機能性表示食品の市場規模は7,274億円へ拡大、マルチヘルスクレームが成長トレンド サプリも再拡大へ

富士経済は先月末、国内の2024年の機能性表示食品の市場規模を、2023年比5.2%増の7,274億円との予測を発表した。

 

機能性表示食品、特定保健用食品の国内市場

【出典】富士経済

 

機能性表示食品、サプリによる健康被害の影響は収束し再拡大へ

機能性表示食品は、「Yakult1000」に代表される睡眠関連のヘルスクレームの活況や、無糖茶やドリンクヨーグルトの既存商品が機能性表示食品にリニューアルされるなどの動きがあり、高い伸びが続いた。2024年は市場をけん引してきた睡眠ブームが落ち着いたため伸びは鈍化するものの、拡大は続くとみられる。

免疫機能維持やストレス緩和に関するヘルスクレームが高成長を維持しているが、市場が飽和しつつある中、参入企業では新規顧客の獲得から、ミドル・ヘビーユーザーの育成へと軸足を移す動きも。サプリメントは、昨年3月の健康被害問題の影響を受け前年を下回るとみられるが、2024年後半には影響が収束しつつあり、今後は再拡大する見込み。

トクホ、市場は縮小も疾患訴求で差別化の広がりに期待

特定保健用食品(トクホ)は、機能性表示食品制度の開始以降優位性が低下し、企業も低コストで商品開発が行える機能性表示食品に軸足を移したことから、2017年以降市場は縮小してきた。2024年も複数のブランドが終売したため、市場縮小が続くとみられる。しかし「明治ブルガリアヨーグルト LB81 プレーン(明治)」や「伊右衛門 特茶 a TOKUCHA(サントリー食品インターナショナル)」といった代表的なブランドが上向くなど好調の商品もあり、縮小幅は緩やかになるとみられる。

2024年には、“心血管疾患になるリスクを低減”を表示した商品が登場。機能性表示食品では実施できない疾患名の具体的な表示による訴求は差別化につながるとみられ、今後は他の疾患における表示の広がりが期待される。

注目市場は「疲労軽減」「脂肪」「免疫機能維持」

◆疲労感軽減

注目市場の一つが、疲労軽減のヘルスクレーム。2024年は前年比145.8%で347億円で、2025年は374億円へと拡大する見込み。この市場では、クエン酸やアミノ酸、酢酸などによる疲労感軽減を訴求した商品が多く、2020年以降、機能性表示食品の届出が大幅に増加し、2021年から順調に拡大。黒酢ドリンクやスポーツドリンク、菓子、サプリメントなどが展開されており、参入企業が活発に新商品発売やリニューアルを行っていることから、2024年も市場は伸びが続くとみられる。コロナ禍のライフスタイルの変化に伴って、疲労を実感する人が増えたことで注目され、コロナ収束後も休息を求めるユーザーの需要を獲得している。

疲労感軽減単体の訴求が主体だが、2023年以降は、訴求力強化のため他のヘルスクレームで展開してきた商品に疲労感軽減のヘルスクレームを加えるケースもみられ、脂肪(低減)をはじめ、生活習慣病予防関連の組み合わせが活発化している。

◆脂肪

2つ目の注目市場は、保健機能食品の中で最も規模の大きいカテゴリーとなる脂肪に関するヘルスクレーム。機能性表示食品と特定保健用食品が展開され、また商品もサプリメント、明らか食品、ドリンク類とバリエーションが豊富。単体のヘルスクレームを訴求する「シングルヘルスクレーム」より、複数を組み合わせて訴求する「マルチヘルスクレーム」が成長トレンドにあり、マルチヘルスクレームの市場規模は、2024年の1,100億円から2025年の1,259億円へ拡大するとみられる。

脂肪に関するヘルスクレーム

【出典】富士経済「脂肪に関するヘルスクレーム」

 

シングルヘルスクレームは、脂肪(低減)と脂肪(吸収抑制)があるが、競合激化に伴ってマルチヘルスクレームによる訴求力強化が活発となり、切り替えの動きもあるため、2025年には双方とも前年を下回るとみられる。脂肪(低減)は、ニーズの高さからシングルヘルスクレームであっても成長を続けてきたが、新奇性は低下しており、ブランドの活性化策としてマルチヘルスクレームへの切り替えが起こる可能性が高いとみられる。

マルチヘルスクレームは、ブランドの差別化のために多機能化を図る動きが活発で好調。近年はトリプルヘルスクレームが伸びている。多いものでは5つ以上のヘルスクレームを有する商品が存在するが、マルチ化が進むことでターゲットが広がる一方、個別機能の訴求力が落ちるという課題もみられる。

 

◆免疫機能維持

3つ目の注目市場は、免疫機能維持。2020年以降、新型コロナ治療薬などの対応策が確立されていない状況下で、体調管理ニーズを獲得した。その後、ワクチン接種の広がりなどから特需は落ち着いたが、参入企業による積極的な商品展開やプロモーションにより順調な拡大が続いた。関与成分はキリングループの展開するプラズマ乳酸菌のみであったが、2022年以降は独自の関与成分で機能性表示食品の届出を行う企業が登場し、広がりがみられる。

新型コロナの収束に伴って感染予防の需要は落ち着いたが、参入企業は日々の体調管理、コンディショニングを啓発することで需要開拓を進めており、2024年も前年比二桁増の410億円が見込まれる。

市場は、免疫機能維持のみを訴求するシングルヘルスクレームの商品が9割以上を占める。現状、マルチヘルスクレームの商品は少ないが、脂肪(低減)や睡眠といった消費者の関心が高い機能を組み合わせて需要獲得に成功する商品もみられる。

 

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