ヘルステック市場規模・企業事例・米国の動向(1/3)

ヘルステック市場の動きが活発だ。AIやビッグデータなど進歩が目覚ましい新しいテクノロジーは、ヘルスケア領域のさまざまな課題を解決する可能性を秘めており、国、産業、アカデミアがヘルステックに熱い視線を注いでいる。

ベンチャー企業が参入する事例や、既存のヘルスケアプレーヤーがベンチャー企業と連携してサービスを生み出す事例も多い。メドピア(東京・中央)がアジア開催の事務局を担うヘルステックの国際カンファレンス「Health2.0」のように、カンファレンス開催による情報交換や出会いの場もつくられている。

ヘルステックとは?

ヘルステック(HealthTech)は、「Health」と「Technology」を掛け合わせた言葉。同じように「~テック(xテック)」として使われる言葉に、フィンテック(Fintech=ファイナンス<金融>とTechnology)やエデュテック(Edutech=エデュケーション<教育>とTechnology)などがある。

これらには、従来の領域の課題を新たなテクノロジーによって解決しようとする期待が込められている。例えばヘルステックにおいては、従来の治療効果を上げたり、医療の生産性を向上することなどが期待されている。

ヘルステック・健康ソリューションの市場規模、3,038億円

2022年の市場、2017年比で50%増(富士経済)

富士経済によると、ヘルステック・健康ソリューション関連市場は順調に拡大。2018年の市場は2,248億円で、2022年には3,083億円まで拡大すると予測されている。拡大の背景にはストレスチェック義務化などの政策により、企業が健康経営や働き方改革に関心を高めていることが一つの要因として挙げられる。

市場拡大をけん引、「健康経営サービス市場」

ヘルステック・健康ソリューション関連市場の拡大をけん引しているのが、健康経営サービス。企業の従業員に対する健康維持・増進への関心が高まり、関連サービスを積極的に導入する動きが活発化しているためだ。従業員健康管理システムや禁煙サポートプログラムなど、健康経営関連サービスは多岐にわたる。

人材確保や離職率低下を目的に福利厚生に注力する企業が増えていることから、福利厚生代行サービス市場も膨らんでいる。さらにストレスチェック制度(※)の導入により、メンタルヘルス関連のサービス(ストレスチェックシステム、EAP<従業員支援>サービスなど)も拡大。(※)ストレスチェック制度は、2015年12月から始まったもので、従業員50人以上の事業所に対し、労働者のストレス状況の確認やその支援を義務付けたもの。

消費者のヘルスケア意識向上で拡大、「健康情報測定機器・治療器市場」

健康情報測定機器・治療器市場の関連サービス・製品としては、活動量計や血圧計、骨密度測定器、ウエア型端末(スマート衣料)、体臭測定器、スマート歯ブラシなどが挙げられる。これらサービス・製品は、健康意識の高まりや製品認知度の向上を受けて、市場が拡大している。参入企業増加や低価格製品の投入も市場拡大を支えている。今後さらなる製品ラインアップの拡充と認知度向上により市場は拡大傾向で推移すると予測される。具体的なサービスには以下のものがある。

  • G・U・M PLAY(ガムプレイ)(サンスター)
    歯ブラシにアタッチメントを装着しアプリと連携することで歯磨き動作を数値化・記録し、正しい磨き方を身に付けることができる。ゲーム感覚で歯磨きができるアプリや、ニュースを読み上げるアプリなども用意されている
  • スマートフィット for work(クラボウ)
    衣料に取り付けられた生体センサが心拍や温度などの情報を取得。スマートフォン経由で情報を解析することで熱中症などの作業リスクを低減する。生体センサを取り外しての洗濯が可能

    ヘルステックウェア

    出典:クラボウ

今後の伸びを期待、「検査・健診サービス市場」

検査・健診サービス市場としては、自宅で行える郵送生化学検査や店舗での検査・健診サービスなどがある。企業や健康保険組合が活用したり、住民の健康増進策として自治体が活用することも多い。中でも注目はDTC遺伝子検査サービスで、2022年には122%(2017年比)の50億円に拡大すると予測されている。具体的には以下のようなサービスがある。

  • デメカル(リージャー)
    指先から採血し郵送することで、生活習慣病関連など複数の検査ができる。検査項目は血糖、HDLコレステロール、ガンマGT、腫瘍マーカーなど。健康保険組合の利用やスポーツクラブなどでの会員向け健康増進サービスとしての利用、個人向けのセルフメディケーションとしての活用を想定している
  • GeneLife(ジェネシスヘルスケア)
    遺伝子検査によって病気のリスクが分かる。自宅で唾液を採取し郵送すると結果が送られてくる。ラインアップは豊富で、肥満や肌老化など気になる項目だけを検査するものから、360項目を一気に検査できるものまである

アプリの増加で拡大、「健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービス市場」

健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービス市場には、健康マイレージサービスや食事管理サービス、患者向け健康管理プラットフォームなどのサービスが含まれる。特に睡眠改善サービスは近年、拡大傾向。2022年には20倍(17年比)の20億円の市場に拡大すると予測されている。具体的には以下のようなサービスがある。

  • 健康マイレージ(ドコモ・ヘルスケア)
    歩数計や活動量計、スマホアプリなどを活用しウオーキングを促すサービス。団体申し込みが必要で利用者は自治体や企業、健康保険組合など。すべての利用者はランキングやマップ形式で歩いた距離を確認できるほか、抽選でポイントを獲得できるなどのサービスを付加できる
  • Sleep Style(帝人)
    ウェブマガジンやアプリ、セミナー等の提供を通して睡眠をトータルでサポート。アプリ「2breath(ツーブリーズ)」はウェアラブルセンサーが呼吸を読み取りスマホに送信。個人に合った「休息に誘うガイド音」を発することで、ゆったりとした睡眠へ促す

 

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