ブルーオーシャンとは?経営戦略の基礎知識と成功事例

日々多くのビジネスが誕生する国内市場は、どの領域においてもすでに多くの企業がひしめき飽和状態に。飽和市場では熾烈な価格競争に巻き込まれたり、多額の広告投資が必要になったり、黒字化の目途が立たず撤退を余儀なくされるなど厳しい企業間競争を強いられる。そこで有効な考え方が「ブルーオーシャン戦略」。前半ではブルーオーシャン戦略の基礎知識と成功事例を、後半では女性向けヘルスケア領域におけるブルーオーシャンを解説。

ブルーオーシャンの基礎知識

ブルーオーシャン戦略をとることにより「(競合他社がいないので)戦わずして市場No.1になれる」「価格競争が不要」などのメリットを享受できるため、新規開発・新規参入を検討する際は、まずその市場が「ブルーオーシャン戦略が有効かどうか?」を見極めたい。

ブルーオーシャンとは

ブルーオーシャンとは、参入している競合企業がいない未開拓の市場という意味。一方、ブルーオーシャンの対義語は「レッドオーシャン」で、競争が激しい既存市場のことを指す。レッドオーシャンでは「いかにシェアを拡大するか?」が重視されるが、人口減少により市場縮小が進む国内では、シェア拡大による売上増は難しい。しかしレッドオーシャンでは、減少の一途をたどる消費者の奪い合いを続けるしかないため、企業間の熾烈な価格競争や機能競争の激化を招いているのが現状だ。レッドオーシャンは消耗戦を強いられるため、大規模な投資を続けられるか、あるいは予算が潤沢にある大企業が有利になる。レッドオーシャンの例は以下。

  • 歯科医院
  • 美容室
  • エステサロン
  • 健康食品
  • 各種日用品
  • コスメ
  • アプリ
    など

ブルーオーシャン戦略とは

ブルーオーシャンが「参入している競合企業がいない未開拓の市場」のことを指すのに対し、「ブルーオーシャン戦略」とは「競争者のいない未開拓市場(ブルーオーシャン)を創造するための経営戦略」のことを指す。2005年に出版された書籍「ブルー・オーシャン戦略」の中で提唱された。新市場では競合企業がいないため、低コストかつ早い段階で高い収益を見込めるのが最大のメリット。


ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する

ブルーオーシャンの開拓方法と戦略の注意点

ただしブルーオーシャン戦略にもリスクはあるため、開拓方法とあわせて戦略の注意点を確認しておきたい。

ブルーオーシャンを開拓する方法

いきなりブルーオーシャンを開拓する(見つけ出す)ことは容易ではない。まずは以下4つの視点からブルーオーシャン開拓の可能性を探ってみよう。新規開発の場合は(1)が、新規開発が難しい場合は(2)と(3)がおすすめ。どこにブルーオーシャンの可能性があるのか分からない場合は(4)から始めるのがおすすめ。

(1)差別化戦略×低コスト戦略の同時実現

差別化戦略(高付加価値戦略)と低コスト戦略を同時に実現する必要がある。他企業に模倣されたときに、模倣品のほうが同じ品質で安いと自社商品が売れなくなるおそれがあるため、参入障壁は可能な限り高くしておく。

(2)既存商品・サービスの見直し

競合他社との競争要因を見つけ出し、既存商品やサービスの価値を変更したり、追加することで「ブルーオーシャン市場」への参入を果たす。

  • 例:ヒーリングミュージック市場はすでに飽和状態。そこで、自社ですでに販売しているヒーリングミュージックに「リアルボイス(人気の男性声優が優しく話しかけ続ける)」を追加することで、差別化を図る。女性の疑似恋愛消費が盛り上がっているトレンドをいち早く既存商品に反映することで、レッドオーシャン市場を脱出する。

(3)客層の変更

既存商品やサービスの客層(ターゲット)を変更することで、「ブルーオーシャン市場」へ移行できる。

  • 例:ダイエットシェイクは特に若い女性に人気のダイエット方法。しかしダイエットシェイク商品はすでに飽和状態。そこで客層を従来の若年女性からシニア女性に変更。シニア女性はダイエットのゴールとして「体型を美しくすること」よりも「疾病予防」を重視する傾向が強いので、打ち出し方やパッケージデザインなど訴求方法を変える必要はあるが、競合が少ないので、客層の変更のみでブルーオーシャン戦略をとることが可能。

(4)戦略キャンバスを描く

戦略キャンバスを描くことで、ブルーオーシャン戦略の“方向性”を見つけ出しやすくなる。

戦略キャンバスとは、横軸に顧客に提供する価値、縦軸に顧客が享受するメリットの大小を示すグラフのことです。戦略キャンバス上に、既存事業と新事業の価値曲線を描くことで新事業の差別化のポイントを明確に表すことができます。戦略キャンバスを描くことで、ブルーオーシャン戦略のコンセプトを明確に表すことができます。(引用:N’s spirit投資額&経営学研究室「ブルーオーシャン戦略、戦略キャンバス、アクションマトリックスについて解説」)

ブルーオーシャン戦略の注意点

続いて、ブルーオーシャン開拓時に考慮しておきたいブルーオーシャン戦略の注意点は以下3点。

(1)ブルーオーシャン戦略の効果を最大化するには、マーケティング戦略が必須

ブルーオーシャン戦略を活用するということは、「世の中に今までなかったモノ・コトを売る」ということ。消費者に認知してもらうことや、潜在ニーズを顕在化させる仕掛けなど商品・サービスを世の中に広めていくためのマーケティング戦略が必須。

(2)模倣されにくい差別化ポイントの創出が必要

成功したビジネスモデル、商品、サービスはすぐに模倣されるため、模倣されにくい差別化ポイントを創出しておきたい。ブルーオーシャンは参入した初期の段階では市場を独占できるが、参入障壁が低いと多くの企業が次々に参入してくるためやがてレッドオーシャンとなってしまう。模倣されにくい差別化が強い程、参入障壁を上げられるので、模倣されない強い差別化ポイントを明確にしておくことが重要。

(3)なぜブルーオーシャンだったのか?を見極める

なぜその市場は今まで競合他社が狙わなかったのか?つまりブルーオーシャンだったのか。単純に誰も気づかなかっただけなのか、それとも単純に需要がないから誰も狙わなかったのか、あるいはニーズはあっても利益が見込めないからか、のいずれかが答えになる。前者の場合は大きなビジネスチャンスだが、後者は当然失敗に終わる。ブルーオーシャンを見つけたらまずは「なぜブルーオーシャンだったのか?」は必ず調査しておきたい。

ブルーオーシャン戦略の事例(ヘルスケア市場)

ブルーオーシャン戦略で成功している企業事例、商品事例を見てみよう。

企業事例「カーブス」

女性専用の「カーブス」は中高年女性に人気のフィットネス施設。キャッチコピーは「女性だけの30分健康体操教室」。一般的なフィットネス施設は、「男性も大勢いる場所で運動しなければならない」「1回行くと、最低でも1~3時間はかかる」「男性トレーナーが多く相談しづらい」「事前予約をしなければならない」など心理的ハードルや時間的ハードルが高く、女性の中には、「気軽に通える場所ではない」と抵抗を感じる人も。実際に入会しても通わなくなる利用者は多い。

そこでカーブスは「会員もスタッフも女性だけ」「プログラムは30分だけ」「シャワー室は設置しない」などの工夫をすることで、「気軽にいつでも立ち寄れる女性専用のフィットネス」を実現。多くの中高年女性に支持されており「気軽に通えるから便利」「仕事や買い物帰りにサクッと寄れる気軽感が良い」「女性だけだから通いやすい」といった声が多い。

フィットネス市場はすでにレッドオーシャンだが、カーブスは上記のような工夫(違い)を取り入れることでレッドオーシャンを抜け出し、独自のスタイルを確立。ブルーオーシャン戦略で成功した事例と言える。

商品群事例「ティントコスメ」

落ちないコスメ「ティントコスメ」は瞬く間に女性の心をつかんだ。ティントコスメによるメイクはクレンジングオイルで簡単に落とすことはできず数日間発色が続くのが特徴で、「眉用ティント(眉ティント)」や「唇用ティント(リップティント)」がある。数年間色持ちするアートメイクの短期間バージョン、とイメージすれば理解しやすいだろう。お風呂に入っても顔を洗っても汗をかいても、ティントコスメでメイクした眉や口紅は落ちない。友達や彼氏との旅行や短期入院の際などに重宝されている。

従来のコスメは「落ちにくいアイブロウペンシル」「コップに色うつりしにくい口紅」などと謳いつつも、結局は、汗をかいたり、物などの接触によりメイクは落ちてしまっていた。数多くのアイブロウペンシルや口紅が次々に登場しているにも関わらず、ティントコスメが登場するまで女性たちは「落ちるアイブロウペンシル」や「色うつりする口紅」に我慢してきた。そこで登場したのが「本当に落ちないコスメ『ティントコスメ』」だ。

レッドオーシャンの代表ともいえるコスメ業界で、「本当に落ちないコスメ」というブルーオーシャンへの進出を果たし、多くの女性の心を捉えた成功事例だ。実際にリップティントは@コスメの「ベストコスメアワード2018」で総合大賞に輝いている。ただし前述の通り、ブルーオーシャン戦略のリスクでもある「成功すると途端に他社に模倣される」事態はこれにおいてもすでに起きており、各社からティントコスメが多数登場している。今現在はブルーオーシャンとは言い難くなっている。

商品例「遠近両用コンタクトレンズ」

コンタクトレンズやコンタクトレンズの洗浄液もレッドオーシャンだ。各メーカーからコンタクトレンズや洗浄液が販売されているが、消費者からするとメーカーによる違いや魅力はいまいち分からない。よって、価格の安さで選ばれてしまう商品群と言える。例えば車や高級鞄、時計などは、ブランドにこだわって選ぶ消費者が多いが、コンタクトレンズや洗浄液を選択するのに「このメーカーでなければ絶対買わない!」という強いこだわりを持つ消費者は多くない。差別化が非常に難しいコンタクトレンズ市場で新たに登場したのが、日本初となる「遠近両用サークルカラーコンタクトレンズ」。

近くのものが見えにくくなる老眼は一般的に40歳過ぎから徐々に始まる。老眼が始まると遠近両用メガネあるいは遠近両用コンタクトレンズを使うが、それまでカラーコンタクトレンズを日常使いしていた女性や、今はやりのサークルデザインで「瞳を大きく見せたい」女性にとって、色が付いていない通常の遠近両用コンタクトレンズは物足りなく、使用をためらう人もいる。そのような不満とニーズを抱えた女性をターゲットに開発されたのが、遠近の機能とサークルデザインを一体化させたコンタクトレンズ。(引用:日本初、遠近両用のカラコン 女性のニーズ捉える)

2018年9月に登場したばかりで市場の反応はこれからではあるが、付加価値を付けることでレッドオーシャンを抜け出しブルーオーシャンへの参入を果たしている。違いがいまいち分からず価格での比較しかできないコンタクトレンズだが、「遠近両用サークルカラーコンタクトレンズ」なら消費者に選ばれる理由が明確だ。前述の「ブルーオーシャンを開拓する方法」のうちの「既存商品・サービスの見直し~既存の商品やサービスの価値を変更したり、追加することで『ブルーオーシャン市場』への参入を果たす~」に該当するブルーオーシャン戦略として参考になる。

女性向けヘルスケア市場におけるブルーオーシャンの可能性

ヘルスケア市場は成長市場の一つとして注目度が高く新規参入が後を絶たない。ヘルスケア市場は今や”超“レッドオーシャンだが、女性向けヘルスケア市場におけるブルーオーシャンの可能性はどこにあるのか?例えば次の市場が考えられる。(※1)

  • 更年期市場
  • 学校教育を含む、子ども対象のヘルスケア市場
  • 男性の美容市場
  • 働く女性の健康経営市場
  • 後期高齢者対象のヘルスケア市場(※2)
  • 中年層対象の脳ケア市場(早期認知症対策市場)
  • 行動変容重視型のヘルスケアサポート市場
  • セルフメディケーション市場
  • 保健医療データと、罹患以前の個々の生活者の生活環境データの突合に関する周辺市場
    など(※3)

(※1)今現在未成熟市場でまだレッドオーシャンではなく、かつ、今後成長の可能性が見込める市場としてピックアップ。
(※2)後期高齢者対象のヘルスケア市場は現在、疾病・介護用が中心。ここで指すヘルスケア市場とは健康な人を対象とした健康維持増進型のヘルスケア。
(※3)各種クロステック市場もまだ未成熟市場だが、新規参入数・新規参入スピード共に急拡大していることからレッドオーシャンに区分されると考えている。そのため上記では各種クロステック市場は記載していない。

ブルーオーシャン戦略には市場トレンドと生活者ニーズの把握が不可欠

既存市場での熾烈な戦いを避けブルーオーシャン戦略を実現するには、まずは市場トレンドと消費者ニーズを把握すること。この2点を押さえておけば「何が市場になくて(=未開拓市場の発見)、何が求められているか(=顧客の潜在ニーズ発見)」、つまりブルーオーシャンで勝てるビジネスが見えてくる。ブルーオーシャン市場においてはこれまでになかった製品が登場するわけだから、しばらくの間は消費者や業界、メディアから「イノベーションだ」と注目を浴びるが、その状態を長く維持することは容易ではない。ブルーオーシャンは決して「永遠」ではなく、やがてレッドオーシャンに変化することを心得て、ブルーオーシャン戦略を検討してみよう。いつかレッドオーシャンに変化したとしても、成功すれば自社の先行者利益は大きい。

 

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