「世界の都市総合力ランキング」に東京3位も、医療・ヘルスケア・環境関連の課題は浮き彫りに
森ビルのシンクタンク「森記念財団都市戦略研究所」は9日、2023年の世界の都市総合力ランキング(GPCI/Global Power City Index)を発表した。総合トップ3は前年と変わらず1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位東京で、大阪は37位、福岡は42位だった。GPCIは世界の48の主要都市の総合力を、「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野70の指標で評価して順位付けするもの。
分野別に東京のランキングを見ると「研究・開発」「文化・交流」「居住」はトップ5を果たすも、「経済」は10位、「環境」は16位と、振るわなかった。医療・健康関連の主な指標は「居住」「環境」に含まれ、都市部における医師数や労働時間などに課題があることが浮き彫りとなった。
目次
「経済」10位:低いGDP成長率や高い法人税などで、下落
2016年は1位だった「経済」が今回は10位に下落。要因は「GDP成長率(47 位)」、「優秀な人材確保の容易性(40 位)」、「法人税率の低さ(43位)」など、例年の課題が改善されていないことや、「賃金水準の高さ(29 位)」や、コワーキングスペース数やインターネット速度で測る「ワークプレイス充実度(22 位)」で順位を落としたこと。
「研究・開発」4位:特許登録件数に強く、大学やスタートアップが弱い
「研究・開発」は4位にランクインしたものの、トップ2のニューヨークとロンドンから大きく引き離される結果に。指標別では「特許登録件数(1 位)」が強い一方で、「世界トップ大学(22 位)」、「留学生数(34 位)」が弱点に。「スタートアップ数(9 位)」では、ニューヨーク、ロンドンとの差が広がった。
「文化・交流」5位:ホテル客室数や食事が強いが、ハイクラス系が弱い
「ホテル客室数(1 位)」や「食事の魅力(1 位)」が強いものの、「観光地の充実度(17 位)」、「ナイトライフ充実度(30 位)」、「ハイクラスホテル客室数(20 位)」が弱く、ロンドン、ニューヨーク、パリに追いつけない要因となった。
「居住」3位:生活コストが安く生活の利便性高いも、医療・健康項目に課題
前回に引き続き「居住」の1位はパリ。東京は為替変動の影響を受け、生活コストが安い都市として「住宅賃料水準の低さ(20位)」、「物価水準の低さ(24 位)」の順位が上昇したことに加え、「小売店舗の多さ(4 位)」、「飲食店の多さ(5位)」など生活の利便性が強みとなり3位となった。
「居住」の指標には医療・健康関連の項目もあり、1位のパリと比較すると東京の課題が見えてくる。両社間で有意な差が見られたのは「医師数(※1)」で、パリ79.4点に対し東京48.3点。「社会の自由度・平等さ(※2)」はパリ73.8点、東京57.7点。「一人あたりの総労働時間の短さ(※3)」はパリ93.0点で東京70.1点。「メンタルヘルス水準(※4)」はパリ74.1点、東京64.5点。
※1:人口100万人あたりの医師数
※2:世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数などのデータを指数化したものの平均値
※3:一人あたりの年間総労働時間
※4:障害共存年数と、人口10万人あたりの自殺者数を指数化したものの平均値
「環境」16位:環境への取り組み関連が低く、6分野で最低に
「環境」は4年連続でストックホルムが1位、コペンハーゲンが2位となった。東京の「環境」は6分野の中で最低で16位。都市の気候変動イニシアティブへの参画数や、CO2 排出目標率の高さで競争力が低下したことで、「環境への取り組み(15位)」や、「都市空間の清潔さ(10位)」で順位が下落した。
1位のストックホルムと特に開きが大きいのが、「再生可能エネルギー比率」で、ストックホルム100点に対し東京は14.1点。「緑地の充実度」はストックホルム91.5点、東京36.4点。「水質の良好性」はストックホルム93.0点、東京58.9点。
「交通・アクセス」8位:公共交通機関利用率や駅密度が高く、課題は訪日向けの交通利便性
「交通・アクセス」の順位は、「国内・国際線旅客数」や「タクシー・自転車での移動のしやすさ」でスコアを上げたことや、東京の強みである「駅密度(5位)」や「公共交通機関利用率(1位)」が高順位を維持し、上昇した。一方で「国際線直行便就航都市数(27位)」や「空港アクセス時間の短さ(29位)」など、海外から訪れる際の交通利便性は順位が低かった。
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