世界の平均寿命と健康寿命

世界の平均寿命は上昇傾向にあるが、国ごとの“寿命格差”は依然として存在する。先進国を中心に各国は平均寿命を伸ばす一方で平均寿命の短い国は医療・ヘルスケアへのアクセスがままならない状況にある。平均寿命を見る際は、その偏りも含めて確認する必要があり、全体の伸び率だけでなく国ごとの医療課題を分析することが大切だ。

世界の平均寿命 2019

WHOが公表した世界の平均寿命 2019

平均寿命とは、0歳の平均余命のことを指す。世界保健機関(WHO)が2019年4月に発表した「世界保健統計2019」によると、2016年の世界の平均寿命は以下だった。

  • 男性(2016年):69.8歳
  • 女性(2016年):74.2歳
  • 全体(2016年):72.0歳

なお、国ごとの平均寿命を比較すると最長国と最短国の差は約30歳だった。

日本の平均寿命

日本の平均寿命が長い主な要因として、脂肪分の少ない和食を中心とした食文化や医療制度の充実が考えられる。

  • 男性(2016年):81.1歳
  • 女性(2016年):87.1歳
  • 全体(2016年):84.2歳

アメリカの平均寿命

統計不能な国を除き全183か国の中でアメリカの平均寿命は34位となった。これは経済協力開発機構が定める高所得国の中でも最低水準にあり、その理由としては30歳から50歳の中年層における死亡率の高さが考えられる。50歳未満の男性の最大死因は「殺人」でありアメリカの寿命問題には医療や食生活の他に社会的問題が顔を覗かせる。また過剰な薬物摂取による死亡率の上昇や、肥満率の高さに伴った糖尿病増加も一因とされている。

  • 男性(2016年):76.1歳
  • 女性(2016年):81.1歳
  • 全体(2016年):78.6歳

ロシアの平均寿命

全183か国中103位と欧米先進国に比べてはるかに低い結果となったロシアでは、男女差が際立つ結果となっている。要因として、拡大する貧富の格差や年金問題などによる心理的ストレス・不安により上昇傾向にある男性の自殺率の高さ、飲酒習慣により引き起こされる各種疾病が挙げられる。ロシアの寿命問題もまた社会的構造に起因するところが大きいといえる。

  • 男性(2016年):66.4歳
  • 女性(2016年):77.2歳
  • 全体(2016年):72.0歳

レソトの平均寿命

最も平均寿命が短い国は南アフリカ共和国に囲まれた世界最貧国の一つ、レソト。レソトはHIV有病率が世界第3位。1年当たりの結核罹患率は世界で4番目に高い。さらにHIVと結核の二重感染率は90%を超え、人口も少ないレソトにおける最難関課題となっている。

57歳のマムフォ・ラツェセは、この病棟に入院している結核とHIVの二重感染者の一人であり、最近治療を求めてやって来た新たな患者の一人である。先月、彼女が初めてスコット病院にやって来たとき、彼女には盗汗、絶え間ない咳、熱、息切れという典型的な結核の症状がみられた。(略)彼女は語る。「夫を亡くしてから苦難続きでした。夫は大黒柱でしたから。でも今は、私は入院中ですし、食糧はほとんどありません。他に頼れる人もいません。家族のことで娘には既に苦労させていますが、さらに負担を掛けてしまいました」(引用:国境なき医師団「レソト:結核・HIV/エイズの二重感染に苦しむ人びと」)

  • 男性(2016年):51.0歳
  • 女性(2016年):54.6歳
  • 全体(2016年):52.9歳

 

世界の平均寿命の傾向と理由

このように平均寿命の国際比較をすると、低所得国と高所得国で大きな格差があることが分かる。「WHO regionの平均寿命(地域ごとの平均寿命)」で比較した世界の平均寿命は下記の通りとなっている。

  • アフリカ地域(African Region):61.2歳
  • 東地中海地域(Eastern Mediterranean Region):69.1歳
  • 東南アジア地域(South-East Asia Region):69.5歳
  • アメリカ地域(Region of the Americas):76.8歳
  • ヨーロッパ地域(European Region):77.5歳
  • 西太平洋地域(Western Pacific Region):76.9歳

低所得国は基本的な医療アクセスに課題があると考えられる。特に発展途上国においては妊産婦死亡率の高さや糖尿病、がんなどの罹患率の高さが挙げられ、医療課題の克服による死亡率減少が鍵を握っている。

 

世界の健康寿命 2019

平均寿命とあわせて確認したいのが健康寿命。平均寿命と健康寿命の差は健康ではない期間のことを意味し、2018年の米国イリノイ大学の研究報告ではこの期間をレッドゾーンと呼称している。今日では単純な余命を意味する平均寿命よりも生活の自由度を基準とした健康寿命を伸ばすことが重要とされ、新たな指標となっている。

WHOが公表した世界の健康寿命

厚生労働省の定義によると、健康寿命とは“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”のことを指す。

世界保健機関(WHO)が2019年4月に発表した「世界保健統計2019」によると以下の結果だった。

  • 2016年の世界の健康寿命の平均(全体):63.3歳
  • 世界トップ:シンガポールで76.2歳
  • 世界ワースト:中央アフリカ共和国で44.9歳

世界トップと世界ワーストの差は約32歳と大きく開いた結果となった。なお、前述の平均寿命で取り上げたアメリカの健康寿命の平均は68.5歳、ロシアの健康寿命の平均は63.5歳で、平均寿命と比較すると約10年の差が生まれている。

 

世界と比較した日本の健康寿命

平均寿命世界一を誇る日本の健康寿命の平均(全体)は74.8歳にとどまり、シンガポールと約2歳の差をつけて世界2位の結果となっている。しかしここで重要視すべきは平均寿命と健康寿命の差が約10年あること。さらには男女別で見てみると、女性は平均寿命と健康寿命の差が12年を超えており、健康寿命の延伸が急がれる。医療制度の充実を治療だけに向けずに、積極的な疾病予防や早期発見への手立てとすることが第一の近道となるだろう。

 

 

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