女性のライフコースアプローチとは? 健康施策の基盤として国内外で本格始動

女性のライフコースに起因する健康課題やライフコースに沿った健康支援への関心が、急速に高まる気配だ。いわゆる「ライフコースアプローチ」で、感度の高い各業界のマーケターが2010年代に女性マーケティングの指針としていた「ライフコースマーケティング」の復権とも言える動き。今回はヘルスケア業界に限定した広がりになるとみられるが、販促やPRのみならず研究開発のセクションも関心を寄せるのが当時との違い。昨今話題のPHRとの相性が良いことからも、業界人の関心は加速度的に高まりそうだ。2024年度は、ライフコースアプローチのコンセプトに沿ったヘルスケア製品・サービスの登場や、新たなマーケティング手法としての広まりが期待される。

※本稿は、2024年5月に当社が発行した「女性ヘルスケア白書2024」のp.56〜63でご紹介している内容の一部を編集して掲載しています。本稿に掲載の情報や画像は2024年5月時点となります。女性ヘルスケア市場の最新動向がわかる「女性ヘルスケア白書2024(最新版)」の詳細・お申し込みはこちら。

ライフコースアプローチとは?

ライフコースアプローチとは、胎児期・幼少期・思春期・青年期・壮年期・高齢期に至る生涯の健康を経時的に捉え、人生の各ライフステージで抱える健康課題を解決したり、将来の健康のために病気予防を行うことを指す。健康状態や病気のリスクは、“現在”だけではなく“過去”の生活習慣や環境が大きく関係しているため(図34)、的確な健康支援により病気を予防する方法として、“点”ではなく“線”で健康状態を捉えるライフコースアプローチの考え方が注目されている。

女性の社会進出や育児・介護との両立など、生き方・働き方の多様化による新たな健康課題が生まれていること、また、人生100年時代の到来による社会課題の増幅や多様な健康ニーズが顕在化していることも、ライフコースアプローチの必要性が高まっている理由で、特定の集団や個々の特性をより重視するヘルスケアのあり方を実践する上で、重要な役割を担う概念になる。

現時点では、エビデンス構築に向けたライフコースアプローチの研究がアカデミアを中心に行われているが、過去の生活習慣や環境は、現在や将来の健康行動や健康消費の意思決定にも影響することから、今後はヘルスケアマーケティングへの応用に向けた企業による研究も活発化するだろう。なおライフコースアプローチは、女性マーケティングの指針としてさまざまな業種のマーケターが’10年代に採用していた「ライフコースマーケティング」と同様の考え方になる。ライフコースアプローチはその“ヘルスケアビジネス特化版”と考えると、理解しやすいかもしれない。

ライフコースアプローチ視点で浮かび上がる女性の健康課題

【出典】女性ヘルスケア白書2024(ウーマンズ作成)

 

WHOや国の健康施策、基盤は「ライフコースアプローチ」

ライフコースアプローチは世界的に採用されている考え方で、WHOや国も健康施策の基盤に据えている。国内においては’24年度から運用が始まった「健康日本21(第三次)」の中で言及されたことで認知が広がった詳細。健康日本21は国が主導する国民健康づくり運動で、’00年に始まった。第三次となる今回は’24年から’35年までの12年間の健康施策の基盤として機能する。

今回の目標設定にあたっては、第二次で残された課題を踏まえ、性差と年齢とライフコースを加味した健康づくりの必要性からライフコースアプローチの視点が重視され、幼児期・思春期の健康状態や生活習慣が成人期の健康に影響すること、妊婦の健康状態や生活習慣が胎児の健康に影響すること、若年期の健康行動が高齢期の健康に影響すること、高齢期の行動が介護予防につながることなどにも言及した。

今後の12年間において特に強化される一つは女性の健康づくり。女性は生理・妊娠・更年期・閉経時に女性ホルモンの影響を受けることから、各ライフステージごとの対策が必要であり、また、自身の健康が次世代の健康にも影響することから、重点目標として今回初めて女性を切り出した目標設定がされた。

健康日本21(第三次)が重視する「ライフコースアプローチ」のコンセプトは各ガイドラインにも反映され、’24年度に改訂された「健康づくりのための睡眠ガイド2023詳細」「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン詳細」「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023詳細」においても、女性のライフコースアプローチを踏まえた指針が明記された。今後、国・自治体をはじめ各所でライフコースアプローチを重視した情報発信がされるとみられ、概念そのものも女性生活者の間で広がっていくだろう。

 

ライフコースアプローチ視点を事業に取り入れるメリット

ライフコースアプローチ視点を、製品・サービス開発に取り入れるメリットとは何なのか?詳細は本稿の全文を掲載している「女性ヘルスケア白書2024」でご紹介。その他、女性ヘルスケアビジネスに役立つ情報が満載。統計から見る女性の需要が大きい85の不調・疾患、女性ヘルスケア市場で今期待の有望領域、国が強化している健康施策一覧、女性の健康行動を促進する企業の販促事例、業界の開発トレンドやマーケティングトレンドを、豊富な図版とデータで詳説しています。貴社の女性ヘルスケアビジネスの推進に、ぜひお役立てください。

 

 

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