市販薬の過剰摂取「オーバードーズ」、8割が女性 初の疫学調査
2021年12月~2022年5月に全国7つの救急医療機関に救急搬送された、市販薬が原因の急性中毒患者は122人。平均年齢は25.8歳で、女性97人(79.5%)、男性25人(20.5%)。とりわけ若年女性に市販薬の過剰摂取「オーバードーズ(OD)」が多いことが、厚労省研究班の調査で分かった。市販薬のオーバードーズによる救急搬送に関する疫学調査は初(厚労省「薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究」2023.6.20,) 。
救急搬送後、122人のうち113 人が入院し、69 人が集中治療室での治療を要した。オーバードーズに使用された市販薬は189 品目で、カテゴリー分類では「解熱鎮痛薬」が最多。
- 解熱鎮痛薬 …47 件(24.9%)
- 鎮咳去痰薬 …35 件(18.5%)
- かぜ薬 …34 件(18.0%)
- 催眠鎮静薬 …28 件(14.8%)
- 抗ヒスタミン薬主薬製剤 …14 件(7.4%)
- その他 …11 件(5.8%)
- 眠気防止薬 …9 件(4.8%)
- 鎮うん薬(乗物酔い防止薬、つわり用薬を含む)…9 件(4.8%)
- 漢方製剤 …2件(1.1%)
高揚感や覚醒効果への期待よりも、気分の落ち込みや不安感の緩和や自殺を目的としたオーバードーズが目立ち、使用目的の最多は「自傷・自殺」で97件(74%)。この中には、特に死にたいというわけではないが「いなくなってしまいたい」「自らを罰したい・傷付けたい」などの声も含まれている。次いで多かったのは、「その他」で31件(23.7%)。「気分を上げたい、元気を出したい」など活力剤としての目的や、「嫌なことを忘れたかった」「楽になりたかった」などの現実逃避、「精神科の薬を服用したかったが、精神科を受診できなかったから」「お酒が買えないので市販薬を購入した」など、他の物の代用として市販薬を選んだという声もあった。「薬をたくさん飲みたくなった」など、依存性につながる声も。オーバードーズの経験者がSNSなどで発信するケースも散見され、このような情報拡散が若者の心理的ハードルを下げる一因とされている。
入手経路は、すぐに手に入れられる手軽さからか「実店舗」が85件(65.9%)と最も多く、次いで「置き薬」が20件(15.5%)、「インターネット購入」が12件(9.3%)、「家族所有」が10件(7.8%)。研究班は、実店舗での対策が市販薬のオーバードーズの抑制につながるかもしれない、と指摘している。
市販薬による依存症は近年急増しており、特に若者のオーバードーズが問題になっている。精神科医療施設を受診する薬物関連の精神疾患患者が使用している薬物の種類を調べた調査では、薬物全体(覚醒剤,睡眠薬・抗不安薬,有機溶剤,市販薬,大麻,その他)に占める市販薬の使用率の割合が最も高かったのは19歳以下で56.8%だった。次いで高かったのは20代で26.4%。他は、30代13.7%、40代14.2%、50代5.9%、60代15.2%、70歳以上6.1%(厚労省「わが国における市販薬濫用の実態と課題」2023.3.8)。
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