に多様化してきていることを踏まえ、この数年でメンタルヘルス対策に本腰を入れるようになった企業は目立って増えてきた。リソースに乏しい中小企業は、従業員のメンタルヘルス対策にヒト・時間・お金を投入する余裕がなく、未だメンタルヘルス対策に十分に取り組めていないところも多いが、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことは、雇用者にとってもメリットが大きい。
自殺予防だけでなく、離職率・退職率の低下、過度なストレスにさらされた労働者による事故・トラブルの防止、労災請求や民事訴訟などのリスクマネジメントになる。また、従業員のメンタルヘルスが良好であれば、仕事のモチベーションや効率化につながり、生産性の向上を期待できる。