「子どもを産まなければ良かった…」4割、子育ての期間が長いほど後悔
イスラエル発の世界的な話題書『母親になって後悔してる』が国内で反響を呼んだのを機に、「子を産んだ後悔」「母親でいることの苦痛」「子を持たない選択」など、子どもを持つことのネガティブな側面や子どもを持たない選択に社会の関心が向けられている。「母は無償の愛を子へ注ぐもの」「母は子の犠牲になるのが当たり前」「子がいることは幸せ」「女性は子を産みたいと思うもの」といった社会通念へのアンチテーゼが背景にあり、多様な母親像や女性の選択肢を認め合おうとする動きが起きている。
そもそも女性や母親に関するこういった社会通念は、よくよく考えてみれば、いわゆる典型的なステレオタイプ。妊娠可能年齢の女性や母親を自社製品・サービスのターゲットに据えたり広告クリエイティブに登場させる場合は、今後は、女性のニーズや母親像を固定観念で描かないよう適度な配慮が必要になるだろう。そこで気になるのは、「子を持ったことを後悔している母親・後悔したことがある母親」や「子を持たないと決めている女性」の割合と、その理由。各所の調査結果を集めた。(他、女性の価値観の変化や消費動向、女性ニーズ、女性マーケティングに役立つ最新の調査データなどはニュースレターで配信中)
母親にならなければ良かった…理由は?
NHKは昨年末、『母親になって後悔してる(オルナ・ドーナト)』が反響を呼んでいることから、実際にそういった思いを抱えている母親の存在を明らかにしようと調査を実施した。対象は全国の18歳から79歳の母親、6,528人。母親になったことを後悔する女性が一定数存在するものの、彼女たちの大多数に子どもへの愛情があることがわかった。「後悔」と「子どもへの愛情」は別であること、同時に、その矛盾する感情の苦しみを誰にも言えずに胸に納めている母親の存在も明らかにした。以下は調査結果概要。(詳細:NHK「“母親にならなければよかった”?女性たちの葛藤6000 人アンケート結果」)
- 「母親にならなければ良かった」と思ったことがある…32%
ー1回だけある…2%
ー数えきれないほど何回もある…7%
ー何回かある…23% - 「母親にならなければ良かった」と思ったことがあるが「子どもに対して愛情は大切だ」という思いがある…72%
- 「母親にならなければ良かった」と思った理由、トップ3
1位:自分はよい母親になれないと思うから…42%
2位:子どもを育てる責任が重いから…40%
3位:子どもとのコミュニケーションがうまくいかないから…39% - 「母親にならなければ良かった」という気持ちを誰にも伝えたことがない…56%
- 「母親にならなければ良かった」という気持ちを誰にも伝えたことがない理由、トップ7
1位:口に出してはいけないことだと思ったから…55%
2位:母親になることを決めたのは自分だから…35%
3位:子どもへの影響を心配したから…24%
4位:母親失格だと思われると感じたから…22%
5位:その感情を自分で認めたくなかったから…20%
6位:周りから責められると思ったから…18%
7位:口に出しにくい時代や環境だったから…17% - 母親になったことを後悔しないようになるためには、変わるべき・変えるべきは?トップ3
1位:自分自身…61%
2位:子どもの父親・パートナー…56%
3位:社会の価値観・意識…46%
4割が後悔、子育ての期間が長いほど顕著に
少し前になるが、博報堂の「こそだて家族研究所」とママ向けコミュニティサイト「ママスタジアム」もNHKと同様の調査を実施し、出産を後悔している女性が同程度いることを明らかにしている(2019)。子どもを優先するも、その裏で深刻な悩みを抱えているママたちの本音を探ることを目的にした調査で、「悩み」「離婚」「子ども」「両親・義両親」「欲求」などの項目について、20〜40代の母親を対象に実施した。興味深いのは子どもの年齢別に調べた点で、「育児年数が長いほど、子どもを産まなければ良かったと思う傾向が強くなる」ことを明らかにした。育児・子育てに奮闘するなかで、さまざまな壁や困難に次々に直面していくことが背景にありそうだ。(詳細:こそだて家族研究所×ママスタジアム「ママの本音に関する意識実態調査」2019.7)
- 「子どもを産まなければ良かった」と思ったことがある…40.4%
ー1回だけある…6.8%
ー数えきれないほど何回もある…7.0%
ー何回かある…26.6% - 子どもの年齢別に見ると、「0歳児ママ」「1〜2歳児ママ」は「1回もない」の割合が高く、「3〜5歳」以降で「産まなければ良かったと思ったことがある」の割合が高くなる
20〜40代の無子女性、「子どもは産まない」6割
母親になったことを後悔する女性に社会の関心が向けられるなか、母親にならない選択をする女性の意識も明らかにしようと、各社が調査を実施している。組織コンサルティング会社の識学(東京・品川)が20〜40代の有職で無子の女性150人に「子どもを産む予定の有無」を聞いたところ、「子どもを産みたいと思わない、産む予定はない」と回答した女性は6割に上った。
続いて、「子どもを産みたいと思わない、産む予定がない」と回答した女性にその理由を尋ねたところ、次の結果に。トップ3は「1位:子どもが欲しいと思わないため(34.4%)」「2位:自由がなくなるため(32.3%)」「3位:子どもを産む・育てる自信がないため(30.2%)」「3位:自分自身のために時間を使いたいため(30.2%)」。
Z世代の男女、「将来、子どもはいらない」4.5割
前述の識学と同様の調査をZ世代に絞って行ったものもある。BIGLOBEは今年2月、全国の18〜25歳の未婚の男女800人を対象に、結婚や子育てに関する意識調査を実施した。年齢的にまだ結婚や子どもを持つことに思考を巡らせる機会が少ないことは考慮の必要があるが、4.5割が「将来、子どもはほしくない」と回答した。男女別に見ると、「子どもはほしくない」の回答割合は男性の方が高く51.3%、女性は40.2%。
その理由を聞いたところ、「お金の問題(17%)」を上回って多かったのは、「お金の問題以外(42.1%)」と「お金の問題と、お金の問題以外の両方(40.2%)」。「お金の問題以外」の具体的な理由は「1位:育てる自信がないから」「2位:子どもが好きではない、子どもが苦手だから」「3位:自由がなくなるから」などで、前述の識学が実施した調査と概ね同様の結果だった。
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