ヘルスリテラシ―の定義と3つの段階(2/4)

ヘルスリテラシーが重視される背景

ヘルスリテラシーが重視される背景にはいくつかの要因がある。情報化が急速に進む社会で、人々はあらゆる情報へ簡単にアクセスできるようになり、「情報入手」の能力が飛躍的に向上した。しかしヘルスリテラシーにおいて求められる、そこから先の「情報理解」や「情報評価」、「情報活用」といった能力については不十分なままで、情報だけが膨大にアクセスできるというアンバランスな状況が生まれてしまった。情報の入手から活用まで一連の能力が必要とされるヘルスリテラシーを身に付けることが重要視されているのはそういった背景がある。

インターネット上で医療情報が氾濫している

「情報化社会」によって、医療従事者に限らず、誰でも健康や医療に関する専門情報を入手しやすくなった。しかし普段あまり触れることのない医療の専門用語や統計用語が含まれるために理解が難しく、正しい情報へのアクセスを困難にしているケースは少なくない。なかには内容に誤りや偏りがあるなど危険な情報が含まれていたり、悪意のあるいたずらや営利目的で偏った情報を提供する人や企業も存在するので、不適切な情報も紛れ込んでいる。情報の“正確性”や“安全性”を見極めることが困難になっているのだ。

メディアリテラシーの不足

そもそも日本人のヘルスリテラシーは国際的にみても低い。ヘルスリテラシーの測定尺度「HLS-EU-Q47」による調査結果をみると、日本人がヘルスリテラシーに関する全47項目で「難しい」と回答した割合は、EU8か国(8,102人)の平均よりも全項目で高い結果に。その要因の一つは、日本でのメディアリテラシーにおける特徴が考えられる。日本人のマスメディアへの信頼度は高く、2010年の世界価値観調査では約7割が新聞・雑誌・テレビを「信頼できる」と回答している。テレビや雑誌などで健康情報を入手することはあっても、“批判的に”見ることは少ないのだ。これはヘルスリテラシーにおける「情報入手」から「情報活用」までが直結して行われていることを意味し、その間ですべき「情報理解」や「情報評価」が不足していることになる。

健康管理能力を高める効果を期待できる

ヘルスリテラシーが低いことは健康管理能力の低さに直結する。健康リスクに関する興味や健康意識が薄いことで、健康を害するさまざまなトラブルを招くからだ。ヘルスリテラシーの低さが原因となる健康への悪影響には、例えば以下が挙げられる。

  • 《ヘルスリテラシーの低さが招く健康への悪影響》
    ・インフルエンザ予防接種などの予防サービスを利用しない
    ・病気、治療方法、薬の知識が少ない
    ・医薬品のラベルや医療機関で支給される処方箋などのメッセージを読み取れない
    ・医学的に解説されているはずの最初の兆候に気づきにくい
    ・長期間または慢性的な病気を管理しにくく、入院しやすい
    ・保健医療専門職や医療者に自分の心配や不安事を伝えにくい
    ・適切でない場合でも、救急サービスを利用しやすい
    ・職場や教育の現場でケガをしやすい
    ・死亡率が高い

だがヘルスリテラシーが向上すれば、「定期検診を受ける」「生活習慣を改善する」など人々は健康のために好ましい意思決定や行動選択をするようになる。

最近では、保健医療を提供する側のヘルスリテラシーも説かれている。保健医療からの複雑な説明や要求を市民や患者にわかりやすく伝えることで、健康について学んでもらい自分で問題を解決できるように支援する能力のことだ。

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