ブルーオーシャン戦略と女性市場の成功事例(2/3)
ブルーオーシャン戦略の注意点
続いて、ブルーオーシャン開拓時に考慮しておきたいブルーオーシャン戦略の注意点は以下3点。
(1)ブルーオーシャン戦略の効果を最大化するには、マーケティング戦略が必須
ブルーオーシャン戦略を活用するということは、「世の中に今までなかったモノ・コトを売る」ということ。消費者に認知してもらうことや、潜在ニーズを顕在化させる仕掛けなど商品・サービスを世の中に広めていくためのマーケティング戦略が必須。
(2)模倣されにくい差別化ポイントの創出が必要
成功したビジネスモデル、商品、サービスはすぐに模倣されるため、模倣されにくい差別化ポイントを創出しておきたい。ブルーオーシャンは参入した初期の段階では市場を独占できるが、参入障壁が低いと多くの企業が次々に参入してくるためやがてレッドオーシャンとなってしまう。模倣されにくい差別化が強い程、参入障壁を上げられるので、模倣されない強い差別化ポイントを明確にしておくことが重要。
(3)なぜブルーオーシャンだったのか?を見極める
なぜその市場は今まで競合他社が狙わなかったのか?つまりブルーオーシャンだったのか。単純に誰も気づかなかっただけなのか、それとも単純に需要がないから誰も狙わなかったのか、あるいはニーズはあっても利益が見込めないからか、のいずれかが答えになる。前者の場合は大きなビジネスチャンスだが、後者は当然失敗に終わる。ブルーオーシャンを見つけたらまずは「なぜブルーオーシャンだったのか?」は必ず調査しておきたい。
ブルーオーシャン戦略の事例(ヘルスケア市場)
ブルーオーシャン戦略で成功している企業事例、商品事例を見てみよう。
企業事例「カーブス」
女性専用の「カーブス」は中高年女性に人気のフィットネス施設。キャッチコピーは「女性だけの30分健康体操教室」。一般的なフィットネス施設は、「男性も大勢いる場所で運動しなければならない」「1回行くと、最低でも1~3時間はかかる」「男性トレーナーが多く相談しづらい」「事前予約をしなければならない」など心理的ハードルや時間的ハードルが高く、女性の中には、「気軽に通える場所ではない」と抵抗を感じる人も。実際に入会しても通わなくなる利用者は多い。
そこでカーブスは「会員もスタッフも女性だけ」「プログラムは30分だけ」「シャワー室は設置しない」などの工夫をすることで、「気軽にいつでも立ち寄れる女性専用のフィットネス」を実現。多くの中高年女性に支持されており「気軽に通えるから便利」「仕事や買い物帰りにサクッと寄れる気軽感が良い」「女性だけだから通いやすい」といった声が多い。
フィットネス市場はすでにレッドオーシャンだが、カーブスは上記のような工夫(違い)を取り入れることでレッドオーシャンを抜け出し、独自のスタイルを確立。ブルーオーシャン戦略で成功した事例と言える。
商品群事例「ティントコスメ」
落ちないコスメ「ティントコスメ」は瞬く間に女性の心をつかんだ。ティントコスメによるメイクはクレンジングオイルで簡単に落とすことはできず数日間発色が続くのが特徴で、「眉用ティント(眉ティント)」や「唇用ティント(リップティント)」がある。数年間色持ちするアートメイクの短期間バージョン、とイメージすれば理解しやすいだろう。お風呂に入っても顔を洗っても汗をかいても、ティントコスメでメイクした眉や口紅は落ちない。友達や彼氏との旅行や短期入院の際などに重宝されている。
従来のコスメは「落ちにくいアイブロウペンシル」「コップに色うつりしにくい口紅」などと謳いつつも、結局は、汗をかいたり、物などの接触によりメイクは落ちてしまっていた。数多くのアイブロウペンシルや口紅が次々に登場しているにも関わらず、ティントコスメが登場するまで女性たちは「落ちるアイブロウペンシル」や「色うつりする口紅」に我慢してきた。そこで登場したのが「本当に落ちないコスメ『ティントコスメ』」だ。
レッドオーシャンの代表ともいえるコスメ業界で、「本当に落ちないコスメ」というブルーオーシャンへの進出を果たし、多くの女性の心を捉えた成功事例だ。実際にリップティントは@コスメの「ベストコスメアワード2018」で総合大賞に輝いている。ただし前述の通り、ブルーオーシャン戦略のリスクでもある「成功すると途端に他社に模倣される」事態はこれにおいてもすでに起きており、各社からティントコスメが多数登場している。今現在はブルーオーシャンとは言い難くなっている。
商品例「遠近両用コンタクトレンズ」
コンタクトレンズやコンタクトレンズの洗浄液もレッドオーシャンだ。各メーカーからコンタクトレンズや洗浄液が販売されているが、消費者からするとメーカーによる違いや魅力はいまいち分からない。よって、価格の安さで選ばれてしまう商品群と言える。例えば車や高級鞄、時計などは、ブランドにこだわって選ぶ消費者が多いが、コンタクトレンズや洗浄液を選択するのに「このメーカーでなければ絶対買わない!」という強いこだわりを持つ消費者は多くない。差別化が非常に難しいコンタクトレンズ市場で新たに登場したのが、日本初となる「遠近両用サークルカラーコンタクトレンズ」。
近くのものが見えにくくなる老眼は一般的に40歳過ぎから徐々に始まる。老眼が始まると遠近両用メガネあるいは遠近両用コンタクトレンズを使うが、それまでカラーコンタクトレンズを日常使いしていた女性や、今はやりのサークルデザインで「瞳を大きく見せたい」女性にとって、色が付いていない通常の遠近両用コンタクトレンズは物足りなく、使用をためらう人もいる。そのような不満とニーズを抱えた女性をターゲットに開発されたのが、遠近の機能とサークルデザインを一体化させたコンタクトレンズ。(引用:日本初、遠近両用のカラコン 女性のニーズ捉える)
2018年9月に登場したばかりで市場の反応はこれからではあるが、付加価値を付けることでレッドオーシャンを抜け出しブルーオーシャンへの参入を果たしている。違いがいまいち分からず価格での比較しかできないコンタクトレンズだが、「遠近両用サークルカラーコンタクトレンズ」なら消費者に選ばれる理由が明確だ。前述の「ブルーオーシャンを開拓する方法」のうちの「既存商品・サービスの見直し~既存の商品やサービスの価値を変更したり、追加することで『ブルーオーシャン市場』への参入を果たす~」に該当するブルーオーシャン戦略として参考になる。