ワコールに批判の声殺到 なぜ繰り返される?企業の炎上問題

女性用下着の製造・販売会社として女性たちに広く認知されている「ワコール」が、今女性たちから批判を浴びている。

問題になったのは、ウェブメディア「FORZA STYLE(講談社)」に掲載された、ワコールの男性下着ブランド「WACOAL  MEN」の記事広告。記事内では、同メディアの編集長でテレビ番組などにも出演している干場義雅さんと、ワコールの担当者による対談が綴られており、その中で次のような言葉が出てくる。以下は一部の内容。詳細文章はハフポストの記事へ。(この批判を受け当該記事は先日削除されたため、以下はこの騒動について記事化したハフポストより引用)

「東北美人に後ろから抱かれているような感じ」
「これはエロいですね!」
「僕、ブラとかもシルクカシミアのすごいハイゲージのニットとかを着けてる女性、好きなんですよ。でもブラジャーがレースとかでボコボコってしてると、あ、この人レースのブラジャー着てるんだなってわかっちゃう。良いとこでもあるんですけど、楽しみにしときたいじゃないですか」
引用:「ワコールのPR記事とツイートに批判の声「女性差別以外の何ものでもない」「偏見とハラスメントを凝縮したような表現」【UPDATE】」HUFFPOST

 “ 性 ” の視点に批判集まる

「ワコールと言えば女性ブランド」というイメージが強いだけに、上記のように “性” の視点から商品をアピールした当メディアや企業側の意図に落胆した女性たちは多いようだ。ツイッターには、次のような批判の投稿が。

・ワコールは、もう買いません!(サクマなに子さん)
・下卑な表現(純子さん)
・対話の内容がキモすぎるな(大人のための静かな時間さん)
・自分が好きで飲んでたり身につけてる物を作ってる企業が女性差別的だったりセクハラまがいのツイートするの、親しくしていた友達から差別発言されたようでとても悲しい(jingさん)

男性からは「騒ぎすぎ」

本騒動に対する意見の中には「騒ぎすぎ」といった意見も。このような意見が出るのは大抵が男性からで、企業による性差別的発言に反応するのは女性だが、そもそもこの男女間の捉え方の差が、このような問題を引き起こしているのではないだろうか。本記事を読んで、男性の中には「そこまで怒ることか?」と感じる人もいるかもしれないし、ハフポストには「この程度の表現で女性差別だとか、偏見とハラスメントを凝縮した、なんてのは流石に言い過ぎ」というコメントも寄せられているが、実際にこれまでにも「航空会社によるミニスカCA」「旅行会社企画の、東大美女が隣に座ってフライトするキャンペーン」「百貨店の『女性の太モモ展』(開催前に炎上し中止)」事件なども、女性の性を企業が “利用” したことに対して女性たちが怒りの声を上げている。女性の”性”を企業活動に利用するのは、ここで改めて述べるまでもなく、当然やめるべきである。

「品位に欠けた企業」と反感を買うばかりか、長年築き上げた企業ブランディングをも損ね、多くのファンを失うことになる。さらに、男性よりもコミュニケーション能力が高く、正義感が強く、他者に共感を求める傾向がある女性たちは、SNSやネット上で自分の感情を拡散する。企業規模が大きく認知度が高い企業ほどその影響力は大きい。男性広報担当者やマーケターは「こんな表現をしたら、こんな発言をしたら、女性たちはどのように感じるか?女性たちはどのように反応するのか?」という先のことまで慎重に考えて企画をするべきだ。

炎上は “ 普通 ” に考えれば予測できるはず

ただ、このような炎上が起きる度にウーマンズラボ編集部が不思議に感じるのは、「(このような企画をしたらどんな反応が起きるか?は)考えれば普通にわかるのではないか?」「簡単に予測できるはず」「その企画にGoサインを出した同僚、上司、クライアントなど関係者たちは誰も、このような事態が起きるかもしれないことに気付けなかったのか?」ということ。不思議でならない。

男性サイドが心得ておきたいのは、性差別を感じる側に立たずに生きている男性たちが「今時、日本に性差別なんてない」「これくらいの表現で女性は怒りすぎ」「これくらいの表現なら(女性たちも)笑ってくれるだろう」という考えを取り払い、女性を理解するよう心がけることだ。

「これくらいの表現で女性は怒りすぎ」という意見はこのような炎上が起きる際にSNS上でよく見かけるが、そのような “感覚” が根底にある限り、「こういう発言をしたら女性はどう感じるのか?」という予測ができず、同じような騒動を繰り返してしまうことになる。これはモラハラやパワハラの被害者に対して加害者が「そういうつもりはなかった」と主張するのに似ている。

性差別を感じる側にしか分からない不満や怒り

性差別を感じる側に立って生きている者にしかわからない不満や怒りというものを女性は抱えているのだ。出産したら妻側が仕事を辞めるのが今なお一般的、家事・育児を主導するのは女性、ワーカー全体に占める女性管理職の割合は国際比較で見ても日本は非常に低いこと、日本のジェンダー・ギャップ指数(男女格差を示す指数)が144カ国中114位(2017年)、と言った日本の女性の実情を思えば、日本の女性たちが「性差別」を今なお感じながら生きていることに納得できるはずだ。

この騒動を、「またか」「これくらいの表現で女性は怒りすぎ」と呆れ半分で片付けてはいけない。「こんなことで怒る?」と疑問を感じたとしても、炎上という事実が女性たちに受け入れられなかったという率直な “答え”であり、企画が失敗したという “答え”  そのものだ。炎上が起きたら時すでに遅し。このような事例が自社で起きないようにするために、特に広報担当者やマーケターは女性の気持ちをしっかり理解したい。

ワコールといえば、ピンクリボン運動に積極的に取り組んでいることで知られている。女性消費者の間で「女性の味方」というイメージが強いだけに今回の騒動は大変残念だ。今後の同社の取り組みに期待したい。

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