グッドデザイン賞は学びがいっぱい!2021年の最新デザインから学ぶ商品・サービスの開発ポイント

今年もグッドデザイン賞発表の季節がやってきた。2021年の大賞を受賞したのは今をときめくベンチャー、オリィ研究所の遠隔操作ができる分身ロボットと、分身ロボットを活用したサービス。他、各社の受賞デザインを見たところビジネストレンドを反映したものが多く、時代の潮流を感じる結果に。健康、医療、介護、美容などヘルスケア関連の商品・デザインも数多く受賞している。さて読者の皆さんは、受賞デザインを一つずつチェックしたことがあるだろうか?受賞数が多く情報量も多いため、隅々まで毎年じっくり読み込んでいる人は少ないかもしれない。でも実は各受賞デザインの詳細ページには、商品・サービス開発のアイディアがてんこ盛り。ビジネストレンド、UX/UI、今時の世界観作り、着眼点など、学べることがたくさんある。新商品・新サービスの開発に迷った時の参考書として、頼ってみてはいかが?

グットデザイン賞とは?

グッドデザイン賞(Gマーク制度)は暮らしや社会をより豊かにする優れたデザインを表彰する、日本唯一の総合的デザイン評価・推奨制度。1957年に通商産業省によって創立された「グッドデザイン商品選定制度」を(財)日本産業デザイン振興会(現<公財>日本デザイン振興会)が承継し、1998年に新たに始まった。その受賞マークが、円の中にアルファベットの「G」が白抜きされた「Gマーク」。見かけたことがある人は多いだろう。

グッドデザイン賞は単に美しさを競うデザインコンペではない。優れたデザインを社会に普及させていくことで、人々の生活をより豊かにし、同時に産業の発展を後押しすることを目的にしている。よって評価・顕彰の対象は幅広く、”形”の有無は問わない。雑貨、食品、美容家電、ヘルスケア機器、施設、公園、アプリ、ウェブサービス、ビジネスモデルなど、多様なモノ・コトを対象にしている。

 

8割の認知、生活者のGマークのイメージは?

グッドデザイン賞を受賞したモノ・コトに与えられる「Gマーク」は生活者の間で広く認知されており、日本デザイン振興会が行なった調査によると8割近くが「知っている」と回答している(「良いデザインとして選ばれた証のマークであることを知っている(59.0%)」と「意味は良く知らないが、そのマークは知っている(22.0%)」の計,グッドデザイン賞認知率調査,2020年2月,15〜65歳以上の男女)

かなり広く認知されているが、では、Gマークがついた商品・サービスに対し生活者はどのようなイメージを持っているのか。「Gマークのイメージは?」と聞いたところ(複数回答)、次の結果に。Gマークによるブランディング効果は大きそうだ。

  • 1位:魅力的なかたち・外観をしている(68.7%)
  • 2位:機能・性能が優れている(57.9%)
  • 3位:品質がよい(37.7%)
  • 4位:使いやすい(28.6%)
  • 5位:時代をリードしている(24.2%)
  • 6位:安全である(23.1%)
  • 7位:生活者のニーズに応えている(20.2%)
  • 8位:環境に配慮している(13.1%)
  • 9位:その他(1.2%)

 

2021年の大賞受賞デザイン、評価ポイントは?

2021年のグッドデザイン賞は10月〜11月にかけて以下の各部門で発表された。

  • <グッドデザイン大賞>
    グッドデザイン賞の審査において高く評価され、かつ多くの生活者から支持を得たデザイン
  • <グットデザイン金賞>
    社会の課題に対する取り組みとしての内容、将来に向けた提案性や完成度の高さなど、総合的な観点から、グッドデザイン賞審査委員会が今年度もっとも優れていると評価したデザイン
  • <グッドフォーカス賞(新ビジネス)
    新たなビジネスモデルや新産業の創出、イノベーションの促進に寄与する優れたデザイン
  • <グッドフォーカス賞(技術・伝承)
    高度な技術や技能によって実現された、特に優れたデザイン
  • <グッドフォーカス賞(地域社会)
    地域社会の持続的発展や経済の活性化に特に寄与するデザイン
  • <グッドフォーカス賞(防災・復興)
    自然災害への防備または自然災害による被害からの復興に寄与する優れたデザイン

頂点のグッドデザイン大賞に輝いたのは、ロボット開発を手がける株式会社オリィ研究所。同社が開発・デザイン・構築した以下3つが受賞を果たした。

  • 年齢・性・障害の有無に関わらず遠隔で操作できる分身ロボット(OriHime/OriHime-D)の開発
  • その分身ロボットを活用して就労・来店できるロボットカフェ(分身ロボットカフェDAWN)の店舗デザイン
  • 遠隔就労人材紹介サービス (AVATAR GULD)の構築

 

【出典】オリィ研究所(分身ロボットカフェDAWN

 

ロボットそのものの開発力はもちろん、「高齢社会」「介護」「寝たきり」「障害と就労」といった社会課題に即した事業モデルやUXが高く評価された。以下は審査委員長の評価コメント。

分身ロボットの開発を中心に、テクノロジーおよびUXにより就労希望者の「障害」を取り除く画期的な事業。実際に訪れると、ロボットに接客されるのではなく、その奥にいる人に接客されている体感が持てるようデザインされていることがわかる。つまり、ロボットを操縦するパイロットを障害者でもできるように設計されている、ということでなく、ロボットをメディアとして障害のある人との生々しい接点がデザインされていることに強い意義を感じる。また、カフェが企業との採用マッチングの場および社会経験の少ない障害者の就業訓練の場としての役割を併せ持ち、実際に一般企業での恒常的な就労に繋がる事例もすでに多く実現している点も高く評価できる。カフェ自体の国内外での展開もさることながら、ここを起点に、さまざまな障害を抱える就労希望者と一般企業、そして消費者との接点がさらに広がっていくことを期待する。引用:GOOD DESIGN AWARD

 

同社の具体的な取り組み、ロボットの特徴、成果などの詳細は以下の動画より視聴可(グッドデザイン賞選考時の同社のプレゼン動画)

 

受賞デザインから学ぶ、商品・サービスの開発ポイント

他、受賞したモノ・コトはヘルスケア関連の商品・サービスも多く、医療・健康・理美容・介護・感染対策関連の機器やサービス、オフィス、アプリ、食品など実に多様。具体的には例えばこんなモノ。

  • ネッククーラー
  • カミソリ
  • マスク
  • 膝サポーター
  • パーソナライズ・セルフケア入浴剤
  • 頭皮マッサージャー
  • フットマッサージ機
  • 家庭用尿検査装置
  • 口腔洗浄器
  • スマート電動歯ブラシ
  • 化粧水
  • 美顔器
  • 医療機関で使用する患者チェア、診察用デスク
  • 経腸栄養注入セット
  • 心肺蘇生訓練キット
  • 介護用ベッド
  • 半固形・とろみ流動食
  • ウイルス検査用キットパッケージ
  • 消毒液スタンド
  • エレベータ用非接触ボタン

メーカーは大手からベンチャーまで、事業規模も様々。各受賞デザインの評価ポイントを見ると、デザイン、ユーザビリティ、性能はもちろんのこと、UD(ユニーバーサルデザイン)への配慮、ジェンダーニュートラル、環境配慮、サステナブルなど昨今のビジネストレンドの反映が評されている。

受賞デザインは全てグッドデザインアワードHP内に掲載されており、デザインのポイントや開発背景などが詳細に書かれているので、興味のあるジャンルをチェックしてみては?生活者のどんなニーズ・不便・不満・我慢に目をつけたのか?飽和市場の領域で何に商機を見出したのか?開発にどんな工夫を仕掛けたのか?どのようにブランディングをしているのか?などを読み取れる。

最後に実際の受賞デザインを見てみよう。女性向け商品の中でも特に着眼点が参考になる事例をご紹介。ストッキングのアツギ(神奈川・海老名が開発したストッキングのパッケージと、靴製造の村井(東京・豊島)が開発した産前・産後特化のインソールの2事例をピックアップした。

■ストッキングのパッケージ(アツギ)

アツギが受賞した商品はストッキングそのものではなくパッケージの方で、従来のパッケージで消費者が感じていた不便・不満に着目したデザイン設計が特徴。環境やジェンダーに配慮した点も、時流を反映しており今ドキ。詳細は以下。

受賞対象名 ストッキングのコンパクトパッケージ [アスティーグ]
概要 多くの女性達の脚もとを支え続けてきたストッキングの、パッケージに変革を起こします。開け口を破ればすぐにストッキングを取り出せて、はく前に商品を伝線させることがありません。紙素材の封筒型パッケージを採用し環境にも配慮しました。この形がこれからのスタンダード。迷いなくストレスなく。あなたの朝はもっと自由になる。
デザインの
ポイント
1.紙製パッケージ化することにより、外袋におけるプラスチック使用量と重量を軽減することに成功しました。
2.パッケージ上部を破いて商品を取り出すことで、はく前からストッキングを伝線させることはありません。
3.漢字一文字で商品のコンセプトを伝えます。シンプルに伝える事で視認性を高める効果を図っています。
背景 既存のパッケージに類をみない、新しい視点で着手することに注力しました。従来プラスチックの外袋を使用してきましたが、紙製パッケージ開発に着手し、外袋の紙化に成功しました。それにより、従来品と比較して大幅なプラスチック削減量を見込んでいます。また、SDGsのうちジェンダー平等の観点から、ストッキングの特性を生かしながらも、女性の脚と明確に分かる生々しい表現を極力避け、モノクロの脚写真を前面に配置しました。これにより、性別・性自認を問わずストッキングを購入したいすべての方が、手に取りやすいようにしています。
経緯と成果 従来のストッキングのパッケージには、プラスチック袋、プラスチックフック、セロハンテープ、合紙、中台紙を使用してきました。商品をお客様のお手元に渡るまで、ストッキングを守る役割を担っていたからです。一方で、商品を取り出すときに過剰包装で取り出しにくい、こんなに沢山の資材は不要だ、というお声を頂戴してきました。これまでは商品を袋から取り出し、はじめて生地に触るまで「おおよそ6工程(①1本目のセロテープをはがす②2本目のセロテープをはがす③袋を開ける④合紙を取り出す⑤合紙を開く⑥生地を取り出す)」を踏んで初めて商品に触れることが出来ました。 しかし、今回の紙素材をベースとした外袋では、「おおよそ2工程(①袋の上部を開ける②商品を取り出す)」で商品を手にすることが出来ます。 圧倒的な時間短縮となり、商品を伝線させることがなく、着用までスムーズな動作が可能です。
審査委員の
評価
従来のストッキングのパッケージは、プラスチック袋、プラスチックフック、セロハンテープ、合紙、中台紙で構成されており、資材が多く複雑な物が主流です。そんな中、大手メーカーが率先してプラスチックの使用量を大幅に減らし、紙パッケージに移行することは大変意義があると感じました。SDGsという言葉が一般化してきている今、パッケージデザインでの環境配慮は、その企業への親近感や信頼につながります。今後追随してくるメーカーが増えるのではないかと思わせてくれる良いデザインだと思いました。

■産前・産後用インソール(村井)

靴の製造・販売の村井が受賞したのは、産前・産後の女性に特化したインソール。産婦人科ではマイナートラブルとして分類され放置されている産前産後の骨格の弛みに着目し、女性特有の健康問題にインソールからアプローチする。フェムテックへの社会的関心が高まっている今、着眼点が参考になる事例。

受賞
対象名
インソール [出産応援インソール (産前用/産後用)]
概要 産前産後の女性の足・腰・膝を守り、健康を維持するインソールです。出産に備えて全身の骨格の弛みトラブル(弛緩性障害)が多いことに着目し、産前用は足・腰・膝のトラブルケア、産後用は足の基本骨格を理想的な状態にすることを目的としています。また通常の歩行にも対応し、健康維持も期待できます。
デザインの
ポイント
1.足裏の骨格の崩れを防ぎ、出産に備えた骨格の弛みや体重増加による筋肉の負担(疲れ)を軽減(産前/産後)
2.踵の独自形状が、背中の反り返りを防ぎ、また左右振れ歩行を補正し股関節周囲や腰回りの負担を軽減(産前)
3.踵部の衝撃吸収材が歩行時の衝撃を吸収してお腹や足へのショックを緩和(産前/産後)
背景 産前産後は女性ホルモンの働きで各関節の結合が弛み、足や腰など体重増加の負担を受ける部分の骨格が崩れ、扁平足、腰痛、膝痛などのトラブルが多くなります。各関節の結合の弛みは一過性であるが、この時期に骨格が崩れてしまうと元の状態に戻ることは難しく、その後の生活にも悪影響を与えてしまいます。しかし、産婦人科では「マイナートラブル」と分類され、放置されているのが現状です。当事者も痛みがあるのにも関わらず「妊娠したのだから仕方がない」と我慢してしまっています。弊社はこうした声に応えるべく、産前産後それぞれに適したデザインのインソールを活用することで、妊娠、出産、その後の育児を足もとからサポートすることができないかと考えました。そこで、「ママになる人とママになった人の足を守る」をコンセプトに研究を行い、本製品を開発しました。
経緯と成果 産前は、出産に備えて、女性ホルモンの作用により全身の骨格が弛みます。特に足は骨格が弛むことに加えて体重増加もあり、筋肉に負担がかかり疲れやすくなるため、足の基本骨格を保持する3アーチをサポートすることで、足裏の骨格の崩れを防ぎ、筋肉の負担を軽くします。また、お腹が大きくなると、左右の歩隔(間隔)が広くなるため、歩行時に身体が左右に振れたり、背中が反り返るような姿勢になるため、踵の外側を高くすることで外側に重心が振れるのを防ぎ、股関節周囲や腰回りの負担を軽くし、爪先より踵を高くすることで、後方へ崩れやすい姿勢をバランス良くするようにサポート。さらに、体重が増え、踵が痛くなるため、衝撃吸収材を踵部に使用することで、歩行時の衝撃を吸収してお腹や足へのショックを和らげます。産後は、骨格の弛みは継続するが運動量が増加するため、やや硬めの3アーチパッドが足の骨格を支え、理想的な状態に保ちます。
審査委員の
評価
産前産後の身体の変化による不調は多くの妊婦の悩みであるが、体重増加に伴う足腰への負担をインソールから解決するという視点に驚かされた。この時期に現れる個人ごとに異なる変化は産婦人科でもマイナートラブルとして捉えられるケースも多いため、表出しにくい悩みをヒアリングを通して丁寧に掬いあげ取り組む姿勢が評価された。長年、靴部品の製造により培われた知識や技術により信頼を得ている企業が、ターゲットを絞ることでより高次元な満足度を提供している。世の中に認識されにくかった産前産後の方々が持つ悩みに光をあて、これから出産を予定している人々をも足元から支えることが大いに期待された。

 

 

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