ママ市場のマーケティング基礎知識・ニーズ・消費のツボ(1/5)
ママ市場ブーム到来と言っても良いほど、今、社会や企業はママに熱い視線を寄せている。「働くママの増加」「女性活躍推進」により、消費パワーを持ったママ市場は活性化し、多くの企業がママをターゲットにした商品開発・サービス開発を行っている。
今やシニア女性市場と同等にママは企業にとっての人気クラスターだ。子育て中のママは節約上手・コスパ重視型消費である一方で、消費は旺盛。特に20~40代前半にあたるママは、教育費、自動車購入、自宅購入、家族の被服購入などに積極的で、さらには子どもに関する情報収集や情報交換を欠かさないため、口コミパワーも他クラスターより強い。
ママの心を掴むために、理解しておきたい近年のママ市場動向と、ママ・マーケティングのコツを確認しておこう。
目次
ママ・マーケティングの基礎知識
近年のママ市場における大きな変化は、「ママになる平均年齢」「子の数(夫婦の最終的な平均出生子ども数)」「専業主婦の減少と働く女性の増加」の3要素。
1.最近のママになる平均年齢
働く女性の増加や価値観の多様化などで、ママになる年齢は近年上昇傾向にあり、30代でママになる女性が増えている。
- 第1子出生時のママの平均年齢は、1975年は25.7歳
- 2011年で初めて30歳を超え30.1歳に
- 2016年はさらに上がって30.7歳
参考:内閣府「平成30年版 少子化社会対策白書」
2.子どもの人数
- 全国の合計特殊出生率は第1次ベビーブーム期には4.3を超えていた
- 2016年は1.44にまで低下
- 都道府県別に見ると差が見られ、最も低いのは東京で1.24、最も高いのは沖縄県で1.95
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3.共働き世帯増加、出産後も働き続ける女性増加
共働き世帯は増加している反面、夫のみ就労世帯は減少。
出産を機に退職をするママが減り、出産後も働き続ける女性が増加。とりわけ育児休業を利用して働き続ける女性が増えている。
4.ママのクラスター例
ママの働き方・生き方はさまざまで、例えば次のようなライフコースを選択している。
【例1】出産を機に退職、専業主婦
基本は専業主婦だが、個人事業主としてサロン主宰、投資、フリーランス、フリマアプリなどでちょっとした収入を得ているケースもある。女性の労働力率で描かれるいわゆる ” M字カーブ ” の底になる年齢階級は、平成18年と平成27年では30〜34歳だったが、平成28年では上昇し底が35〜39歳となった(厚生労働省「平成28年版 働く女性の実情」)。晩婚化・晩産化の影響で、30代後半で離職する女性の割合が増えたことが影響か。
【例2】復職予定ママ
出産を機に退職し専業主婦になったが、子どもが大きくなったら復職を予定しているママ。一度離職して専業主婦になると、正社員としての再就職はなかなか難しいという日本企業独特の現状もあり、パートで復職するケースが多い。時間の融通が利くという利点から、あえて正社員ではなくパートを選択するママも。復職には以下のように悩む女性も多い。
生活に困っているわけではない。条件に合う仕事をじっくり探そうと思っていた。だがハローワークに登録してみると、自分の認識が甘かったとすぐに気付いた。じっくり探すも何も、もうすぐ50歳になる専業主婦に関心を持つ企業はなかった。仕事を選ばなければ働き口はある。接客・販売や介護の求人は年齢不問で応募できる。特に介護業界やスーパーマーケットなど小売業は「未経験、主婦関係」を掲げる求人も多かった。でも特別興味がある仕事でもない。ハローワークで相談すると、「20年のブランクがあると雇う側も採用をためらいます(略)」と助言された。(引用:「働く女性ほんとの格差(石塚由紀夫)」pp.162-163)
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【例3】育児休業を利用する継続就業ママ
正社員に多い。子どもを保育園に入れ、復帰後は家事・育児と仕事を両立。
【例4】育児休業を利用せずに継続就業ママ
正社員・非正規社員にかかわらず、「近くに親・義親がいる」「夫が協力的」「職場が協力的、あるいは制度が充実している」など、サポート環境が整っているママの中には「キャリアを中断させたくない」などの理由から育児休業を利用せずに継続就業の選択をする人もいる。同じ「働くママ」でも、“ サポート環境 ” による差は大きく、以下のように悩む女性も。
「『実家が近ければ』『夫がもっと協力的ならば』って何度も考えます」。実家は遠く、おいそれと頼れない。夫は毎朝の保育所への送りが精いっぱいだ。「会社に出産後もバリバリ働いているワーキングマザーが何人かいます。でも彼女たちは実家が近いか、夫が育児に熱心なイクメン。我が家とは環境が違います」とため息をつく。(引用:「働く女性ほんとの格差(石塚由紀夫)」p.99)
なお、ママのクラスター例として上記に4例あげたが、女性マーケティング専門会社である当社ウーマンズの分析では、20~70代女性は20クラスターに分類され、そのうち「現役ママ・子独立型ママ」の両方を含めてママには13タイプがいることが分かっている。ママのクラスターについて詳細は「20~70代の中間層女性・富裕層女性のクラスター」に掲載。
可処分所得比較、共働き世帯と専業主婦世帯
お金事情に違いはあるのか?「共働き世帯」と「専業主婦世帯」の「可処分所得」と「実支出」を比較すると前者で¥97,463、後者で¥50,768の差がある(平成26年全国消費実態調査)。
- <共働き世帯(子有、子無し両方含む)>
・平均可処分所得は¥452,183
・実支出は¥432,131 - <専業主婦世帯(子有、子無し両方含む)>
・平均可処分所得は¥354,720
・平均実支出は¥381,363