セルフメディケーション税制とは?導入に伴う消費者の意識変化(1/3)

医療費控除の特例として、OTC医薬品が控除対象となるセルフメディケーション税制が2017年から導入されている。生活者が自らの健康維持・増進に取り組むことにインセンティブを付与することで医療費抑制を推進したいという考えが根底にある。OTC医薬品の購入額だけでなく、健康診断やインフルエンザ予防接種など予防にかかわる取り組み実績も申告要件とされている。OTC医薬品の産業界では、同税制の導入が生活者の意識や行動変容にどのような影響を与えたかを経時的に調査していく考え。ヘルスケア産業全体にとっても、予防領域の市場拡大につながる制度として注目だ。

セルフメディケーション税制とは?

セルフメディケーション税制の意味

セルフメディケーション税制は、医療費控除制度の一部で、ドラッグストアなどで販売されているOTC医薬品(いわゆる市販薬)の購入額が課税所得から控除される制度のこと。自らの健康の保持増進への取り組みを推進するために創設された。

対象となるOTC医薬品は、医師が処方する医療用医薬品からOTC医薬品になった「スイッチOTC医薬品」。対象品目は厚生労働省ホームページで確認できるほか、ドラッグストアのレシートで判別できる仕組みが導入されている。

1月1日~12月31日の1年間で購入した額が1万2,000円を超えた場合に、超えた分の金額が控除される。超える金額が8万8,000円以上の場合は、8万8,000円が限度となる。購入額には、自己と生計を一にする配偶者やその他親族の分も含めることができる。例えば2万円の対象品を購入した場合の制度利用イメージは以下の図のようになる。

セルフメディケーションの利用イメージ

出典:厚生労働省「セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除の創設」

セルフメディケーション税制の目的

セルフメディケーション税制は、生活者自らが自分の健康維持・増進に関心を持ち、疾病の予防に取り組むことを奨励するために設けられた制度で、国は医療費の適正化につなげたい考え。適切な健康管理の下で、公的保険下の医療用医薬品からOTC医薬品への代替を進める意図も含められている。

従来の医療費控除との違い

従来も医療費の一部が所得控除される医療費控除制度はあった。医療費控除は1月1日~12月31日の期間に支払った医療費の合計額から保険金などで支給される金額と、10万円を差し引いた金額が控除される。その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、保険金などで支給される金額と、総所得金額等の5%を差し引いた金額が控除される。控除上限は200万円まで。

この医療費にはOTC医薬品の購入額も含めることができるが、「セルフメディケーション税制」と「医療費控除」の両方の控除を同時に受けることはできない。そのため制度利用者は、医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらを利用するか選ぶ必要がある。医療費控除が10万円以上を想定しているのに対し、セルフメディケーション税制はスイッチOTC医薬品購入額1万2,000円以上を想定しているため「医療費は高くなくスイッチOTC医薬品をよく活用している場合」はセルフメディケーション税制の利用が適しているといえる。実際は両方の制度の控除額を算出し、控除金額が大きい方を選択すると良い。

日本一般用医薬品連合会では、サイト上でどちらの制度利用の方が減税額が大きくなるか、簡単に簡易計算できるサービスを提供している。

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