世界初、麻痺した手が思い通りに 患者の意図を判別するAIリハビリロボット
順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学 藤原俊之教授とメルティンMMI社(東京・中央区)の共同研究グループが、「患者の意図を生体電気信号からAIが判別し手を動かすAIロボット」を用いた脳卒中リハビリテーション治療を発表した。AIロボットによる脳卒中後の上肢機能障害の改善効果を示したのは、世界初(研究成果は、米国神経リハビリテーション医学会の学会誌Neurorehabilitation and Neural Repair誌5月号に掲載。本稿画像出典は同大学)。
脳卒中による後遺症で手足の麻痺が残る患者のうち、手の麻痺が実用レベルまで回復するのは15~20%程度で、日常生活の動作を妨げたり、仕事復帰を妨げる原因にもなっている。ロボットはリハビリ分野でも応用されるようになってきたが、多くは患者の意図に関係なく決まった動作を繰り返し練習するものであったり、患者の動きをアシストするものであったため、重度の手の麻痺は回復が困難だった。そこで、自分で思うように手を動かせない重度の麻痺がある患者でも自由に手を動かせるAIロボットを開発。脳卒中後の手の麻痺のリハビリに用い、その効果を検証した。
研究では、患者の麻痺した前腕に3対の電極を置き、脳から手に送られる電気信号のパターンをAIが解析。患者の「指を伸ばそう」「曲げよう」「リラックスさせよう」といった意図に合わせて、ロボットが手を動かす。参加したのは、脳卒中発症後2ヶ月以上経過した後に手の麻痺が残っている患者20名。無作為に「AIロボット群」と「他動ロボット群」に振り分け、「AIロボット郡」は、AIロボットを用いて、自分の意図に合わせて指の曲げ伸ばしを行い、物を掴んだり、移動させるトレーニングを週2回・計10回行った。「他動ロボット群」では、他動的に指の曲げ伸ばしを行うトレーニングを同様の回数行った。その結果、「AIロボット群」では上肢運動機能の改善が見られ、その効果はリハビリ4週後も維持されていた。
本研究により、AIを用いたリハビリロボットが脳卒中後の麻痺手の機能を改善させることが示された。研究グループは、新たな治療法として今後の発展が期待されるとしている。
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