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世界に出遅れる日本の性差考慮、研究フェーズや疾患領域でもばらつき

研究や工学分野において性差への考慮が世界的に推奨される中、研究者の性差に対する理解や実際の研究への考慮が、日本は海外に比べ遅れていることが、AMED(日本医療研究開発機構)の調査で明らかになった。研究フェーズや疾患領域によってもばらつきが見られ、性差への考慮は十分に浸透していない実態が浮き彫りとなった「AMEDにおける性差を考慮した研究開発の推進に資する海外動向調査」2025.3

報告書は国内外の性差考慮の現状や研究者の意識を調べたもの。研究助成機関の英国MRC、カナダCIHR、海外の主要バイオバンクや主要科学誌へのヒアリングを行い、研究者へのアンケートでは、国内104人、海外114名から回答を得た。

研究者を対象とした認識度調査では、性差考慮の必要性を理解している研究者は、海外が91%に対し日本は77%と、日本の方が低かった。研究計画の策定から論文の執筆・投稿まで、実際に性差を考慮している研究者の割合も日本の方が低く、海外は80%に対し国内は54%にとどまった。若い研究者の方が性差考慮の必要性を感じる割合は高く、20代は100%が「必要性がある」と回答した一方で、70代以上は65%にとどまった(国内外の計)。また日本は海外と比べ、研究区分(臨床、非臨床など)や研究開発分野(医薬品、医療機器など)によって、性差考慮への理解度、性差考慮の状況にばらつきが見られた。研究者からは「性差を考慮することで研究の自由性が損なわれる」とのコメントが寄せられ、性差の前提知識や情報量の不足・ばらつきにより、性差考慮が研究費用・工数・研究試料の増加に繋がるとの誤認識が生じている可能性があることもわかった。

主要科学誌へのヒアリングからも性差考慮の浸透度が十分ではないことが明らかとなり、そもそも研究者が性差考慮の方法を知らないことや、研究フェーズ・疾患領域ごとに性差考慮の難易度と浸透度が異なること(※)、サンプル・資金・人手などのリソース不足などが障壁になっていることも浮かび上がった。(※)例:基礎・前臨床研究においてはsexの定義が明確であり性差を考慮しやすいが、臨床研究においてはgenderの要素も絡み、かつN数を増やすことが困難であるため性差考慮が難しい。

調査結果を踏まえAMEDは、現在の課題を「研究者間の性差考慮への誤認・誤解」と「性差考慮を実行へ移す際に生じるハードル」とし、研究助成機関の今後のアクションプランとして、科学の質の向上を意義とした性差考慮に関する啓発活動や、性差・両性の正しい考慮方法と、性差を研究計画へ組み込む上で有用となる支援の給付を挙げた。

 

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