ヘルスリテラシ―の定義と3つの段階(1/4)
誰でも簡単に健康情報にアクセスできる今の時代は、情報を見極めて正しく活用する力「ヘルスリテラシー」が必要不可欠。国際的に見てヘルスリテラシーが低いと言われている日本は特に、情報を受け取る生活者も発信する企業も、そのスキル向上が急務だ。
目次
ヘルスリテラシーの基礎知識
ヘルスリテラシーの定義
ヘルスリテラシーとは、生活の質の維持・向上のために、健康や医療に関する情報を活用する能力のこと。英語の「health(健康)」と「literacy(読み書き能力)」を組み合わせた造語。経済協力開発機構の国際成人力調査では、literacyの定義と例についてこのように述べている。
「読解力」(Literacy)
・社会に参加し、自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させるために、 書かれたテキストを理解し、評価し、利用し、これに取り組む能力。
○ホテルなどにある電話のかけ方の説明を読んで、指定された相手に電話をする。
○図書館の蔵書検索システムを使って、指定された条件に合う本を選ぶ。(引用:経済協力開発機構「国際成人力調査」)
人は何らかの症状に見舞われたとき、病院を探したり治療法を選ぶなど自分の健康を保つために情報収集をするが、情報を入手するだけでなく、正しく理解し評価を下した上で信頼性のあるものか判断し的確に活用する。この一連の作業が重要となる。
IT技術が普及した近年になり情報やデータを管理したり活用する能力として「情報リテラシー」という言葉が使われるようになったが、ヘルスリテラシーは、“健康情報についての情報リテラシー”と言い換えることができる。
ヘルスリテラシーの定義については、WHOやアメリカ医師会ら多くの学会や研究所がその出版物のなかで明示している。それら全ての定義から導き出されたヘルスリテラシーの包括的な定義は、以下の通り。
健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力であり、それによって、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの。(参考:BMC Public Health「Health literacy and public health:a systematic review and integration of definitions and models.」)
ヘルスリテラシーの3つの段階
シドニー大学教授でWHO&WBコンサルタントでもあるナットビームは、ヘルスリテラシーを3つの段階に分類。基本的なものから高度なものまでに分けて、対象が個人か集団かによっても区別している。
- 【段階1】機能的ヘルスリテラシー(基本のレベル)
日常生活における読み書き能力をもとにした、健康や医療に関する情報を理解する力。
例:医師や薬剤師から聞いた説明の内容がわかる、医薬品の説明書やパンフレットに書いてある内容がわかる - 【段階2】伝達的/相互作用的ヘルスリテラシー(「機能的ヘルスリテラシー」よりも発展したレベル)
健康や医療に関する情報を自分で探したり、他人に伝達したり、自分で適用しようとする力。様々な形のコミュニケーションによって情報の入手や理解を果たすため、人と上手く関わるための社会性をそなえていることを含む。周囲のサポートが得られる環境において発揮できる個人の能力であり、健康に関する情報に関心があり「自分でそうしたいと思った時に、それができる」ことが重要。ほとんどが集団のためでなく、個人のための能力である。
例:友人から健康に関する情報を受け取る。周囲からおすすめの病院を聞いた時にその病院について調べた上で納得してから行動に移す - 【段階3】批判的ヘルスリテラシー(高度なレベル)
健康や医療に関する情報をうのみにせず、批判的な視点も含めて分析し、主体的に活用できる力。その情報を日常的な出来事や状況をコントロールする上で利用し、健康を決定している社会経済的な要因について知ったうえで、社会的または政治的な活動ができる能力。
例:流行している風邪について自主的に調べ、入手した最適な予防方法や対策を社内でシェアする