フェムテック事業って実際どうなの? 市場分析レポート発行の背景 ウーマンズ

当社ウーマンズはこれまで、女性ヘルスケア領域のシンクタンクとして、市場で起きたさまざまな流行を見てきましたが、フェムテックは、他とは比にならない異質な盛り上がり方をしていると感じています。生理の貧困や男女間の健康格差といった社会課題が起点になっていること、生理・不妊・性・更年期などこれまでのタブーを打ち破ろうとする社会的メッセージ性がフェミニズムと連動していること、また、海外の優れたプロダクトデザインや新進気鋭の女性起業家への注目など、複数の要因が絡み合って、“フェムテック”そのものの概念が強烈にブランディングされたことが背景にあると見ています。

国内外の各調査では、フェムテック市場は今後堅調に拡大していくとの見方が強いですが、各フェムテック事業者の現場の声を聞いている限りでは、このままでは国内の市場成長は鈍化すると感じています。実際に、フェムテック事業を立ち上げた中堅・大手企業やスタートアップのみならず、その周辺にいる関連事業者、業界紙や女性誌、新聞やテレビなどのメディアの方々と話をしていると「話題性の高さから期待していたが、実際はさほど売れない」「想定以上の在庫に頭を抱えている」「アンメットニーズが多いから伸び代がある市場だとは感じているんだけどね…本当にうまくいっているところってあるの?」など、フェムテック市場の盛り上がりに懐疑的な声も多く聞かれるようになってきました。もちろん順調に売上を伸ばしている事業者もいますが、それはほんの一握りに過ぎず、現実は市場での淘汰が顕著に進んでいます。ハイプサイクルでいうところの「幻滅期」に入ったのでしょう。ここから「安定期」へと移行し堅調な市場拡大を目指すには、フェムテック業界全体が市場の“現実”を冷静に直視する必要があります。そのためにはまず、フェムテック事業者が直面しやすい共通課題を整理し、その解決に向けた具体的な道筋を見出さなくてはなりません。その一助になればとの思いから、フェムテックビジネスの底上げを目的としたレポートを発行することといたしました。

 

本レポートは、当社が10年以上に渡り女性ヘルスケア市場を専門に企業の多様な製品・サービス開発やマーケティングを支援する中で得た知見をベースに、現在の女性ヘルスケア市場で起きているフェムテックの業界トレンドを分析したものです。フェムテック元年を迎えてから当社には、フェムテックの開発・マーケティングに関する相談を数多くいただいてきましたが、開発に関する相談内容も、そして各事業者が上市・販売にあたってぶつかる課題も驚くほど共通しており、また、フェムテック市場に対する各事業者の見方も奇妙に一様でした。大手企業の社長が直接ご相談に来られるというケースが続いたことも、これまでのヘルスケアトレンドには見られなかった動きで、いかに、この市場に熱視線が寄せられているのかを肌で感じてきました。

一方で女性生活者側はと言うと、イノベーターやアーリーアダプターなど流行感度の高いインフルエンサーの間で限定的に盛り上がるにとどまり、業界側での凄まじい盛り上がり方とは随分と熱量に乖離があります。これについては、製品・サービスを上市した事業者の多くがすでに体感していることでしょう。女性ヘルスケア市場でこれまでに大流行したものと言えば、例えば「糖質制限」「スムージー」「マインドフルネス」「ヨガ」などがありますが、これらは瞬く間に多くの女性生活者の心を掴み、需要・受容性ともに急速に高まり市場が大きく成長しました。「糖質制限」は行き過ぎた制限による健康被害の側面が問題になり10年ほどで落ち着きましたが、適度な糖質制限なども考案されながら、業界側の「売りたい」と女性生活者側の「買いたい」は長期にわたりマッチしていました。安心・安全かつ幅広い横展開ができる「スムージー」「ヨガ」は、ピークアウトしたものの今なお市場での関心は高く、広く定着したと言えます。

女性の健康に焦点をあてているフェムテックの概念に共感する社会の声は大きく、そして、女性特有の健康課題に悩む女性は多いにも関わらず、フェムテックの市場成長スピードは遅く話題性の割に実売に繋がらないのは、結局のところ「売りたい」と「買いたい」がマッチしていないのです。

では、どうしたら良いのか?その解決策を、本レポートを通じてお伝えしていきたいと思います。本レポートでは、多くの事業者に共通する課題を当社視点で抽出・整理し、中でも該当事業者が突出して多く業界全体での優先度が高いと判断した17項目を取り上げ、その具体的な解決策をまとめました。一見すると、いずれもビジネスやマーケティングにおいて当たり前のことを述べているに過ぎないため、斬新な発見を期待している人には物足りなく感じるかもしれません。しかし前提として、一般的なヘルスケアビジネスでは当たり前とされることができていないフェムテック事業者が実に多いことが背景にあることは、先にお伝えしておきたいと思います。ではなぜ、ビジネス経験が豊富な大手・中堅企業であってもそのような事態に陥ってしまうのか?それについても、事例とともに解説していきます。

本レポートは、これからフェムテックを開発する事業者も、上市前の事業者も、そして、すでに上市した事業者にもご活用いただける内容といたしました。また、フェムテック事業者に多い属性に配慮し、ヘルスケア業界初心者や女性マーケティング初心者の方でも理解が進みやすいよう、平易な解説を心がけました。ぜひ、本レポートを戦略立案やPDCAにお役立てください。国内のフェムテック市場の堅調な拡大に向け、本レポートが各事業者のガイドブックとして広くご活用いただけましたら大変幸いです。

 

 

 

 

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