オンライン服薬指導の“リアルな限界”とは? 消費者ニーズに応える薬局の新しい形
本稿は、オンライン服薬指導・オンライン診療・OTC医薬品のEC販売等を行う、株式会社NTTドコモ子会社の株式会社ミナカラ(東京・渋谷)による寄稿記事です。オンライン上での薬局サービス提供を業界に先駆けて開始した同社ならではの知見から、オンライン服薬指導のリアルな現状や課題などを解説し、今後の薬局の新しいあり方を展望します。
2024年、オンライン診療・オンライン服薬指導の現状
オンライン診療・服薬指導は、特にコロナ禍でその利便性が注目され、現在では大手企業も参入し盛り上がりを見せている。しかし、オンライン診療の件数は全診療の0.036%[1]、オンライン服薬指導は総受付件数の0.099%[2]に留まっており、現在までに十分に普及したとは言えないのが実態。
ミナカラにおいても、いわゆるオンライン服薬指導を行う処方せんネット受付サービス「My 処方箋」を2024年に本格ローンチ。そのリピート率はおよそ6割を達成しており、一定のニーズを満たせていることがわかる。しかし、現在の利用者はアーリーアダプターもしくはオンラインヘルスケアサービスに慣れている層であり、潜在的な患者数全体と比較すればごく少数に限られてしまう。
ミナカラが見たリアルな「限界」
オンラインに親和性が低い層にアプローチできていないという点以上に、オンライン診療・オンライン服薬指導というシステム面に「限界」がある。オンライン診療は、採血やレントゲンなどが必要な場合など急性期の症状には不向きであり、また、特に高齢者の場合スマートフォンの操作に慣れていない患者も多い。さらに、従来の対面診療は病院が一種のコミュニティとして利用されている場合も多く、患者は直接生身の医療関係者と話すこと自体に安心感・信頼感を得ているが、これはオンラインでは提供しづらい。
ミナカラでは2022〜2024年、高齢化が進み薬局やドラッグストアがなく、医療機関は診療所がひとつだけという地域(山梨県小菅村)にてオンライン服薬指導の実証実験を行った。この地域では、診療所に在庫がない薬が処方された場合、患者自身が車やバスを利用して遠方の薬局まで受け取りに行かなければならず、オンライン服薬指導と同時にミナカラから薬を配送することで、その課題の解決に取り組もうとした。一方で、すぐに必要な薬や診療所で処方できる薬には「薬の配送」のステップは適しておらず、また、ネット決済に慣れていない方が多いという課題もあり、オンラインでは全てのニーズを満たせるわけではなかった。
2024年11月で11周年を迎えるミナカラでは、市販薬を販売するECサイトや、チャット形式の薬剤師相談、専門的知識の共有を目的としたメディア事業といったオンラインのヘルスケア体験を提供し続けており、この分野でのビジネス展開は長きにわたるものの、テクノロジーの整備だけではオンラインへの移行は起きてこないと痛感している。今後は、オンラインとオフラインの双方の利点を融合させ、より多様なニーズに対応できる「未来の薬局」が求められているのではないだろうか。
[1] 厚生労働省「外来(その4) 情報通信機器を用いた診療」P.16(参照2024/10/17)
[2] 一般社団法人 日本保険薬局協会 薬局機能創造委員会「管理薬剤師アンケート報告書(その1)ー薬局機能及び体制、薬局の実績、多職種連携の実態に関する調査結果ー 2024年2月」P.31(参照2024/10/17)
【提供】株式会社ミナカラ
薬事・ヘルスケア課題を身近で取り組むオンラインイノベーターとして、オンラインとオフラインの両方でヘルスケアと薬局サービスを提供。提携先クリニックでオンライン診療を受けた方へのオンライン服薬指導~おくすりの配送、お届け後の相談サービスを一貫し、薬剤師の知識とデータで皆さまに“感動”を届ける企業でありたいと考えています。安心・安全・信頼を最重要視し、データとテクノロジーを活用したヘルスケアサービスを展開中です。