「ウェルネスツーリズムプロデューサー養成講座」成果発表会、開催レポート
滋賀大学で「ウェルネスツーリズムプロデューサー養成講座2025」の最終成果発表会と修了式が開催された。本講座は2019年にスタートし、地域資源を活かした新しい観光人材の育成を目的とするもので、これまでに117名の修了生を輩出している。今年度は19名が参加し、4チームに分かれてビジネスプランの検討を進めてきた。講座の最終回となる発表会と修了式は、3月13日滋賀大学彦根キャンパス講堂にて開催された。
ウェルネスツーリズム提案成果発表
地域観光を支える人材への期待冒頭、主催者を代表して滋賀大学の竹村彰通学長が挨拶を行った。竹村学長は、2018年に滋賀大学が「滋賀の観光イノベーションフォーラム」を立ち上げ、観光立県・滋賀の新しいブランドづくりと人材育成に取り組んできた経緯を紹介した。その中で、健康意識の高まりや観光スタイルの変化を背景に、ウェルネスツーリズムの重要性が高まっていると指摘した。「人々の観光の形態が変化する中で、心と体を整える“ウェルネスな旅”を企画・実践できる人材の存在は、地域観光の未来にとって重要である。本日発表されるビジネスプランは、受講生の皆さんが議論を重ねて積み上げた知恵の結晶であり、地域観光を支える大きな幹へと育っていくことを期待している」と述べ、受講生たちにエールを送った。
地域資源を活かしたウェルネスツーリズム提案成果発表では、各チームが地域文化や自然環境を活用した実践的なウェルネスツーリズムのビジネスプランを発表した。
① 西おうみ 里山保健室ツアー
里山で企業向けウェルネス研修「西近江里山保健室ツアー」チームは、西近江地域の里山環境を活かした企業向けウェルネス研修プログラムを提案。農業体験や森林環境、地域交流を組み合わせ、ビジネスパーソンのレジリエンス向上と地域活性化を同時に目指す内容である。関西・中京圏の企業を主なターゲットとし、グランピング施設や農家との連携による体験型プログラムを構想した。
②ウェルネスシェアハウスYUZEN
台湾女性の長期滞在プログラム続いてYUZEN Wellness Living Labが発表されたのは、京都を拠点とした長期滞在型ウェルネスプログラム。台湾の人生後半世代の女性を主対象に、日本語学習や文化体験、ウェルネスアクティビティを組み合わせた1〜3か月の滞在モデルを提案した。観光以上・移住未満の滞在スタイルを通じて、日本の生活文化に触れながら人生後半の価値観を整えるという、新しいニーズに応えるウェルネスツーリズムの形を提示した。
③ またね信楽
土鍋体験による食のウェルネス信楽町神山地区を舞台にした「またね信楽」チームは、信楽焼の土鍋を使った食体験を中心とするウェルネスプログラムを発表した。古民家を拠点に、自家栽培野菜の収穫、土鍋料理、食卓体験を組み合わせ、日常の食を見直すことで暮らしの質を高める体験を提案した。将来的には旧製陶所の再生を通じて、信楽焼文化と食体験を融合した拠点づくりも構想している。
④ WELLNESS 巡礼 奥金勝OKUKONZE
経営者向けウェルネス巡礼栗東市奥金勝地域を舞台にした「ウェルネス巡礼奥金勝」チームは、中小企業経営者を対象とした1泊2日のウェルネスプログラムを提案した。登山や寺院での体験、焚き火を囲んだ対話などを通じて、経営者の意思決定疲れや孤独感を和らげることを目的とした企画で、自然環境の中で思考を整理し、コミュニティ形成につなげることを重視した内容となっている。
⑤ 発酵オカンプロジェクト
地域の「おかん」が伝える発酵文化長浜市木之本地域を舞台にした「発酵オカンプロジェクト」は、地域の家庭に受け継がれてきた発酵文化を体験型ツーリズムとして再編集する提案である。地域の女性たちから味噌や漬物づくりを学ぶ体験プログラムや、季節ごとの発酵食品を届ける「おかんの発酵便」などを構想。将来的には拠点となる「発酵ハウス」を整備し、発酵食づくりのワークショップを通じ、地域文化と人のつながりを育てる場づくりを目指す。
講座修了生ネットワークの広がりに期待
審査員からは「まず一歩踏み出すことの重要性」と「講座で生まれたネットワークの価値」が強調された。滋賀県観光振興局の高木和彦副局長は、滋賀県が観光振興に力を入れていることを紹介し、「2027年にはJRデスティネーションキャンペーンが予定されており、文化やスポーツとも連携した新しい観光の可能性を広げていきたい」と述べた。最優秀賞に信楽をテーマとした「またね信楽」、優秀賞に「ウェルネス巡礼奥金勝」が選ばれた。会場では講座修了生による活動紹介も行われた。ユニバーサルツーリズム、医療と旅行の連携、地域文化と観光の融合など、多様な分野からの実践が報告された。旅行会社、銀行、神社関係者、医療関係者など、さまざまな専門分野の参加者が講座を通じてネットワークを形成し、それぞれの現場でウェルネスツーリズムの実践を進めていることが紹介された。
最後に修了式が行われ、「滋賀大学ウェルネスツーリズムプロデューサー養成講座」を主宰し、審査委員長でもある同大学上田雄三郎特別招聘教授から受講生一人ひとりに修了証書が授与された。養成講座は7期目を迎え、地域資源を活かした観光人材育成の取り組みとして着実に成果を積み重ねている。今回の発表からも、自然、文化、暮らしをウェルネスの視点で再編集しようとする新しい観光の可能性が見えてきた。
JWM視点)
観光が「場所を見る旅」から「自分を整える旅」へと変化する中、地域の暮らしそのものがウェルネス資源として再評価され始めている。「地域の暮らしのリズムを体感」する旅。今回の発表は、滋賀という地域の自然・食・文化・精神といった地域の暮らしそのものをウェルネス資源として再編集する提案が並んだ。日本型ウェルネスツーリズムの可能性を示すものとなった。7年前にスタートしたウェルネスツーリズムプロデューサー養成講座は、ウェルネス感度の高いビジネス人材を輩出し続け、いま全国にそのプレーヤーのネットワークが出来ようとしている。
【執筆】 J-wellness media
『JWM(J-wellness media)』は、世界のウェルネスの潮流、日本の養生文化、そして社会と産業の視点を結びながら、日本のウェルネスの姿を編集し、発信するWEBメディアです。内容は、世界(世界のウェルネス動向、海外市場、Longevityなどグローバルな潮流)、文化(温泉、養生、食など、日本の生活文化に根ざしたウェルネス)、ビジネス(美容、健康、スポーツなど、ウェルネス産業のビジネス動向を分析)、地域(温泉地や地域資を活かしたウェルネスツーリズムや地域実践)、未来(AI、データヘルスなど、これからのウェルネスの可能性)など(運営:JWM)。
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