4月から義務化された「合理的配慮」とは? 病院やスーパーなど場面別の事例 改正障害者差別解消法

今月1日、「改正障害者差別解消法」が施行された。障害者差別解消法は、障害を理由とした差別の解消を目指す法律。今回の改正にあたって最大のポイントは、国や自治体だけでなく、これまでは努力義務とされてきた民間事業者にも障がい者への「合理的配慮の提供」が義務付けられた点。ここでいう障がい者とは、障がい者手帳の有無に限らず身体障害、知的障害、精神障害(発達障がい等を含む)、難病などその他の心身機能の障害により、日常生活や社会生活に制限を受けている人を指す。

「合理的配慮の提供」とは、障がい者から困りごとへの対応を求められた際に、事業者が適切な対応に努めることを言う。具体的には、どのような場面でどのような困りごとが発生し、どのような対応が”合理的配慮”として事業者に求められるのか?その事例を、障害種別・業種別・場面別に国がまとめている。「合理的配慮の提供等事例集」の中から、いくつか事例を見てみよう。

飲食店

<事例>
定食など複数の食器に分かれて盛り付けられている料理では、どこに何があるのか分かりにくい(視覚障がい者)

<合理的配慮の提供例>
店員が配膳するときに、食器の位置や料理内容について説明する配慮を行った

宿泊施設

<事例>
ホテルの大浴場を利用したいが、広いスペースと介助、複数枚のタオルが必要になるので気が引けてしまう(肢体不自由者)

<合理的配慮の提供例>
事前に相談があったので、当日は通常よりも早く大浴場の準備を整え、本来の開放時間までの間に占有して入浴できるようにした。また、タオルも複数枚を準備しておいた

病院

<事例>
電話でのやり取りが難しいため、病院との連絡はメールでしたい。また、家族の付添いが困難なので、診察中の要約筆記をしてほしい(聴覚障がい者)

<合理的配慮の提供例>
緊急時以外は郵送により連絡するが、病院へ何か連絡などがある場合は事務職員宛てにメールするよう伝え、メールでやり取りした。また、診察中はポイントを筆談で伝えるようにした

スーパー

<事例>
スーパーのレジに並びたいが、足元にあるレジ待ちの位置を示す印が見づらくて並ぶことができない(盲ろう者)

<合理的配慮の提供例>
店員がレジまで誘導した。次回以降の来店時も、店員が見かけたときに近くまで行ってレジまで誘導するようにした

店舗

<事例>
店舗の出入口が押し引きして開けるドアのため、一人で出入りするのが難しい(肢体不自由者)

<合理的配慮の提供例>
出入口に着いたところで電話をかけてもらい、店員がドアの開閉を行った

電車

<事例>
考えていたことと違ったことや通常とは異なる場面への対応が苦手で、パニックになる場合がある。電車やバスなどを利用している際に、事故発生で止まったり遅れたりするなどの異変が生じたときは、状況が理解できるよう丁寧に伝えてほしい(精神障がい者)

<合理的配慮の提供例>
障害特性を理解して、アナウンスする場合は、分かりやすく丁寧なアナウンスを心掛けた

 

 

合理的配慮の提供事例については、「障害者差別解消に関する事例データベース」でも公開しており、性別、年齢、障害の種別、場面別に過去の事例を検索できる。

 

 

 

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