不育症とは?悩む女性たちの実態と女性を支える医療・自治体・情報

不育症は、2017年にテレビ放送されたドラマ「コウノドリ」で取り上げられたことから、一気に認知度が高まった。「コウノドリ」はTBSが2018年に放映した医療ドラマ。グーグル上では「コウノドリ」と「不育症」が関連付けて検索されることも多く、このドラマが多くの視聴者に影響を与えたことがうかがえるが、「実は不育症ではないか」という不安を抱え込んでいた層が顕在化した現象と受け取ることもできる。女性が精神的な孤独に陥るケースも見られ、医療関係者、家族のサポートの重要性も指摘されている。

不育症とは?

不育症の定義(厚生労働省)

不育症とは、22週以前の流産を繰り返す反復流産と習慣流産の2つに加え、死産・早期新生児死亡を繰り返す場合を含めて定義されている。不育症は、妊娠はするが流産や死産となる場合を指すことから、妊娠をしない不妊症とは異なる。不妊症は1年以上、避妊しない夫婦生活を送っても妊娠しない場合を指す。

不育症のリスク因子

不育症のリスク因子には主に以下のものがある。

  1. 夫婦染色体異常
  2. 子宮形態異常
  3. 内分泌異常
  4. 凝固異常
    (参考:厚生労働省「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」)

上記のリスク因子とは別に、母体の高年齢は流産のリスクを高める。

不育症を検査する方法

流産、死産、早期新生児死亡を2回以上繰り返している場合は検査が必要とされている。主に以下のものがある。

  1. 子宮形態検査
    子宮の中に造影剤を入れて子宮の内膣の形を見る子宮卵管造影検査などがある
  2. 内分泌検査
    血液検査で甲状腺のホルモン検査を行う。あるいは血液検査で糖尿病検査を行う
  3. 夫婦染色体検査
    夫婦の染色体検査を行う。遺伝情報となるため十分な遺伝カウンセリングが必要とされる
  4. 抗リン脂質抗体
    抗リン脂質の抗体を調べる。陽性だった場合も12週間以上の間隔を空けて陽性が維持されているか確認する
    (参考:厚生労働省「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」)

不育症の治療

不育症の治療はリスク因子によって異なる。治療法については以下のマニュアルの中に記載がある。

  • 反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル(厚生労働省)

 

不育症に悩む女性たちの実態

不育症と不妊症の現状について調査報告書がある(厚生労働省の研究事業)

不妊・不育に悩んだ女性は24%

不妊・不育症に悩んだ経験がある女性は24%(対象30〜45歳女性)。悩みの内容につて、不育症か不妊症を聞いたところ、不妊に悩む女性の方が多数だった。悩みごとの比率は以下の通り。

  • 妊娠しないことについて=不妊(77.8%)
  • 妊娠はしても出産まで至らないことについて=不育(9.9%)
  • 妊娠しにくく、また妊娠しても出産まで至らないことについて=不妊・不育の両方(10.8%)
    (出典:キャンサースキャン「不妊症及び不育症における相談支援体制の現状及び充実に向けた調査研究」)

不妊・不育に悩み始めた年齢と悩んだ期間

  • 現在の年齢:平均値36.83歳
  • 悩み始めた時期:平均値5.70年前
  • 解消した時期:平均値4.40年前
  • 悩み始めた年:平均値31.13歳
  • 悩んでいた期間:平均値2.88年
    (出典:キャンサースキャン「不妊症及び不育症における相談支援体制の現状及び充実に向けた調査研究」)

妊娠・出産に向けて行ったこと

「自分で情報収集」が78.8%と圧倒的に高い比率。比率の高い順は以下の通り。

  • 1位:自分で情報収集(78.8%)
  • 2位:夫婦間で話し合い(47.9%)
  • 3位:性交のタイミングの調整など、夫婦で行う妊娠に向けた努力(47.2%)
  • 4位:専門医療機関での不妊症検査(自分)の受診(38.9%)
  • 5位:専門医療機関への相談(35.6%)
  • 6位:生活習慣の改善(サプリ等含む)など、自分で行う妊娠に向けた努力(34.3%)
  • 7位:親しい友人・知人や家族など、周囲の人への相談(28.8%)
  • 8位:不妊症治療の受療(28.5%)
  • 9位:専門医療機関での不妊症検査(夫)の受診(27.2%)
  • 10位:不妊や不育の治療経験がある人への相談(14.8%)
  • 11位:特に行ったことはない(5.3%)
  • 12位:保健センターなどの、身近な医療・保健関係者への相談(2.3%)
  • 13位:不妊・不育に関する相談窓口への相談(1.9%)
  • 14位:その他(1.9%)
    (出典:キャンサースキャン「不妊症及び不育症における相談支援体制の現状及び充実に向けた調査研究」)

メンタルケアの必要性と情報不足が浮き彫りに

「不妊・不育で悩んでいた頃にもっと話を聞きたかったり相談したかったと思う事柄」を聞いたところ、多岐にわたるニーズが見えてきた。特にメンタルケアの必要性と、不妊・不育に関する情報不足が浮き彫りとなる結果となった。比率の高い順に回答は以下の通り。

  • 1位:妊娠・出産に至らないことに関する不安や落ち込みについて(43.4%)
  • 2位:治療費など経済的な負担について(28.8%)
  • 3位:妊娠・出産に至るために具体的に何ができるのかわからないことについて(28.6%)
  • 4位:専門医療機関での不妊治療について(24.1%)
  • 5位:分かってもらえないことについて(25.9%)
  • 6位:病院の選び方について(23.9%)
  • 7位:努力のやめどきについて(20.6%)
  • 8位:治療に伴う身体的な負担について(18.6%)
  • 9位:今の病院・治療でいいのかという迷い(17.8%)
  • 10位:治療のやめどきについて(15.0%)
  • 11位:特にない(14.4%)
  • 12位:自分やパートナーを責めてしまうことについて(14.4%)
  • 13位:子どもを持たないという人生について(13.8%)
  • 14位:パートナーとの関係・コミュニケーションについて(13.4%)
  • 15位:正しい情報をどこで取得できるのかがわからない(12.8%)
  • 16位:治療と仕事の両立について(11.8%)
  • 17位:気持ちを誰にも話せない、パートナーからの協力が得られないことについて(10.2%)
  • 18位:パートナー以外の周囲の人との関係について(妊娠・出産に関するプレッ シャーなど)(9.5%)
  • 19位:養子・里親など、自分で出産する以外の選択肢について(5.3%)
  • 20位:その他(0.3%)
    (出典:キャンサースキャン「不妊症及び不育症における相談支援体制の現状及び充実に向けた調査研究」)

 

不育症に悩む女性を支える医療、自治体、情報

不育症専門外来の設置

不育症の治療を専門にした専門外来も登場している。順天堂大学医学部付属順天堂医院は2017年に着床不全・不育症外来を設置した。不妊症外来を設置するクリニックもある。茗荷谷レディースクリニック(東京都文京区)は、不育症専門外来を設置。診療日の火曜午後と木曜午後については、患者の心情を考慮して、子ども連れの来院は断っている。

  • 順天堂大学医学部付属順天堂医院
  • 茗荷谷レディースクリニック

不育症に悩む女性とカップルに向けた情報

不育症の治療として、家族からのサポートも含めたTebder LovingCare(TLC)がある。不育症の情報をまとめた「Fuiku-Labo(フイクラボ)」では、TLCをどのように行えばよいのかなど、マニュアルを掲載している。最近では不育症治療への助成も増えているため、助成の情報も掲載。そのほか、Q&Aなども掲載し、不育症に悩む人への情報を拡充している。「Fuiku-Labo」は日本医療研究開発機構の委託事業として運営されている。

全国の不育症窓口

厚生労働省はホームページで、各自治体の不育症相談窓口の一覧を掲載している。開設場所や相談形式(電話、面接、電子メール)、問い合わせ先などの情報が網羅されている。

不育症検査・治療の助成

不育症の検査や治療への助成は多くの自治体で実施されている。持田製薬が運営する不妊症・不育症応援サイト「あしたのママへ」では、地図から助成情報が検索できて便利。

不育症の相談対応マニュアル 〜自治体・事業所・医療機関向け〜

不育症に関する自治体・事業所・医療機関向けの相談マニュアルが、厚生労働省によって整備されている。相談対応では不育症による一般的な悲しみが、うつ病などの疾患に進展することに配慮するべきだとされている。女性本人が悲しみを押し殺している場合、支援が遅くなることがあることも指摘されている。

  • 反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル

求められる精神的なケア

不育症には妊娠という喜びの後に、流産や死産といった悲しい出来事が起こることから、その後の女性の精神的ケアが重要だ。「治療時に相談したかったこと」という質問で「不安や落ち込みについて」という回答が43.4%と最も高い数字を示していることからも、問題の大きさがうかがえる。よくある相談事例では、「夫の、死産したことの記憶が薄れている」といった夫婦間での意識の違いを感じて孤独になるケースも紹介されており、一人で抱え込まないような周囲の配慮が求められる。

 

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