「暗い・辛い」だけじゃない「笑い、感動」も 女性の間で介護イメージに変化の兆し

介護といえば暗いイメージがあり、周囲に気軽に相談することができず「辛いこと」とネガティブに捉えられがち。しかし「人生100年時代」「健康志向」「少子高齢社会」「ダイバーシティ」といったキーワードや概念の浸透とともに、介護イメージも少しずつではあるがオープンにできるコトに変化しているようだ。

介護業界は人手不足問題を中心に課題は山積みだが、その一方で生活者自身は”ネガティブイメージ”からの脱却に動き出している。実際に、以下でご紹介する3事例では、多くの女性たちが「(失礼かなと思いつつ)笑ってしまった」「介護が怖くなくなった」「感動した」「涙しちゃった」「勇気が出た」「元気をもらった」とポジティブな影響を受けている。

事例1:介護に笑いのパワーを

両親の介護・看護を行う岡崎杏里さんは、介護の辛い日々をあるときから笑いのパワーに変えた。ブログ「続・笑いの介護」で情報発信している他、多数のメディアへの寄稿や連載も行っている。彼女の書籍やブログに勇気をもらう女性は多い。

笑う介護。

例2:涙あり笑いあり、「老いと介護」がテーマの演劇

「老人介護の現場に演劇の知恵を、演劇の現場に老人介護の深みを」をコンセプトに、介護現場・劇場などで市民向けの演劇ワークショップなどを実施するのが「『老いと演劇』OiBokkeShi」。笑いや感動要素が織り込まれているのが特徴で多方面で注目されている。年明け1月12日には「演劇を通じて、認知症の人が見ている世界や高齢者が歩んできた人生に想像力を働かせ、“いまここ”を共に楽しむコミュニケーションを追求する」ワークショップを早稲田大学で開催する。

例3:真面目になんかやってられない!介護は笑ってしまえ!

認知症の母と、その母を支える娘の章子さんが繰り広げる爆笑ドキュメンタリー映画「徘徊 ママリン87歳の夏」が、認知症のイメージを変える!と話題になったのは2015年。

今月13日には映画では伝えきれなかったこと、ひとりで介護することの大変さ、これからやってくる自身の老いについてなどをつづった「認知症がやってきた!〜ママリンとおひとりさまの私の12年〜」が発売された。介護をポジティブに捉える章子さんの様子がうかがえる。

認知症がやってきた! 〜ママリンとおひとりさまの私の12年〜

3,000kmにもわたったすさまじい徘徊

章子さんは、大阪、北浜でギャラリーを営むおひとりさま。趣味や仕事を気ままに楽しむ暮らしを送っていましたが、ある日、奈良に一人で住む母が認知症になったと知り、大阪の自宅マンションに引き取ります。母80歳、章子さん48歳の時でした。そこから、章子さんの人生は一変、すさまじい生活が始まります。母は普通に会話ができて物わかりのいい時もあれば、急にスイッチが入り「帰せぇ!家に帰せぇ!」とわめき、暴言・暴力を繰り返す。そんな生活に、章子さんは「私の人生は終わった」というほど疲弊していきます。中でも、どうにもならなかったのが、7年間、昼夜問わずほぼ毎日続いたという徘徊。「80代とは思えぬ健脚とド根性」で、総徘徊距離は3,000km以上、日本列島縦断に匹敵するほどにもなりました。

*ママリン徘徊の記録
【家出回数】約2,340回【徘徊距離】3,000km以上
【最長徘徊時間】12時間/1日、【最長徘徊距離】15km/1日

家に閉じこもることをやめ、母と共に街に出た

外出したがる母を止めると、ドアをドンドンと殴り、暴れる。危ないからと言っても、逆ギレされる。不毛な応酬に疲れた章子さんは、ある時、何かが吹っ切れます。母を街に解き放ち、自身はそっと後を追い、つかず離れずの距離から見守ることにしたのです。大都会、大阪の街を徘徊する母と、その様子を後ろから見守る章子さん。二人の追いかけっこの様子は近所でもお馴染みになり、次第に地域の人が気にかけ、時には助けてくれるようになっていきました。徘徊が長引いた時は、どんなに母が帰りたがっても自分への慰労としてバーで一杯。店主や常連に母を紹介すると、最初は嫌がっていた母も楽し気な店の雰囲気に慣れ、「なあ、あこちゃん、こういう店も美味しいね」と、都々逸(どどいつ)を唄い出すなど楽しそうにしたと言います。(映画「徘徊~ママリン87歳の夏~」(監督:田中幸夫)より映画「徘徊~ママリン87歳の夏~」(監督:田中幸夫)より)

プラマイゼロの10年という考え方

いつまで続くかわからない介護生活に、気分が暗澹とすることもあった。「母親にも、わきめもふらず子育てに没頭していた時期があったはず」10年子育てしてもらい、今度は10年、私が母の面倒を見るーーそう考えられた時、出口の見えない介護に覚悟が生まれたと語ります。

迷惑をかけない生き方は、しんどいかも。「ありがとう」が言えれば、それでいい

徘徊時、迷子になると、電話中やデート中だろうと、ところかまわず人足を止めては道を聞く母の行動は迷惑だとしか思えなかった。しかしある時、道を聞かれた人は、人の助けになっている気持ちからか、どこか嬉しそうなことに気づいた。「ママのことを無視したり追い払ったりする人は皆無だった」少し視点を変えると、人が人に親切にする姿、一期一会の善意に出会うことができたと振り返ります。(映画「徘徊~ママリン87歳の夏~」(監督:田中幸夫)より映画「徘徊~ママリン87歳の夏~」(監督:田中幸夫)より)

認知症の勝ち組になったママリン

2018年秋、ママリンは91歳になり、章子さんは59歳になりました。母は着替えや歩行など、自分でできることが少しずつ無くなっていますが、徘徊はすっかり終わり、大好物のあんぱんを毎日楽しみに「過去や未来を憂うこともなく、悩みも不安もなく」、「今、今、今をご機嫌に穏やかに」という平和な境地で暮らしています。

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