社会問題化する”多剤服用” 薬の見直しによる高齢患者の改善事例

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多くの種類の薬が処方されることで“薬漬け状態”となる「多剤服用(ポリファーマシー)」。多剤服用が新たな副作用を招いたり、不調を悪化させるケースは後を絶たず、特に複数の病気を抱える高齢者の間で問題となっている。

高齢者の多剤服用が社会問題になる中、国を挙げた対策が行われている。2018年5月に厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」の通知を発出。続く今年6月14日には「高齢者の医薬品適正使用の指針(療養環境別)」が同省から公表された。

昨年5月と今年6月に公開された指針では、例えば以下のような薬を「注意したい薬」として挙げている。女性セブン7月18日号は「厚労省 要注意薬リスト 代表的な薬剤とその注意点」として、具体的な薬剤の名前を掲載した。

  • 催眠鎮静薬・抗不安薬
  • 抗うつ薬(スルピリド含む)
  • BPSD治療薬
  • 高血圧治療薬
  • 糖尿病治療薬
  • 脂質異常症治療薬
  • 抗凝固薬
  • 消化性潰瘍治療薬
  • 消炎鎮痛薬
  • 緩下薬
    など

同通知では高齢患者の薬の見直しにより不調が改善した8事例も掲載。以下は85歳の高血圧症、糖尿病、心筋梗塞既往歴、心房細動、脂質異常症、鉄欠乏性貧血の女性の事例。薬の見直しを行ったことで、症状の改善が見られたことが分かる。

介入のきっかけ
心房細動があり抗凝固薬を投与されていたが、左脳出血にてA病院に入院となった。半身の重度感覚障害と麻痺が残存し、立位保持、座位保持などはかなりの介助を必要とする状態であり、リハビリ目的で回復期病棟に転院となった。脳出血に伴う活動量の低下があり、血圧が日中90-110/60-70mmHgHR 65-75と低下しふらつきがみられていた。また、入院前HbA1c7.7%であったが、回復期病棟入院後、食事量の減少もあり、血糖値も朝70-116mg/dL昼120-138mg/dL、夕110-130mg/dL、HbA1c6.8%となり、自覚症状はみられないが、低血糖は頻回に認めていた。

介入後の経過
アムロジピンの中止後、血圧が120-135/65-75mmHgと上昇し、起立性低血圧の症状も改善した。また、HbA1cも7.2%と上昇し低血糖がみられなくなり改善した。(引用:厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」)

 

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