フェムテック&フェムケア市場は一服感も、前年比108%で750億円へ拡大 カテゴリー別の動向
矢野経済研究所の先月の発表によると、2023年のフェムケア&フェムテックの市場規模は、前年比108%で750億5,400万円へ拡大。2020年の599億4,800万円から毎年順調に拡大しており今後も拡大基調の見込みではあるが一服感は否めず、この先の伸長率は落ち着いていくという。市場調査を担当した同社の清水由起氏と片岡杏子氏に、カテゴリー別の現況と今後の展望について話を聞いた。※当調査におけるフェムケア&フェムテック市場のカテゴリーは「生理」「不妊、妊よう性・妊娠、産後ケア」「更年期ケア」「ウィメンズヘルスケア」「セクシュアルウェルネス」の5つ。各アイテムは小売金額ベースで、各アプリやサービスはユーザー消費金額ベースで算出。
編集部
カテゴリー別の動向を教えてください。
矢野経済研究所
■生理
「生理」カテゴリーに該当するのは、吸水ショーツ、月経カップ、月経ディスク、ノンポリマー紙ナプキン、布ナプキン、経血用洗剤、生理管理アプリなど。
5つのカテゴリーの中で、伸長率は最も小さかった。当初は成長が著しかったが、2023年以降、事業の休止や撤退を表明する企業も出てきている。吸水ショーツ、月経カップ、布ナプキンなどは繰り返し使えるアイテムであるため、ユーザーの購入頻度は紙ナプキンやタンポンに比べると低く、また、大手企業が相次いで吸水ショーツなどを低価格帯で上市したことも、伸長率に影響した。今後は、月経カップなどのアイテムを知らない、あるいは使ったことがない新規ユーザーを取り込んだり、スポーツなどの新たな訴求によるユーザーの獲得が需要増のカギ。
■不妊、妊よう性・妊娠、産後ケアの動向
該当するのは、サプリメント、妊娠検査薬・排卵検査薬、婦人体温計、シリンジ法キット、骨盤ベルト・妊婦帯、体型戻し商品、マタニティウェア・マタニティインナー、妊娠時のスキンケアアイテム、妊活者・妊産婦向けSNS、不妊治療情報、クリニック検索サイト、妊活コンシェルジュサービス、子宮内フローラチェックキット、卵巣年齢チェックキット、妊産婦向けアプリ、妊活者・妊産婦向けオンライン相談サービスなど。
市場としては大きいものの、少子化による出生数減の影響を受けるため今後も伸長率は小さい。ただし、子どもの数が減る一方で、親や祖父母などが一人あたりの子どもにかける消費金額は大きくなるため、市場が急速に小さくなることはない。
■更年期ケア
該当するのは、サプリメント、漢方、尿漏れケアアイテム、スキンケア、膣ケアアイテム、体調管理アプリ、オンライン相談サービス、郵送型エクオール検査キットなど。
社会的に大きな課題として認識されるようになってきたことも追い風に、注目度は年々向上。サプリメントや漢方、情報提供などの支援サービスの活用が広がりをみせており、男性の更年期症状に対する意識向上にも貢献している。膣トレ、スキンケア、サプリ、検査キットなど、更年期ケアの切り口が多様化しているのが最近の特徴的な変化で、今後もまだまだ伸びると見られる。
■ウィメンズヘルスケア
該当するのは、サプリメント・漢方、デリケートゾーンケアアイテム、婦人科がん術後ケアアイテム、ナイトブラ、冷え対策のインナー、郵送型婦人科がん検査キット、ホルモン検査キットなど。
この中で最も伸びているのは、デリケートゾーンケアの洗浄アイテム。単価は低いが、デリケートゾーンケアの習慣化が広がれば、このカテゴリーを牽引していくとみられる。漢方はオンライン診療の認知が広がっていることもあり伸びているが、プレイヤーは増えていない。カテゴリー全体としては、”爆発的に”というよりは”順調に”伸びていくイメージ。
■セクシュアルウェルネス
該当するのは、セルフプレジャーアイテム、膣トレーニングアイテム、郵送型性病検査キットなど。
5つのカテゴリーの中で伸長率が最も大きかった。市場サイズとしては最も小さいものの、フェムテックの広がりにより、セクシュアルウェルネスについて少しずつオープンに話せる土壌が築かれており、それに伴いアイテムやサービスにも広がりがみられるようになってきた。ターゲット層や訴求ポイント、香りなど、各社によるアイテムの差別化も進んでいる。元々の市場サイズが小さかったこともあり、ここ数年は毎年二桁伸長を続けており、今後も注目のマーケット。
編集部
フェムケア・フェムテック全体の市場成長について、今後をどのように予測しますか?
矢野経済研究所
市場は今後も拡大していくと見ている。フェムテックが数年にわたり話題になったことで、2020〜2021年に比べ、アイテムやサービスは増えている。伸長率は落ち着くものの、市場の拡大は続くものと見ている。ただ、生活者に「フェムテック」という言葉はもう響かなくなってきたと感じている(生活者のフェムテック・フェムケアの認知やアイテム・サービスの利用率や利用意向をまとめた調査結果は別途公開予定)。フェムテック・フェムケアは、言葉そのものが堅苦しいし、生活者には響きづらいのではと感じている。
編集部
企業側の開発意欲や関心はいかがでしょうか?市場調査を進める中で、いろんな企業を取材されていますが、その中で何か変化を感じていますか?
矢野経済研究所
各社の関心は今なお高いが、「フェムテック」「フェムケア」という言葉でうまくプロモーションできなくなってきた企業が増えてきたと感じている。「この1年で『フェムテック』というキーワードで売れる感覚が鈍化しているように感じている」という声や、消費者との感覚に乖離を感じるという声も聞かれ、あえて「フェムテック」というキーワードを、プロモーションから無くすような動きも出てきている。今後は「フェムテック」「フェムケア」の言葉を使うよりも、健康課題や悩みをダイレクトに訴求する事例が増えていくと見られ、社会的に「フェムテック」という言葉が注目を集めることが少なくなっても、アイテムやサービスが人々の生活に根付いていけば、自然と市場は拡大を続けていくと考えられる。
編集部
ありがとうございました。
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