ヘルスリテラシ―の定義と3つの段階(4/4)

ヘルスリテラシーに関する企業の取り組み事例

ヘルスリテラシーへの注目が集まる中で、「健康経営」を目的にヘルスリテラシーの向上に取り組む企業が出てきている。ワーカーのヘルスリテラシーを高めることは組織全体のヘルスリテラシーの向上に繋がり、健康的な組織や企業風土の形成につながるからだ。

ヘルスリテラシー向上のための企業の取り組み事例

ローソン

ローソンでは2005年から従業員とその家族に対する健康づくりのサポートを実施している。2015年からは3年連続で経済産業省が選定する“健康経営銘柄”に選ばれている。また2017年からスタートした“健康経営優良法人”では2年連続の認定実績も。良好な健康状態や健康増進への働きに応じて、自社ポイント“Pontaポイント”を付与する「ローソンヘルスケアポイント」などの施策を続けている。こうした施策によって社員は日頃から健康を意識して行動するようになるため、組織全体のヘルスリテラシー向上を期待できる。施策例は以下。

  • 《目標値の設定》
    2018年度までは、健康診断結果から導き出されるリスク者を減らすことを目標に「禁煙デーの導入」や「リスク者への受診勧奨レター発信」といった健康支援策を展開していたが、2019年度からの3ヵ年は明確な目標値を設定し、KPI(重要業績評価指標)を「肥満」「血圧」「肝機能」「脂質」「血糖」「喫煙」の6項目とした
  • 《健康白書の作成》
    全社員の健康の推移と、取り組みの成果を分析。目標値を基準とした進捗状況やその他データヘルス計画に基づく結果をまとめたものを“健康白書”として作成し、毎年度公表している
  • 《階層別保健事業》
    日々健全な生活を送ることを目的に、ストレスチェックの強化やスポーツ大会の実施、余暇の奨励や子育て支援に重点を置いている。4月の健康診断ではリスク別に判定基準を設け、産業医・産業保健師による面談を実施。その後も治療状況を確認しつつ年度末までフォローを続けている。また、健保施策として糖尿病発症予防セミナーも開催

花王

5年連続で“健康経営銘柄”に選定された花王は、2008年に「花王グループ健康宣言」を社内外に発信。事業主、健康組合、産業保健スタッフ、外部専門家による専任部署を設立し、積極的な健康経営に取り組んでいる。「生活習慣病」「メンタルヘルス」「禁煙」「がん」「女性の健康」をメインとした“健康づくり5つの取り組み”を中心に施策が行われ、健康づくりからのヘルスリテラシーの向上を図っている。施策例は以下。

  • 《スマート和食》
    花王が研究した内臓脂肪をためにくい食事法をもとに作られた“スマート和食”を、国内7事業場の食堂で昼食メニューとして提供。また産業医・介護職は「スマート和食マスター講座」を受講し、社員向けの保健指導や健康教育に活用している
  • 《ヘルシアウォーキングチャレンジ》
    1日1本ヘルシアを飲みながらウォーキングを実践する、期間限定のキャンペーンを実施。3,593名が参加し、その内29.5%が体重の減少に成功。また84.5%が歩くことを習慣化する結果となった

ヘルスリテラシー向上はマーケティングヒントにも

ヘルスリテラシーというと、とかく情報を受け取り活用する側にいる生活者に主眼が置かれるが、情報を発信する側にいる企業のヘルスリテラシー向上も忘れてはいけない。自社あるいは自分が担当する領域だけではなく周辺領域の情報にも目を向け、偏ったり誤った発信をしないよう注意が必要だ。ヘルスリテラシーが高まれば、副次的にマーケティングのヒントも見えてくるはず。

 

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