セルフケアの性差、 女性に特有の意識・行動を男女5,000人調査で明らかに
本稿は、医療・ヘルスケアに特化した市場調査会社の株式会社インテージヘルスケアによる連載記事です。今回のテーマは「セルフケアの性差」。女性の方が一般的に健康意識が高いことが知られていますが、具体的にはどのような行動において性差が見られるのか?また、行動の裏にはどのような意識が潜んでいるのか?性差の視点から、女性の健康意識・健康行動の特徴を明らかにしていきます。
目次
男女5,000人のセルフケア行動を分析
コロナ禍を経て健康意識が高まっていると言われる中、昨今セルフケア(予防、対処)の位置づけが変化しているように感じられます。当社が実施した本調査(女性2,531名・男性2,585名)から、男女間でどのようなセルフケアの行動がなされているか、その内容や影響を分析しました。以下では、全体の傾向から性別の特徴までを整理し、現代における女性の「セルフケア」を紐解いていきます(回答者の年齢:16歳〜65歳,調査実施期間:2025年1月31日〜2025年2月4日)。
<この記事のポイント>
・男女ともに「睡眠時間を確保する」「好きなものを食べる」「無理せず休む」がセルフケアの上位3項目
・女性は友人や家族など周囲の環境を活用している
・セルフケアとしての美容ケアは女性の方が実施されている
健康を保つために心がけていること
男女ともにトップ3は「睡眠時間を確保」「好きなものを食べる」「無理せず休む」
健康を保つために心がけている行動について聴取したところ、全体で「睡眠時間を確保する(43.3%)」「好きなものを食べる(43.0%)」「無理せず休む(41.1%)」であり、頑張らずに自分を甘やかすことのできる行動が上位に上がっていました。この傾向は男女間で同様であったものの、上位3項目にかかわらず、全体的な傾向としてセルフケアの実施率は男性と比較し女性が高い傾向が見受けられました。セルフケアの実施率が女性の方が高いことから、自分を大切にする「セルフケア」への意識は、男性と比較し女性の方が高いことが想像できます。
性別で見るケア行動の違い
ここからは、性別で実施しているセルフケア行動に差があるのかを確認した結果を共有します。
■女性は友人や家族など周囲の環境を活用
男女間で回答に差があるかを確認したところ、男女差が大きく女性の割合の方が高かった上位5項目は、「友達に話を聞いてもらう(19.2ポイント差)」「美容ケアをする(18.4ポイント差)」「家族に話を聞いてもらう(18.3ポイント差)」「好きなものを食べる(18.3ポイント差)」「友達と出かける(16.5ポイント差)」「ショッピングをする(16.1ポイント差)」という結果となりました。男性と比較し女性の方が、「友人」「家族」といった自分以外の周囲の人に話しをする、また、悩みを打ち明けることで、人間関係をうまく活用しながらセルフケアを実施している様子がうかがえました。
■心・健康のための美容ケアは女性の実施率が高い
「美容ケアをする」と回答した割合は男性4.0%に対し、女性22.4%と、その差は18.4ポイントでした。昨今、男性用化粧品を目にする機会が増えていますが、「心・精神の健康」をサポートする目的でも実施される美容は依然として女性の方が意識が高いことがうかがえました。
セルフケアにおける性差とは?
女性は“環境”を活用、男性は“自分だけでできる方法”で実施
女性は男性と比較し、健康に関する行動=セルフケア行動の実施率が高いことがわかりました。その中でも、女性は友人や家族といった周囲の環境を活用して身体と心の健康を保っている様子がうかがえました。そのため、「一人だけではなく、周囲の人間と共感し合うことも健康を保つために有用である」と感じている可能性が考えられます。社会的要因としても、これまで女性は子育ての中心的な役割を担ってきたことから、家族や周囲のサポートが不可欠でした。こうした歴史的な背景が現代にも影響し、女性は周囲との繋がりを通してリフレッシュをしようとしているのかもしれません。
女性の美容投資への期待
セルフケアにおける行動としての美容ケアは女性の方が実施されており、「心・精神の健康」をサポートする側面をもつ美容は依然として女性の意識が高いことがうかがえました。美容は自分のために時間や労力、お金を費やす「自己投資」と捉えることができます。多忙な日常の中で意識的に自分自身に目を向け、自分自身に費やす時間を持つことで自己管理できているという感覚や、自分を大切にしているという満足感が得られるのではないでしょうか。また、スキンケアやダイエットなど美容には継続的な努力が必要なものも多くあります。その努力が実を結び、成果として現れることで達成感が得られ、それが精神的な充足感につながることも、自己投資としての美容の価値として、女性は認識していると考えられます。
女性ならではのセルフケア行動への期待
セルフケアのスタイルとして「友人」「家族」など周囲の環境を活用していること。また、「心・精神の健康」をサポートする側面をもつ美容への意識が高いことから、美容は女性同士の共通の話題になりやすく、情報交換や共感を通じて社会的なつながりを深めるきっかけになっていることが予想されます。友人や家族と美容について話したり、一緒にショッピングに行ったりする時間は、非日常を味わったり、楽しさや安心感をもたらし、精神的なリフレッシュにも繋がると考えられます。女性の美容市場は今後も拡大が予想され、女性のケアをサポートするさらなる多様な製品やサービスの開発、そしてウェルビーイングを重視したアプローチの深化に繋がることが期待されます。
【提供元】 株式会社インテージヘルスケア
インテージヘルスケアは幅広い疾患領域における実績、医療やヘルスケアに特化した専門性の高さ、豊富なアセットを活かし、お客様の意思決定につながるインサイトをご提供します。「産学連携プロジェクト」は、 株式会社インテージが”ハブ”となり、生活者理解について課題を持つ企業と、アカデミックな知見や生活者としての視点を持つ大学・学生を繋ぎ、共同で課題にアプローチすることで、ビジネスヒントの獲得を支援するサービスです。2024年からは当社が主体となり「ケア」をテーマにした産学連携プロジェクトがスタートしました。詳細はこちら。
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