女性差別の例 〜日本・世界の男女格差/ジェンダー問題の現状〜

かつて日本には、女性に参政権が与えられないなど分かりやすい男尊女卑の時代があった。今では女性の地位も向上し、男女格差は少しずつ少しずつ解消され、男女平等が進んではいるが、昔から続く女性差別の意識は根深い。女子学生の就職差別、政界での女性へのセクハラ発言、企業による女性差別を感じさせるプロモーションなど、炎上ニュースは絶えない。しかし世界中で巻き起こったme too運動にあげられるように、女性差別をなくそうと立ち上がる女性の声は大きくなっている。

日本の女性差別・男女格差、現状と生活者の意識

日本における女性差別・男女格差は今なお存在する。世界的に見て特にそれが顕著なのは、政治や経済での女性進出。先進国ながら大幅に遅れているのが現状だ。男女格差の実態は、女性差別意識の結果とも言える。

日本の男女格差、世界ランク121位

「ジェンダー・ギャップ指数」とは

世界各国の社会進出における男女格差を示す指標。略称はGGI。世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表し、ランキング形式で順位付けしている。男女平等の度合いについては以下4分野における状況を評価。世界各国の男女の格差を数値化するため、「男女平等ランキング」ともよばれる。

  1. 経済(女性の経済活動の参加と機会)
  2. 教育水準、
  3. 保健(出生率や健康寿命)
  4. 政治(女性の政治参加)

日本のランキング(2021年)

日本の2021年時点での世界ランクは、156ヵ国中120位。相変わらず先進国で最下位という結果となった。

「男性の方が優遇されていると思う」7割

内閣府が行った「男女共同参画社会に関する世論調査」では、「社会全体を見て男女の地位は平等になっていると思うか?」という質問に対し「男性の方が優遇されている」と回答した人は7割以上。今日でも多くの人が、社会において男性優位の状況を感じていることがうかがえる。また男女別に回答を見ると、男性は68.2%にとどまったのに対し、女性は79.2%と8割近くに。女性の方が男性優遇の現状をより強く感じていた。

 

男女平等を目指す日本の法律

男女平等に関する法律には、1985年に制定された「男女雇用機会均等法」とその後1999年に施行された「男女共同参画社会基本法」がある。しかしこの法律には批判的な意見も。

男女雇用機会均等法 〜雇用における男女差別を禁止〜

男女雇用機会均等法とは

正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」。
事業主が職場における男女差別を行うことを禁止し、募集・採用や配置・昇給・昇進・教育訓練・福利厚生、定年・退職・解雇の面で、性別にかかわらず平等に扱うことを定めた法律。1985年に制定、翌86年に施行された。男女平等の規則にならい、看護婦とスチュワーデスがそれぞれ看護師と客室乗務員に名称変更されたのも、この法律による。その後、97年には一部改正。それまで努力義務だった採用・昇進・教育訓練の場面における差別が禁止規定となり、女性保護のために設けられていた女性の残業・深夜業務・休日労働を制限する女子保護規定は撤廃された。

男女共同参画社会基本法 〜社会活動における男女平等を目指す〜

男女共同参画社会基本法とは

男女が互いに人権を尊重しながら性別にかかわらず、その個性と能力を十分に発揮できる「男女共同参画社会」の実現を目指すために定められた法律。1999年施行。基本法第2条のなかで触れられている「男女共同参画社会」の定義は、以下の通り。

男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」です。引用:内閣府「「男女共同参画社会」って何だろう?」

 

基本法では男女共同参画社会の実現のために、5本の柱を基本理念として掲げている。国や地方公共団体はこの基本理念のもと責務を負い、男女共同参画社会づくりのための対策を実施することが求められる。

  • 【男女共同参画社会の実現するための5本の柱】
    ・男女の人権の尊重
    ・国際的協調
    ・家庭生活における活動と他の活動の両立
    ・政策等の立憲及び決定への共同参画
    ・社会における制度又は慣行についての配慮

内外からの批判

基本法によって男女の権利が分かりやすく“見える化”され、「(ある程度は)平等になった側面もある」という声があがる一方、性別による積極的改善措置となった同法には、国内と世界各国から批判も出ている。例えば、女性社員を優遇した結果、同じ能力を持つ男性社員が冷遇され、男性差別に繋がる可能性が指摘されている。また男女平等は改善措置ではなく、社会の慣習や考え方の変化によって自然と達成されるものであり、数値で義務付けることが必ずしも平等とは言えないとの意見もある。

 

女性差別の例 〜日本〜

実際に、国内においてはどのような場面で女性差別が存在するのか?女性差別・男女格差が強い分野、職場・家庭における差別の例、企業の女性差別意識が引き起こした炎上の例を見ていく。

女性差別・男女格差が強い分野

内閣府が実施した「男女共同参画社会に関する世論調査」では、男女の地位の平等感について分野別に調査。各分野で異なる男女格差の実態が浮き彫りとなった。男性が優遇されているとする回答率が7割を超えたのは「政治」と「社会通念・慣習・しきたり」、続いて5割を超えたのが「職場」。2018年の各国議会の女性進出に関する報告書をみると、日本は193ヵ国中165位で政治についての女性参画はいまだに進んでいない。

  • 【各分野における男女の地位の平等感「男性が優遇されている」と答えた割合】
    1位:政治(73.5%)
    2位:社会通念・慣習・しきたり(70.4%)
    3位:職場(56.6%)
    4位:法律・制度(45.2%)
    5位:家庭生活(43.4%)
    6位:自治会・PTAなどの地域活動(33.5%)
    7位:学校教育(16%)

職場・家庭における女性差別の例

「職場」における女性差別としては、賃金・待遇の格差や、セクハラなどが問題視されている。なかには、男性社員と同じ仕事をさせながら、掃除やお茶くみ、コピーなどは女性社員のみに担当させる会社もいまだに存在し、昔からある性別役割分業の意識の根深さがうかがえる。

また女性管理職の少なさも日本では克服すべき課題。市場調査メディア「ホノテ」が行った調査によると、「生活の中で、“男女格差が大きい”と思う場面」のトップには「管理職への登用」が挙げられた。

  • 【生活の中で“男女格差が大きい”と思う場面】
    1位:管理職への登用
    2位:育児に対する役割
    3位:職場での役割
    4位:家庭での役割
    5位:給与水準

女性差別・男女格差を意味するキーワード

  • 《男尊女卑》
    男性の権利を重くみて、女性の権利を軽んじること
  • 《性別役割分業》
    「男は仕事、女は家事」というような性別による役割や労働に違いがあること
  • 《ワンオペ》
    一人で、仕事・家事・育児をこなさなくてはならない状態のこと。主に母親となる女性を指すことが多い。「ワンオペ育児」とも
  • 《性を売りにした企業広告》
    女性の性を売りにした企業広告による炎上も後を絶たない。2015年には女性客がターゲット層であるはずの駅ビルショッピングセンターのルミネが、「社内の女性の位置づけ」を「職場の華であるべき」といったメッセージ性を広告に持ち出し、波紋を広げた

女性差別を感じさせ炎上した事例

厚労相による「女性は産む機械」発言

2007年、松江市で開かれた自民党県議員の決起集会で、当時の厚労相だった柳沢氏は女性について「産む機械」と発言。女性を見下した発言として世間やマスコミから批判の声が集まった。

少子化問題を無視した「子ども3人くらい産んで」発言

桜田義孝前五輪相は2019年、自民党参院議員のパーティーにて「子どもを3人くらい産むようお願いしてもらいたい」と発言。経済的な事情で理想の子ども数をもてない親はもちろん、身体的な理由で子どもを授かれない女性からも批判が相次いだ。

「女性は陰湿」としたLOFTのバレンタイン広告

2019年のバレンタインに向けてLOFTは、女性5人が集まって楽しむような動画と広告ポスターを作成。しかしその内容は、女性の本音と建前が交互に繰り広げられ、仲良しのフリをするギスギスとした女性の友人関係だった。背後では髪を引っ張ったり服をつねったりする様子が描かれ、「女性は陰湿」といった偏ったイメージ広告で物議をかもした。

顧客をいじるようなイラストを投稿 キリンの「#午後ティー女子」

2018年キリンは、自社製品である「午後の紅茶」を飲んでいそうな女性として、4タイプの女性像をイラストで投稿。しかしそれは「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」と名付けられ、女性をモノ扱いし小馬鹿にするようなイラストばかりだったため炎上。

VOCE「女の市場価値」、ワコール「性の視点」

女性をターゲットにしている企業ですら、女性に対する差別発言で炎上。

 

女性差別の例 〜世界〜

セクハラからネグレクト、権利の行方まで、女性の尊厳を見直す動きは世界中で巻き起こっている。

世界中で巻き起こるme too運動

“私も”を意味するme too運動は、セクハラや性的暴行を受けた被害者が、被害体験を告白する際に使うSNS用語。アメリカの市民活動家が2007年から性暴力被害者支援の草の根活動のスローガンとして提唱したことから始まり、2017年ニューヨークタイムズが著名な映画プロデューサーの性的虐待疑惑を掲載したことで、同様の被害を受けた女性たちによる告発が広まった。そこでアメリカの女優が、被害を受けたことのある女性たちに向けて「#me too」と声を上げるよう呼びかけたことをきっかけに、著名人も一般人も呼応した「me too運動」に発展。世界的なセクハラ告発運動となっていった。

いまだ女性差別が根付くインド

インドの女性差別の現状は、宗教上の問題も相まっていまだ根強い。例として、男児を好むインドでは、「女児である」という理由だけでネグレクトにあい、年間24万人も亡くなっているという調査結果も発表された。さらに2019年には、「女人禁制」のヒンドゥー教寺院への女性の立ち入りをめぐる対立から住民同士で衝突が起き、100人以上が死傷するという事件も発生。男性と同等の権利を得ようとする動きがインド社会のなかでも高まってきている。

女性蔑視が国際的に問題視されているイスラム教

イスラムにおける女性の人権も国際社会の課題だ。女性が男性よりも劣位だという明らかな女性蔑視を説くイスラム教の聖典コーランとハディースをもとに、女性の意見や意思は尊重されない。実際に問題となっているのが「幼児婚」だ。イスラム法により女性は9歳で結婚することができ、その際に自分の意志はほとんど反映されず親族同士の合意で決まってしまう。また女性の姦通罪に対する罰則が厳しいイスラム教では、レイプ被害者であるはずの女性が処刑される例もある。この処刑は親族により「名誉ある殺人」として行われるケースが多く、今なお世界中で発生しているといわれている。「名誉の殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち(現代ビジネス)」には、衝撃的な実態が掲載されている。

女性差別に関する書籍

世界的な男女平等の波をうけて、女性差別にスポットをあてた書籍も増加。日常の何気ない空間での性差別から「名誉の殺人」を生き延びた女性の実話まで、さまざまな形で存在する女性差別を知ることができる。

夫の扶養からぬけだしたい


82年生まれ、キム・ジヨン

生きながら火に焼かれて

女性差別に対して異なる男女の意見

「男尊女卑、女性差別はあると思うか?」という質問に対し、多くの女性は「ある」と言い、多くの男性は「今どきない」と言う。この “ 意識差 ” が、そもそもの大きな問題なのではないだろうか。

「男女平等」「女性差別をなくす」とは、決して「女性優遇」でもなく、また「男性にとって生きにくくなる社会」でもない。「男女平等」「女性差別をなくす」ことは、男女が互いに思いやりを持ち、尊重し合える社会をつくるということだ。法律という積極的是正措置によって女性の社会進出は進み始めたものの、今なお女性差別の意識は社会に残っている。女性差別の撤廃には、女性の主張だけでなく男女で共に作りあげる社会的な意識改善が必要だ。

 

 

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