女性ヘルスケアビジネス専門のニュースレター登録
女性ヘルスケアビジネス専門のニュースレター登録

パナソニックが「フェムテック」の表現を避けた狙いは? 生理系デバイスを美容事業に位置付け本格展開

パナソニックの美容家電ブランド「パナソニックビューティ」は今月2日、美容事業の拡大に向けインナーケア領域への本格参入を発表した。これまでパナソニックビューティは「ヘアケア」「フェイスケア」「ボディケア」の3領域で美容事業を展開してきたが、新たに「インナーケア」を追加する。

【撮影】ウーマンズラボ編集部(Panasonic Beauty OMOTESANDO内で行われた発表会で、マーケティング担当の井上貴美子氏がRizMoを紹介)

 

第一弾は、ショーツに装着するウェアラブルデバイスとアプリで構成される、女性の体調ナビゲーションサービス「RizMo(リズモ)」。月経リズムに連動する女性の温度変化と睡眠状態をもとに心身の健康状態を分析・予測するもので、アプリ上でデータを確認したり、その時々で生じる不調に適したアドバイスを得られる。温度と睡眠を同時に計測する家電は、国内初。

月経リズムに伴う温度変化を把握する方法としては、基礎体温計を用いた舌下での計測が一般的だが、起床時に安静な状態を保ちながら測定が終わるのを待つ必要があり、手間がかかる。計測そのものを忘れてしまうことも。だが、RizMoは就寝中にショーツに装着するだけと手軽なので、計測忘れは起きづらい。女性の継続的な健康習慣を、ストレスフリーでサポートする。

 

【撮影】ウーマンズラボ編集部(右のウェアラブルデバイスを就寝前にショーツに装着。寝ている間に自動で衣服内温度と睡眠のデータを計測する。起床後はウェアラブルデバイスからアプリへ、データをワンタッチで転送)

 

同社が指す「インナーケア」とは、体の内側から美容をサポートするケアのこと。既存領域の「ヘアケア」「フェイスケア」「ボディケア」では外側からの美容をサポートしてきたが、RizMoを皮切りに、体内からもアプローチできる製品・サービスを展開していきたい狙いがある。

今年3月の技術発表では、同社初の”フェムテック”を開発するとして搭載技術の説明が行われたが、製品完成を知らせる今回の発表では、RizMoをフェムテックとして前面に打ち出すことはせず、美容事業に位置付けた上で、同社初の”インナーケア製品”とした。その意図についてビューティ国内マーケティング課主幹の井上貴美子氏は、「フェムテックやフェムケアは、特定の領域がイメージされやすい。もちろん、一般的にイメージされる領域(生理・妊娠・更年期などの性・生殖領域)でも製品・サービスを展開していきたいが、今後、健康・美容全般を幅広くサポートできるようにしていきたいとの考えから、新領域の名称は”インナーケア”とした」。ビジネスユニット長の中村正治氏は、「”インナーケア”としたのは、松下電工の時代から掲げてきた『内健外美(内側の健康と外側の美しさはつながっている)』の考えを反映したものでもある」と述べた。

同社が美容家電事業に参入したのは、1937年。以来88年にわたり美容訴求の研究・開発を続けており、インナーケア領域への参入にあたって強みとしたのは、長きにわたり積み重ねてきた技術や特許、小型薄型化ナレッジ。今回発表したRizMoに続くインナーケア領域第二弾の製品・サービスは未定だが、中村氏は「家電や既存のビジネスにとらわれずに、さまざまな可能性を探っていきたい」としている。また、過熱気味だったフェムテック・フェムケアのブームが一段落し、先行各社による販売の伸び悩みや事業撤退も散見されている状況については、「この数年で徐々にわかってきたフェムテック市場の課題も踏まえながら、この事業をしっかり育てていきたい」と意気込みを語った。

当面、インナーケア領域ではRizMoを着実に育てることに集中し、3年でユーザー20万人を目指すとしている。美容家電ブランドとして既に高い支持を得ているパナソニックビューティのブランド力が、RizMoの認知拡大やユーザー数の押し上げに大きく寄与すると期待されるが、生理・睡眠関連の体調管理デバイスとしては市場で後発となる上に、フリーミアムアプリとは異なり完全有料型での提供となる中、どこまでユーザーを伸ばせるのか?同社の今後のマーケティング戦略にも注目が集まる。

本格的なサービス展開は10月10日から。サブスクリプション形式で、初期契約は5,500円(税込)、その後の月額利用料は500円(税込)。企業・自治体への提供や連携も視野に入れており、今後検討を進めていきたいとしている。

 

 

女性ヘルスケアビジネスの戦略ハンドブック2025

女性ヘルスケアビジネスのマーケティング設計にあたり必須の基礎知識を多角的な視点から解説する、大人気の業界入門書。初めて女性ヘルスケアビジネスに従事する業界初心者、改めて理解を深めたい中級者、自社製品・サービス・戦略のどこに課題があるのか分からず対策に悩んでる担当者におすすめ!貴社事業の発展に、ぜひ本レポートをご活用ください。詳細・レポートのお申し込みはこちら女性ヘルスケアビジネス戦略ハンドブック2025(リサイズ)

 

 

【編集部おすすめ記事】
パナソニック、フェムテック事業に新規参入 月経周期の把握技術を発表
フェムテック・フェムケア、次のポテンシャルは「対処」と「予防」の両輪
フェムテックもステルス化、行動変容不要の最新のヘルスケア事例3選
フェムテック&フェムケア市場は一服感、カテゴリー別の動向
売れるフェムテックの「開発」と「販売戦略」 17の障壁と対策

PAGE TOP
×