増えるマスク依存症、広がるマスク市場の実態を探る

街中を歩いていると、マスクをしている人が随分と目立つようになった。本来は感染症や花粉、喉の乾燥を防ぐことなどが目的だが、最近は他の理由からマスクを年中着用する人が増え、マスク依存症という言葉が誕生した。特に若者に顕著に見られ、訪日外国人が日本に遊びに来ると、マスクをしている日本人の多さに驚くという。「マスクをしていないと落ち着かない、安心感を得られる」場合はマスク依存症の可能性を否定できない。

広がるマスク依存症、その実態とは

マスク依存症とは?

マスク依存症とは、自分の顔をマスクで隠していないと落ち着かない状態を指す。本来のマスク着用の目的は、花粉症対策、風邪予防、喉の乾燥対策、各種感染症予防の対策、またはインフルエンザなどにかかった際に周囲へ移さないためのエチケットだが、マスク依存症の場合はそれらを目的としておらず、病気以外の理由でマスクを着用する。その場合は「伊達マスク」とも言う。

マスク依存が強い人は、学校や職場で食事をする時以外は常にマスクを着用しているため、本人がその不便さに悩むことも多い。ヤフー知恵袋には「マスク依存症」に関する相談が582件(2019年3月現在)で、中学生・高校生の投稿が目立つ。「鼻毛が出てるよ」「マスクしていればかわいいのにな」「顎が割れてるよ」「ニキビがすごいできてるね」など、主に男子が女子に対して人前で発した指摘が原因になっているケースが見受けられる。中には、花粉症の時期にマスクをずっと付けていたらそれが習慣になり、花粉症の時期が終わっても外せなくなってしまったという人も。

マスク依存症の人たちがマスクを付ける理由

マスク依存症は主に2つに分類される。

美容目的

女性に多いのは美容目的のマスク着用で、主な理由は以下。

  • すっぴんを隠す
  • 自分の口臭が気になるので口元を隠す
  • 就寝中の顔の乾燥対策
  • 外出中の紫外線対策
  •  小顔に見せたい

以下調査結果は「小顔に見せるために何か努力や工夫をしているか?」で「はい」と答えた人に対する質問で、「どんな努力や工夫をしているか」。「マスクで顔を隠す」が6位にランクイン。

不安感の解消

美容目的でマスクを着用する女性は以前からいたが、近年増えているのは、「対人関係における不安感の解消ツール」としてのマスク着用。

  • 人に顔を見られたくない
  • 顔にコンプレックスがある
  • マスクをする方が落ち着いて人と話せる
  • コミュニケーションに不安があるけどマスクをしていると安心できる
  • マスクを着用している方が自信を持って外出できる
  • 知人に会っても気づかれずにゆっくり買い物ができる
    (女性は美容意識が高く、他人から見られている意識が強い)

専門医らはマスク依存症の人たちの社会不安症(社会不安障害、社交不安障害、SAD)を指摘している。

「風邪予防や、保湿・すっぴん隠しなどの健康や美容目的以外で考えられる原因は、対人恐怖症や自己肯定感の低さです。マスクをすると表情がわからなくなり、何を考えているか判別しづらくなります。周囲に近寄りがたい印象を与えることで、他人と接することを拒絶できるのです。また、マスクを着けるとその人が誰なのかわかりにくくなります。自分に自信がなく、周囲から見られたくないと思っている人も、マスクで自分の存在を消すことで、他人の視線を避けられるのです」(略)

「マスクで顔が隠れると、自分と周囲の間に壁ができ、ある意味社会と隔絶されたことになります。自分だけの世界に閉じこもることができ、摩擦が起こりうる社会との関係性も薄れるので、落ち着けるのだと考えられます。さらに、マスクをしていると周囲から見られる箇所が減る一方、自分は視野を確保し、周囲の様子を慎重に観察できます。外部からのストレスを受けずに周囲を見渡せることも安心できる要因の一つでしょう」(引用:心療内科・メンタルクリニックのベスリクリニック「これからの季節気になる・・・「マスク依存症」」)

マスク依存症の実態

注目のきっかけは書籍発売

マスク依存症が注目されるようになったのは、書籍の発売がきっかけ。その後、新聞・雑誌・週刊誌・webメディアなどが取り上げるように。博報堂若者研究所の原田曜平さんが「近頃の若者はなぜダメなのか(2010年1月16日発売)」で「だてマスク」について取り上げた。

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」

2011年には「[だてマスク]依存症 ~無縁社会の入り口に立つ人々~」が発売された。精神科医・春日武彦さんとの対談も収録されており、「だてマスク」という現象の危険性について解説している。

[だてマスク]依存症 ~無縁社会の入り口に立つ人々~

NHKドキュメンタリーでは「自分を隠したい 広がる“マスク依存”」について放送(2017年2月1日)。マスク依存の若者らを取材。長い間マスクを外せなかったある24歳の女性は、取材期間中にマスクを外して外出できるようになった。

「きょうは(マスク)してないです。1か月くらいしてないですね。まだまだ“マスク外せないや”とか、“マスクしてくればよかった”と思うときも時々あるんですけど、自分の中で人と素顔で向き合うことに直面していこうと。」(引用:NHKニュースおはよう日本「自分を隠したい 広がる“マスク依存”」)

東京成徳大学臨床心理学研究からは「マスク着用行動の類型化に関する予備的研究 ~社交不安への対処に関する行動・安全確保行動~(志村圭祐、田中速)」が公開されている。

本研究では,マスクの着用動機を従来型マスク群(風邪対策,花粉症対策で装着する群),伊達マスク群(化粧の代わり,ファッションとしてマスクをする群)などに分類し,それぞれの群は社交不安や安全確保行動,公的自己意識等の特性に違いがあることを明らかにすることを目的とした。(引用:マスク着用行動の類型化に関する予備的研究 ~社交不安への対処に関する行動・安全確保行動~)

同研究は、調査を通して次のように考察している。

対人交流の不安や評価懸念が強いため他者からのフィードバックを重視し,他者から適切な評価を受けるためのスキルを身につける必要がある。さらに,マスク着用しなくても破局的な結果は起きず,他者から否定的な評価は受けないということを学習してもらうことが重要と考えられる。(引用:マスク着用行動の類型化に関する予備的研究 ~社交不安への対処に関する行動・安全確保行動~)

#マスク依存症のSNS投稿

「#マスク依存症」のツイッター投稿があり、マスク依存症の人が集っている。このハッシュタグをつけている人たちの投稿からは、社会不安や人との交流に心理的負担を抱えている様子がうかがえる。「#病み垢さんと繋がりたい」「#人格障害」「#うつ病」「#人間不信」「#対人恐怖症」「#ぼっち」などのタグがセットでつけられている投稿が目立つ。

マスク依存症の女性を主人公にした漫画が登場

マスク依存症の女性を主人公にした漫画も登場している。

校内一のブスと呼ばれた私たちはマスクがなければ生きられなかった―… 整形によって過去の自分を捨てて生まれ変わった理香子は、今もマスクを外すことができなかった。 そんなとき高校時代の唯一の友達である花絵と再会する。彼女もまたマスクに隠れながら高校生活を過ごしていたが5年ぶりに再会した花絵は素顔のまま明るく生きていた(引用:マスク依存症の女)

マスク依存症の女

マスクをつけたお見合いイベント

お笑いコンビ「ロンドンハーツ」の淳さんがプロデュースする「マスクdeお見合い」は参加者全員がマスクをつけてお見合いに参加する。「見た目にとらわれない、人柄重視の婚活」をテーマとした、今までにない内面重視の婚活サービス。マスクを着用するという心理的効果により、初対面でもリラックスして話せるのが人気の理由。

マスクニーズを受け、多機能なマスク続々

マスクニーズの高まりから、本来のマスクの目的以外の機能を持つマスクが続々登場している。マスク専門の通販サイトも。

  • 小顔に見せるマスク
  • 女子らしさをアピールするピンク色マスク
  • 黒マスク
  • スタッズ付きマスク
  • 100%完全遮光マスク
  • レース柄マスク
  • アニマルデザインマスク
    など

マスク依存症かどうかをチェックする方法

マスク依存症のチェックリスト

自分がマスク依存症かを確認したいニーズがあるようで、ネット上では「マスク依存症 チェック」で検索されている。以下はマスク依存症かどうかをチェックするリスト。

  • 風邪じゃなくてもマスクをつける時がある
  • お風呂、寝る時以外はほとんどマスクをしている
  • マスクをすると安心する
  • よく鏡をみる
  • 鼻や口、ニキビなどにコンプレックスがある
  • 人前でご飯をたべるのが苦痛
  • スポーツの時もマスクをする
  • 他人の顔のパーツをよく観察してしまう
  • SNSに投稿する写真は納得するまで何回も撮り直す
  • 夏にもマスクをつけることがある
  • SNS上でのキャラが普段と違う
    (引用:NICOLY「マスク女子必見! 知らないうちになっているマスク依存症の原因と解消法」)

マスク依存症は克服できる?治し方

マスク依存症は、10~20代と若い世代で特に多い。マスク依存を続けることで社会との壁を自ら高く作ることになり、最終的には引きこもりに陥る危険性もあるという。とはいえ、マスク依存症の人たちにとっては、安心した気持ちで社会とつながることができる必需品。必ずしもマスクを強制的に外すことが良策とは言えないが、マスク依存症を克服したいと思ったら、心療内科(社交不安障害)の受診やカウンセラーに相談してカウンセリングを受けるのも一つの解決策。

精神科医 渡辺登さん「ゆっくりゆっくり時間をかけて、人との温かい交流を増やしていくのがポイントだと思っています。そこで自信を高めていって、マスクを着けていかないで済む日を増やしていくんですね。まず一歩踏み出してもらえればと願っています。」(引用:NHKニュースおはよう日本「自分を隠したい 広がる“マスク依存”」)

 

社交不安障害の治療には、心理療法として「エクスポージャー法」というものを用います。これは、あえて不安な場面に直面し続けることで、その不安感を克服していく方法です。マスク依存症の方にも、同じような方法を用いることができます。このとき注意をするのは、たんにマスクを外すのではなく、自分が避けたいと思う場面にあえて挑戦することです。例えば、窓口でのクレーム対応、苦手な取引先との交渉、上司との会話、会議でのプレゼンテーションなどのときに、相手の顔をしっかりと見るということが大切になります。繰り返しこのような方法を実践することで、マスク依存症は必ず克服できます。(引用:AllAbout「増えているマスク依存症の深刻な問題と克服法」)

 

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